16 何すんのよ!
『で、私に何の用?』
意外に整頓されている工房のような部屋の椅子に『浄化』をかけマイちゃんに座ってもらうと、私はクルダレゴに話しかける。
「とりあえず、お前をもっと視たい!触らせてくれ!」
『やっぱ変態じゃん!』
私は『威圧』を発動してクルダレゴに警告を発する。
「ち、違う!俺は
『いやに決まってる!』
「そこを何とか……報酬は弾むぞ?」
『お金には困ってません!絶対にいや!』
誰がおっさんに触らせるか!私は断固拒否の構えを崩すつもりはない!
「お嬢ちゃんの腰のダガー、合ってないだろ……無理がかかってるから体傷つけちゃうぞ?」
『えっ?』
「あと背中の鞘、お前に合ってねえ。窮屈じゃねーか?あとお嬢ちゃんには長すぎる。邪魔で不便だろ?」
『うっ……』
このドワーフ……できる……
『あんたなら、ダガーも背中の鞘も直すことができると?』
「当たり前だろ!お嬢ちゃんにぴったりフィットするやつを作ってやる!背中の鞘もお前にぴったりのサイズでお嬢ちゃんに負担もかけねー完璧なやつをな!」
『マイちゃんにおさわりは禁止だよ!』
私はお嬢ちゃんにフィットという言葉に反応して再び『威圧』する。
「まてまて!そのぐらいなら触らんでもできるから!俺を誰だとおもってるんだ!ってかお嬢ちゃんはマイちゃんっていうんだな。よろしくな、マイちゃん」
マイちゃんがぺこりとお辞儀する。可愛い。
『そうよ!マイちゃんは私の可愛い娘なんだから!ってかクルダレゴってすごいの?』
私の言葉にクルダレゴがため息をつく。
「おまえな……『武具の魂』っつったらドワーフでも滅多に授からないスキルなんだぞ?だから俺は『鍛冶の神』って称号まである!」
『ふーん……じゃあ、ちょっとだけなら。あっ!洋服を劣化させなかったり傷まないようにする魔道具ってある?』
「よし触らせて、って洋服を?なんだって?」
『マイちゃんのメイド服、これは大切なものなの。だから劣化させない魔道具を探しに今日は別の店に行くつもりだったんだよね』
その言葉に顎に手をあて少し考えるクルダレゴ。
「そんならその洋服に劣化防止を付与したらいいじゃねーか」
『できるの?』
「おまえな、そんなの基本だぞ?現にそのメイド服とやらにも軽い劣化防止が付与されてるし、まあ俺が付与したらドラゴンの炎だって焼けることはないけどな!」
『あんたすごいんだね』
私の言葉にまたため息をつくクルダレゴ。
「とにかく、そのダガーより良いものと後ろの鞘を良いのを作ってやる。それとその服にも最高の劣化防止を付与する。それでいいな!」
『うん。よろしく!』
その返事を待たずにクルダレゴが私に近づいてくる。
『あっそういえば……』
私の言葉を待てないクルダレゴは私の握り締め……いつものビリビリが繰り出される。
「あ”あ”あ”お”お”お”!」
『ごめん言い忘れてた……大丈夫?』
「お”お”!」
かなりのダメージなはずなのにクルダレゴは手を離さない。そして顔を近づけ何やら覗き込んでいるようだ。視線がかなり気持ち悪い。
「ごれがあ”……なあ”るぼお”どお”お”お”!」
何やら納得しているようでブルブルと体を震わせながらも頷いている。そしてあろうことか私の体(柄)を上下にスリスリと撫でまわし始める。
『うぎゃー!何すんのよ!』
あまりの気持ち悪さに鳥肌が立つ感覚になった私は、全力の横回転で回り出しクルダレゴを振り落とす。それでも暫く手を離さなかったが20回転程回ったところで力尽きたようで地面に叩きつけれれ仰向けで白目を剥いて気絶していた……
私は魔力が枯渇しない程度の全力で『浄化』を発しながらマイちゃんの元へと戻った。
