25 初めてのプレゼント
マイちゃんはドキドキしたまま時は進む。
私もドキドキが止まらない。
いつもの様に楽しい夕食を頂いた。マイちゃんは少しだけ緊張しているようだ。その様子にリーニャちゃんもセバスさんも少しだけ心配をしているように見える。周りのメイドさん達も少し気遣いを感じられる。
本当に良い人達ばかりだ。
夕食後はいつもははしゃいでしまうお風呂タイム。
リーニャちゃんと一緒にメイドさん達に巧みに脱がされ広い浴室へ突入する。さすがにリーニャちゃんはお淑やかにかけ湯をしている。マイちゃんは頭からザバーだった。そして飛び込むお湯の中。
さっきまでの緊張もほぐれたようで鼻歌を歌っているようだ。浴室については二人のプライベート空間になっているので私もしっかりと『浄化』で全身を清めてからマイちゃんの隣をキープした。
何かあっては大変だからね!
そしてリーニャちゃんも私の反対側に陣取りマイちゃんを愛で始める。そしてしっかりと体を温めたら互いの髪と体を洗いっこする。備え付けられたシャンプーやボディーソープは本当に良い香りがする。さすが侯爵家である。
もう一度湯船につかってから浴室を出るとメイドさん達が柔らかタオルでしっかりと優しく拭いてくれる。ついでに私も軽く拭かれた後、マイちゃん達と一緒にドライヤーのような魔道具で乾かされてゆく。
たまにはお世話されるのも良いものだ。と言いつつここ数日はこんな感じで私も堪能していたりする。極楽だ。
そして二人は今、ベットの上にいる。
ついに就寝のお時間です。
「リーニャちゃんに、プレゼントがあります!」
「えっいつのまに?」
私はマイちゃんの告白と共にマイちゃんのお手てにラッピングされた例のブツをそっと出す。時間がないながらも高速で素敵なラッピングをしてくれた店員さんに感謝だ。
そのブツを「すこしはやいけど、たんじょうびおめでとうリーニャちゃん!」と差し出したマイちゃんとそのプレゼントに驚くリーニャちゃん。
ゆっくりとマイちゃんの手からそのブツが手渡された。
「ありがとう」というリーニャちゃんの目にはすでに涙が……私も泣いちゃう!
「開けても、いい?」
「うん!」
マイちゃんもドキドキしていると思うけど元気いっぱいで返事をしていた。
そして開けられたプレゼント箱。
中には綺麗なケースが入っている。
そのケースを開けるとあの髪飾りが姿を現した。
「これ!今日のデパートで見た!」
「うん!リーニャちゃんに、にあうとおもうのー!」
髪飾りを大事そうに取り出し色々な角度から眺めるリーニャちゃん。
「つ、つけてみるね!」
リーニャちゃんがベットから降りると備え付けの大きな姿見の前に立ち、髪飾りを付けてみる。目を潤ませつつもとても嬉しそうだ。
「マイちゃん!ありがとう!これ、誕生パーティに付けていいんだよね?」
「うん!」
二人が手を取り合ってきゃっきゃとはしゃいでいる。私もまざりたい。だが私にはまだミッションが……マイちゃんの近くまでふよふよと近づくと、こちらを見たマイちゃんの胸元にもう一つのケースを取り出した。
こっちはラッピングしていない方だ。
「あっ……あのね、リーニャちゃんがいやじゃなければ……マイも、おなじのしてもいい?」
マイちゃんはそういってそのケースを開けリーニャちゃんに見せていた。
「マイちゃん!」
両手でマイちゃんを抱きしめるリーニャちゃん。
「私がつけてもいい?」
そう言いながら返事を待たずにマイちゃんを姿見の前に立たせると、マイちゃんの手の中のケースを受け取り髪飾りを取り出した。私はすぐにケースを『収納』するアシストをしつつ二人を見守っていた。
そしてマイちゃんの髪にリーニャちゃんが髪飾りを装着。イイ!凄くイイ!美少女が肌着姿でお揃いの淡いピンクの髪飾りを装着してきゃははうふふしている!魔王、魔王はどこ!今なら一撃のもとに粉砕してあげるわ!
