第3話 この世界は夢?
「……私は今、おそらく夢を見ている」
そうでなければ、私は
突然、私を包んだ環境は、それほどの
誰か説明出来るのあれば、
――それは、
私は風に舞う
風の香りがほのかに甘くて――暖かい。
「お前、ちゃんと課題やってきた?」
「おう、それな。これからお前のを写す予定」
平安貴族のような服装に身を包んだ、十代とおぼしき男性達の会話。
いつの日だったか。
神社で正式参拝した際、拝見した御神職の姿を
「私の知る学生とは――制服が違いすぎる……」
後々解ったことだが、これは
会話内容はまるで学校に通う学生だ。
皆、同じ紋入りの服装をしているが、少なくとも私の知っている学生はこのような
『集団でコスプレイベントを行っています』。
そんなプラカードを持った誰かがいれば、
「これは、なんなんだ……?」
考えをぐるぐると巡らせ、答えも出せず
そしてはっと我に帰って自分の姿を見て、また
自分も周囲の男性同様、
思わずぺたぺた触れて見ると、紛れもなく触覚も正常。
少し強めにパン、と胸を叩いてみると微かな痛みも感じた。
痛覚も正常なようである。
「げ、幻覚を見ている訳でも、夢を見ている訳でもない……のか?」
仮説が否定され、新たな仮説も立たない。
ただ
とりあえず、訳もわからないままに
履いている靴がなんと歩き難いことだろうか。
このような靴で歩いていては長期的に身体を痛める。
こんな状況下でも、理学療法士としての逃れ得ぬ職業病ともいうべき思考の
数分も歩いていないだろう。
坂道を登り切った所に、校門が見えた。
何の
平時であれば、「ああ、学校の校門か」。
ぐらいにしか思わなかっただろう。
だが、今の私にとっては
近づき
「ベロベロと舐める様に見つめても、これは普通の校門だな……」
気が付いた事は主に二つ。
一つ目は、この学舎の名前は『
もう一つは、学園名が記された表札には、私を含む周囲の男性の
「これはいわゆる……校章のようなものか?」
校門にもたれかかりながら、泣きたい気分になり目を閉じて、
「一体、これはなんなんだよ? 神社で倒れたかと思えば、全く訳のわからないこの状況!」
誰かのいたずらにしては質が悪く、大がかりなんてもんじゃない!
「誰でも良い、誰か助けてくれ……ッ!」
今にも泣き出しそうだ。
「――おお、
――
そう、間違いなく私の名前だ。
私の名前が呼ばれた。
「な、なんだその顔は? 俺の顔に何かついてるか?」
「ぼ、僕たち何かした……?」
「普段から無気力で不気味な貴様だが、今日は別の意味で気味が悪いな……」
三人の男が私の前で立ち止まり、
「わ、私の名を……呼んだ? あなた方は……」
一番最初に私に話しかけてきた男は、
片方のもみ上げだけ異常に伸びている男性だ。
おそらく、アシンメトリーを意識した髪型なのであろうが、ここまで極端な状態にしている人は見たことがない。
二番目に目に付いたのは、少しビクビクしながらこちらを見てきている男(?)だ。
おそらく、周囲の男性の服装から察するに、この方も男性なのであろう。
だが、くりっと大きな目に長いまつげ、さらさらした黒髪ストレートヘア。
ウルフカットを意識しているのか、長い
これらの特徴がより中性的な印象を際立たせる。
最後に、私を不気味と中傷した男性だ。
攻撃的な金髪に鋭い目付き、シルバーフレームの眼鏡。
髪型をアップバンクに整えて目を強調しているためか、より攻撃性が増して感じる。
身長もおそらく百八十㎝近く、
どこかの
仮にも
メラビアンの法則によれば視覚情報は人の印象に五十五%も影響を与えるのだ!
近寄りがたいマイナスの印象を与えるような身だしなみを放置しておくなど――断じてできない!
「髪を下ろして、黒く染め直した方がいい。爽やかで似合うならいいけど、似合わないです。外見が人に与える印象を考慮しなさい」
気が付いた時にはそう言っていた。
これは身についた癖であり、
口に出してから、今の状況では他に言うことがあったよなと後悔した――が、既に遅い。
後悔先に立たず、とはよく言ったものだ。
―――――――――――
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