『マイちゃーん、おっさんに嫌らしい手つきで触られたのー!』
「よしよしママはいいこ!」
きっと私の真似して撫でてくれるマイちゃん尊い!これでおっさんの穢れは払われただろう。と思ってクルダレゴを見てみるとまだ白目を向いて倒れているが、その顔は恍惚の表情を見せている……
『マイちゃん……帰ろっか……』
「うん!」
私はふわりと浮かびマイちゃんの背中の鞘に収まった。
ついさっき『新しくぴったりのを作る』と言われたからか、その鞘の窮屈な感じに少し不快になるが、思えばマイちゃんの背中に縛り付けられている感覚も覚え……何かに目覚めそうになる。
『イーリス、あと頼んだ。約束の装備は作らせといてね』
「えー、私もマイちゃんと一緒に帰るんだけど?」
両手を首の後ろに充てて不満そうなイーリス。
「イーリスちゃん、マイのそうび、よろしくね!」
「わかったよマイちゃん!きっちり締め上げて明日までには絶対作らせるから!お姉ちゃんに任せてね!」
忠犬のようにマイちゃんの前に座り込んで目を輝かせているイーリスにそれをヨシヨシするマイちゃん。イーリスの口元はだらしなく緩んでいた。これでなんとかなるだろう。そう思って冒険者ギルドのゲストハウスへと戻っていった。
精神的に疲れた私を気遣ってくれたマイちゃんが、今日はお出かけせずに何か買ってお部屋で食べるという素敵な提案を受け部屋でまったりとした時間を楽しんだ。マイちゃんは気遣いもできちゃう本当に良い子!
それにしても私の『精神耐性』機能していない気がする……かなり疲れた感覚にスキルの効果を疑った。まあアホ女神のスキルだし……そんなことを考えながらも、今日もマイちゃんに抱かれて癒されながら、一日が終わってゆく。
◆◇◆◇◆
翌朝、今日は予定通りの8時にはぴったり目を開けるマイちゃん。
もちろんその顔をずっと見ていた私と目が遭った。まあマイちゃんは私の目がどこにあるか見えないだろうけど目があったのだ。まあ私も視界がどこから出てるのかよく分からないけど……
「おはようママ!」
『おはようマイちゃん!』
挨拶を交わした後は布団から出てきたマイちゃんにメイド服をかぶせ……今日は違うのだな……
『マイちゃん、今日はこっち着とこうね。あとでメイド服には劣化防止してもらうから』
「わかったー」
私はあまり着心地は良くはないけどマイちゃん用に買っていたワンピースを上からかぶせる。それを見越してマイちゃんはバンザイをしている。二人の息の合った連携プレーだ。そこに言葉話いらない。あるのは互いの愛だけだ!
ゲストハウスを出て下に降りるとすでにイーリスが待機していた。
「マイちゃんおはよう!装備できてるはずだから一緒に見に行こうか!」
「マイ、おきたばかりなの」
「じゃあ!まずは食堂だね!お姉ちゃんが奢ってあげる!」
「わーい」
うん。マイちゃんのイーリス操作術は完ぺきだ。
食堂に行くとイーリスが隣に座ってきてメニューからおすすめを指差していた。新メニューらしい。マイちゃんが目を輝かせて「これがいい!」と言っていたので見ると、マイちゃんプレートという名前がついていた……
運ばれてきたのは普通のサンドイッチ、サラダ、あとこれは……ハモモンジュースのようだ。それよりも何よりもそのサンドイッチには一本の旗が立っていた。やっぱりこれか……マイちゃんが目を輝かせたのは……
マイちゃんはその良く分からない狸?のような顔が書いた旗を抜くと、私に差し出し「ママこれー」と言ってくるので大事に収納にしまい込んだ。前回のあのよく分からないような国旗的なのもしまってあるからね。
今日はこれを握って寝るのかな?
