第4話 義兄さん!? じょ、状況を整理しましょう!
「なんだと!? 貴様、どの立場で物を言うか……!」
「お、おちつけよ
「そ、そうだね、今日の
しまった、などと後悔しても遅い。
目の前にいる三人は、完全に私に不信感を抱いている。
あれほど後輩指導の際に、対象者へ不信感を与えてしまったらリハビリは成功しない、などと偉そうに
なんと
たまらず謝罪と
「校門の前で騒いでどうしました? 義兄さん、また皆さんにご迷惑をおかけしているのですか?」
その女性の姿を――声を認識した瞬間、私の中で時が確かに止まった。
そして次に自分の
白――というよりは、
長い銀髪をポニーテールに
今まで見た何よりも美しい。恥ずかしいことにそう思ってしまった。
だが今は、彼女の美しさよりも、発した言葉の方が大切だ。
「に、
「わ、私!? どうしたんですか、義兄さん。朝と
銀髪の女性は、
「おお、聞いてくれよ
「え!? そ、そんな……!! いえ、でもそれは私もそう思いますので、真っ当なことでは? あれ? でも、適当な義兄さんが真っ当なことを言うと変だし……あれ?」
――
美女は名前までも美しいのか。
そう感じてしまうのは、彼女の印象を先に植え付けられてしまったからだろうか。
きっと、普段の私であれば彼女の事をもっと知りたい、などと思っていただろう。
だが最も知りたいのは、長光という名の
他ならぬ私自信のことが、知りたい。
「私はこれから皆さんに、いくつかおかしな質問をします。
四人全員が、特に拒否することもなく無言で先を促す。
それだけ必死だったのだとご理解願いたい。
「まず、私は
自己紹介をした後の、
答える側からすると何が聞きたいのか決めかねる質問形式。
ぼんやりとしてまとまりはなくとも、なるべく多くの情報を引き出すことができる質問形式こそが、最初の
今は何でも良い、どんなことでもいい。
情報が欲しいのだ。
「えっと……、冗談にしても色々とたちが悪いうえに、すべってますよ義兄さん? なんですか理学療法士とか西野って。義兄さんの名字は、うちに養子入りした時からずっと
「そうだぜ、
「う、うん。僕もそう思う、かな。それに、なんとなく来たんじゃなくて今日から始業式でしょ? 僕ら二年生になったんだから……」
「貴様が控えめな態度になるのは良いが、
金髪勘違い眼鏡の言葉に、皆が頷く。
この一つの質問だけでも、随分受け入れがたい情報が大量に入ってきたものだ。
私が養子入りしていて、長光さんと同じ『浅井』という名字?
今日から始業式で、この学園の二年生?
一人称が『俺』で、簡潔に言えば不真面目な無気力生徒?
ここまでの情報だけでも受け入れがたい。にも関わらず何より受け入れがたいのは――長光という麗人と関係がぎくしゃくしている、だと?
全くもって遺憾だ。
ともあれ何も知らない私は、一つ目の質問で既に不信感を強めてしまっている。
更に不信感を
ここまでに引き出せた情報から、自然な『浅井安綱』を演じた方が
そうして――『俺』は次なる質問を重ねた。
「しつれ……、いや、悪い。ちょっとふざけすぎたよな俺。ただ、ちょっと体調が悪くてな。いつ倒れるかわからんから、今日はお前等と一緒に行動してもいいか?」
「貴様の体調が悪いだと? 馬鹿でも
殴ってはダメです。
これは、
「はははっ……ははァッ!」
「この流れで笑顔は気味が悪いですよ、義兄さん? いつにも増して……」
耐えろ……。
我慢は得意だろ?
この程度、悲しくもなんともない。
よし、落ち着いた。
よくやった俺。
急いでは駄目だ。
ゆっくり今の状況を掴むためには、案内役は不可欠。
申し訳ないが、目の前の方々には案内役となってもらおう。
全くもって気が狂ったような馬鹿馬鹿しい仮説だが、否定できない現実がある以上、確かめて行くしか無い。
私の
これが夢でないなら、私は記憶がある状態で
流行の物語のようだが、もはやそうとしか自分を納得させることなどできない。
これは一種の願望だ。
そうであったらいいな、という願いだ。
私――俺は、生活に強い不満を抱いていた。
願わくば別の人生を歩みたいと思っていた。
だからこの夢の様な今が、現実であればいい。
そう思って無理矢理、理由を付けていることは認めるしかない。
だから――とことん、この機会を楽しませてもらおう。
もしかしたら瞬きするほどの後に、私の意識はまたあの神社へ戻って絶命してしまうことも考えられるのだ――。
―――――――――――
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