第2話 天界
「フォルテ・・フォルテ・・」
何かに呼ばれ、意識を取り戻す。
私は死んだはずなのに、私を呼ぶこの声は一体・・・
目を開けると、そこは美しい場所であった。
ここはどうやら死後の世界のようだ。
「フォルテ、こちらへ」
声のする方を向くと、美しい女性が立って私を見つめていた。
「フォルテ。どうやらあなたは混乱していないようですね。普通ここに来る者は大抵混乱しているものですが・・・まぁ話がはやいので助かりますが。少し私と歩きませんか?」
女性に促され近づいていくと、そこが花畑であることに気付いた。
「綺麗でしょう?」
「・・・ええ」
これは私の素直な気持ちだった。目の前の花畑はとても美しかった。
白い花弁がユラユラと揺れ、輝いている。
「フォルテ。私が誰か分かりますか?」
「・・・神・・様?女神様でしょうか?」
「ふふ、そうね。あなた方を創造した神です。」
そう言うと女神様は止まってうつむいた。
「フォルテ、死んだ魂はどうなるかご存じですか?」
「・・天国に行くのではないのですか?」
「半分正解よ。・・・人族の他にも魔族がいるでしょ?あれはね前世で罪を犯し、魂が穢れたものが変化したものなの。ある意味ではあれも私達、神が創りだしたものと言えるわ。」
「・・・そうなのですね。」
では何故私はここにいるのだろう。
「フォルテ・・・あなたは私の創った子ども達をよく守ってくれたわ。ありがとう。だけど、あなたは天国に行くことはできないの。」
「・・・何故ですか」
「フォルテ。あなたは他の人を助けたくて犠牲になったのではないのでしょう?死を救いだと考えたのでしょう?それは本来あってはならないことなの。」
「・・・・・」
「本来なら、魔族に変化してもおかしくないことなの。でもあなたの魂は驚くほど澄み切ってる。この場所はその人の心を表わすの。ここまで美しいのは私も初めてよ。だからフォルテ、あなたにチャンスをあげる。だけどこれは祝福でもあるし、呪いでもある。」
女神様はそう言うと、私に光の球のようなものを差し出してきた。
それは自然と私の体へと入ってくる。
「あなたはこれで自死することができなくなりました。」
「!!!!そんなっ!女神様!それなら私、私は魔族になった方が!!」
「だまりなさい」
女神様の勢いに圧倒され、何も言えずにいると一瞬だけ女神様が悲しい顔になったような気がした。
「お行きなさい。そして自由に生きるのです。」
その言葉とともに、視界がぼやけていく。
私は・・私は生きていても死んでいても居場所がないのね。
令嬢はこのとき知るよしもなかった。彼女を想い、女神が我を忘れ涙を流し続けたことに。
no name 片栗粉 @andoroido2123tukareta
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