『ねえ、これはなに?勝手にマイちゃんの名前使って……』
「もちろんマイちゃんにしかこのメニュー表は出さねーよ」
『なるほどね。でも毎日サンドイッチは飽きるんじゃない?』
「もちろん日替わりに決まってるだろ」
『あんた……以外と凄いわね』
私の言葉にドヤるイーリスがなんかムカつく。
『この旗は?』
「もちろんマイちゃんのために俺が書いた!」
『大丈夫なの?ほら、このインクの安全性とか』
「当たり前だろ。昨日クルダレゴの奴に果物を食用インクに変える魔道具作らせたから100%天然だ」
こいつは……よし!あとでクルダレゴに同じの貰おう。私もパンにマイちゃんの顔書いたりしてもてなしたい!
そんなひそひそ話をしている間に、マイちゃんはマイちゃんプレートを完食していたのですかさずさっき仕舞った旗を取り出しマイちゃんに手渡した。私は食後の休憩の間、その旗をご機嫌でふりふりしているマイちゃんの様子を堪能する。
隣で気持ち悪い笑みを見せているイーリスはとっととお金を払って出ていってほしい。
『イーリス、もう戻らなくていいの?仕事は?』
「俺に仕事なんてあるわけないだろー」
『それもそうね』
「今頃ヘックが頑張ってくれてるよー」
『そうね』
だめだ、こいつ……
イーリスと話をしていると自分もボケてしまいそうになるので、マイちゃんを眺める作業に没頭した。
それから10分程度後、マイちゃんも旗振りを十分堪能したようで再び収納へとしまい込む。そして向かうはクルダレゴの元へ。
イーリスは当然の様についてきた。まあマイちゃん一人であそこに出入りするのを見られると、また変な噂が立ちそうで可哀そうだから今回はこれでいいのか。そう思って黙っていた。
「きたぞー!」
その建物に入るやいなやイーリスは奥に向かって声を掛ける。
ドタドタと音をたてて奥からクルダレゴが走ってきていた。今日は魔道具で優男にはなっていようだ。そしてその目は血走っていた。なんか怖いんですけど……
昨日のこともあり、抱きつかれたりしないか若干警戒しつつも無事装備一式を受け取ることができた。
マイちゃんに装着してみると驚くほどぴったりフィットする。マイちゃんも新しい装備にルンタッタしてくるくる回っていた。私も背中の新たな鞘に収まると、やばいねぴったりだ。
というか50cm程の短い鞘に私が入ると……これ魔法袋みたいな奴?どう考えても私が入っている長さと合わない。マイちゃんの背丈に合わせた短い鞘に私がすっぽり……それでいてちゃんと私の足(柄)にフィットする感覚。
私はクルダレゴに視線を向けると若干ドヤってた。
またムカついてきた。
私は昨日のあの嫌らしい悪行を忘れはしない!
思い出したのでイラっとしてしまい『威圧』が少し漏れてしまい、クルダレゴがビクっとしていたのでちょっと怒りが収まった気がした。
おもむろに二つを鑑定すると……
――――――
『マイのダガー』力+50 速+10 魔+10
『マイの鞘』耐+50
――――――
なにこの性能!そこにある鋼の長剣で力+30程度なんだけど?ダガーでそれ上回るってどういう事?あと鞘付けただけで耐+50て……
まあいい。気にしないことにしておこう。
マイちゃんの新装備の次はメイド服だ。
私は『収納』からメイド服をおもむろに出し、クルダレゴに『影の手』で手渡した。
――――――
名前:マイ
種族:人族
力 60(+50) / 耐 30(+50) / 速 30(+10) / 魔 60(+10)
パッシブスキル 『精神耐性』
アクティブスキル 『小回復』
称号 『ママの飼い主(呪)』
――――――
装備含めるとマイちゃんの力が3桁突破!凄いねマイちゃん!『強化』も使えば220!それでもディッシュどころかクルダレゴにも勝てないんだよね。まだマイちゃんには強くなってもらわないとね。
私ももっと強くならなきゃ!マイちゃんは私が絶対に守る!
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