はしゃぐ二人に呼応して私の心も荒ぶっていた。
一通り堪能した二人がベットへ戻ったので、枕元にそっと二つのケースを取り出す。
大事そうに髪飾りを外してケースへと戻し枕元に置く二人。そしてまた布団をかぶりおしゃべりを続ける二人。少し時間が経つといつの間にかクークーと寝息をたて眠りにつく二人。私はずっとその様子を眺めていた。
日々脳内にお宝ショットが増えてゆく幸せをかみしめながら……
翌日、少し眠そうに手をつないで食堂まで歩く二人はもはや姉妹と言って良いだろう。私は二児の母としてそれを見守った。イーリス?誰それ知らない。
◆◇◆◇◆
そして何事もなく日々は過ぎ、遂にリーニャちゃんの13歳の誕生パーティという記念すべき日がやってきた。
王族も来るというので何処でやるんだろうと思っていたら正面から右にずれたところに巨大なホールがあるという。当然屋敷にも隣接しているので給仕などに支障はない。準備もすでに整っている。
王族の方々は他の来賓が全て入場し終わったぐらいに到着予定で、その際にはみんなで入り口で出迎えるそうだ。
そして今回の警護は全て帝都の精鋭部隊、聖騎士隊が取り仕切るとのことで、すでに何人かの青いラインの入った銀のフルプレートアーマーを着た隊員たちが待機している。このような事は侯爵位、もしくは伯爵位の一部のみの待遇らしい。
それ以外は王族が前もって予定した訪問をする、という事はあり得ないという。それだけ侯爵位というのは重要視されるとのこと。やっぱり襲撃やら暗殺やら、何かしらがあったりするのかな?
朝からセバスさんがリーニャちゃんとマイちゃんに説明していたのはそんなところだ。リーニャちゃんは「当然知っているわ」という感じで聞いていた。マイちゃんは興味深そうに聞きながら聖騎士隊を眺めていた。
そして招待されている貴族たちが続々と入ってくる。それを増員されたメイドさん達や聖騎士隊の隊員が誘導してゆく。どうやら特にトラブルはないように見える。
私たちは普段着で屋敷の二階、テラスの影からそれらを眺めていた。念のため『聞き耳』を使って何を話しているのか聞いてみたが、特にこれと言った情報はなかった。屋敷が凄いとか庭が素敵とかどんなものが出てくるのかなどなど。
滅多に交流できない侯爵家との時間を楽しみにしているようだ。
暫くすると人の流れが終わり、どうやら開始の時間が近いようだ。時刻はお昼を少し回った程度。これから集まってもらった他の貴族たちにリーニャちゃんのお披露目があり、軽く食事を開始したぐらいで王族をお出迎え。
懇談が終わったぐらいで本格的にディナーの時間で立食を楽しみながら交流を深めるという流れらしい。
時間という事でリーニャちゃんが衣裳部屋へと移動する。マイちゃんと背中の私も一緒だ。今回、マイちゃんは侯爵家のお客様であり、リーニャちゃんのお友達であり、護衛でもある。
常にリーニャちゃんのと一緒にいるという任務でマイちゃんも超ごきげんなのだ。リーニャちゃんと一緒にいて何かあれば守るという普段と同様の楽しい時間が、重要任務として与えられた。当然ルンルン気分である。
そしてリーニャちゃんのお着替えが終わった。
純白のドレスに頭にはもちろんあの髪飾りが良いアクセントになっている。隣のマイちゃんもいつものメイド服、そしてお揃いの髪飾りをつけてしっかりと手をつなぎ入場する。
集まった貴族の注目がが集まり感嘆の声が漏れ聞こえる。ところどころメイド?とかモップ?とか聞こえるが誉め言葉として受け取ろう。なにせマイちゃんのチャームポイントだからね!
会場の一番目立つ席へと座るリーニャちゃん。
その両隣にはエイダルとマリアンさんが座る。
マイちゃんはリーニャちゃんの手を離しマリアンさんの横の方へ移動して待機する。立派で可愛いい護衛さんとして任務は続くのだ。そのマイちゃんを守る任務は私に任せてほしい!
