第12話 エピローグ 赤炎の花嫁

 辺境騎士団が建造を続ける砦の丘の片隅に、私は無理を言って両親の墓を置いたもらった。

 竜が焼いたのは、蛮族だけでは済まなかったのだ。

 だが、たとえその中に父が含まれていたとしても、私にはそれを責める資格はない。

 あの翼は、人がこの地に立つよりも、遠い以前から、そういう類の存在なのだから。

 フラムの町の人々は、私のことをてんこ盛りの揶揄を込めてこう呼ぶようになった。

『赤炎の花嫁』と。

 まぁそんなことよりも、今の私はあの世にて語らう、父と兄の姿を海原の彼方に勝手に思い描いていた。

 兄は、甚だ迷惑だと、私の鼻頭を小突くかも知れない。

 そう言えば、私の鼻を小突いた、あのポッツァンゲラの男は、兄が新王になった話を聞いて、何故か国には戻らず、辺境騎士団に入団した。何か事情があるのだろう。

 そして、当然としても、残念なことに、ランメルト卿との婚姻話は、白紙に戻された。

 今でも、出会った時の衝撃は覚えている。

 今なお、その想いはこの胸を焦がして止まない。

 異母兄弟の長男ソレイユの後見として、私がフラムの町を治める。

 だから、いずれ機会は巡るはずだ。

 念願叶ったとしても、安寧は日々は訪れないかも知れない。

 騎士たる者は、戦場に生きる者だから。

 それまで、フラムの町を再興する仕事に、全力を傾けよう。

 たとえ、フラムの人々が、以前のように私を祝福してくれないとしても。

 私は、戦おう。

 生きている限り、一世一代の大勝負を勝ち抜かねばならないのだから。


 (つづく)

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4. 辺境騎士団と赤炎の花嫁 小路つかさ @kojitsukasa

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