そして招待された貴族たちが次々に挨拶にくる。三人とも笑顔で対応している。爵位の高い順からとかあるのかな?少しだけ気になる。
その後は少しだけ料理が出され、集まった貴族たちが適度に歓談しているようだ。リーニャちゃんたちも三人で席を立ち何人か挨拶周りをしているので、それについてゆくマイちゃん。
マイちゃんについてみんな気になっているようだが、まあこの状況で正しい判断は無理だよね。メイドさん?でもリーニャちゃんと手をつないで出てきたよね?じゃあ妹さん?じゃあなんでメイド服?という思考の迷路に……
そんなことを想像して私も少し気分が高揚してしまう。
みんな可愛いマイちゃんのことを、もっと見てー!私の、私の可愛い我が子なの!とっても良い子で強いのよー!
そしてそこで私は我に返る。
この会場の空気にほだされ、思わず可愛い我が娘、マイちゃんを自慢したい気持ちになってしまったようだ。危ない!マイちゃんの魅力が存分に発揮されてしまったら、みんなマイちゃんの虜になって、誘拐されてしまうかもしれない!
私は反省し、さらに不審人物がいないかと警戒を強めた。
そんな中、王族から派遣されていた聖騎士隊所属の音楽隊の奏でるファンファーレが鳴り響く。ついに王族が登場のようだ。
話を途中で切りあげるリーニャちゃんたち三人。
会場の入り口まで急ぐ。
もちろんマイちゃんと私も追随した。
遂に私もこの国の王、プーシャン・スーリヤ16世にお目見えすることになるのだ。まあそんなに緊張はしていないけど。『精神耐性』バンザイ!マイちゃんは凄い緊張しているよね。大丈夫!今日もとっても可愛いよ!
入り口の扉がゆっくりと開き、周りを聖騎士隊に守られ、豪華な服を着た王族と思われる方々が入ってくるのを待ち構えていた。
壮年の男性、多分あの男性が王なのだろう。そして綺麗な女性。王妃様かな?そして皇太子と思われるお子様が3人、男の子が2人、女の子が1人。エイダルが王と思われる男性に跪いて挨拶をしていた。
そしてリーニャちゃんが……
ほお……あれが皇太子のようだ。
二人の男の子のうち、少し背の高い方にドレスの裾を掴んで挨拶をしている。可愛い。そして少し頬が赤くなっている。皇太子と思われ方も何やら顔を赤くしている。これは……相思相愛だったりするのか?
興味本位に『鑑定眼』で覗き視る。
能力値はそれほど高くはないものの、『風の団』のマーリアさんも持っていた『鉄壁』スキルと『根性』という能力値を底上げするスキルが視えた。以外と優良物件かもしれない。
肩ぐらいまで伸びた金髪がチャラそうにも見えるが、とても優しい笑顔でリーニャちゃんを見ている。
今回の話は侯爵家は大貴族だし政略結婚的な意味合いもあるのかな?と思っていたけど……どうやらお互いにまんざらでも無いように見えるので少し安心。やっぱり幸せになってほしいからね。
そしてさらに挨拶は続く。
この国の王、プーシャン・スーリヤ16世に王妃様であるヘラベート・スーリヤ様、そしてリーニャちゃんと良い雰囲気のヘラクル・スーリヤ皇太子殿下。続いてもう一人の男の子がシャンドル・スーリヤ殿下。弟君である。
最後にラブシャント・スーリヤ姫殿下。第一皇女様で年は13才とのこと。あれ?リーニャちゃんと同級生だったりする?とっても可愛らしい金髪で髪を綺麗にまとめ上げている。お人形さんみたいだ。マイちゃんに負けず劣らず素敵な少女だった。
そして最後にエイダルからマイちゃんが紹介された。
マイちゃん、頑張って!
私は一段と仲良くなった二人を毎日脳裏に焼き付ける。いつまでもいつまでも!寝ているマイちゃん!寝ぼけているマイちゃん!お食事中のマイちゃん!おトイレのマイちゃん!お風呂のマイちゃん!マイちゃんなマイちゃんがあふれて止まらないよー!ああ!たくさんのマイちゃんに増殖して埋まる!窒息する!うわー!
『はっ!夢か!』
寝てないつもりだったんだけど……さて、気を取り直してマイちゃんを観察しなきゃ!
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