この世界に魔王はいない

ベニテングダケ

第1話 異世界への疑問点

2101年8月10日、俺浜市亮太は、小説に捕まった。

2090年、ある科学者が、人間を小説に入れる技術を開発させた。

名前は「ネバー・エンディング・ノベライズ」自分で変える物語。最初に開発された小説は、「桃太郎」有名な昔話だ。次に、「バットナイツ」というライトノベル。いわゆる転生モノだ。

そして3つ目、「キング・エピソード・イヴ」科学者達の最高傑作と呼ばれた物語。

「キング・エピソード・イヴ」の略称をイヴエピソードとそう呼んだ。

イヴエピソードは転生モノのライトノベルだが、キャラクター一人一人に凝った設定があり、更に主人公は、魔王、全てを統べる覇道を行くという物語。ゲームの様にレベルやスキル等もある。

そして一番、最高傑作と呼ばれる理由は、日本、アメリカ、多種多様な国の人間が物語に入れるという点。

だが、どんな小説でも、必ず終わる。

その最後の日が2101年8月10日だった。

「本当に…出れない」

2101年8月10日に小説に入った瞬間、小説から出る為の機能が、無くなっていた。

「レベルや、スキルは…見れるな」

ただ、自分のレベルが元々の90という数字から1になっている。

「スキルは…不老不死…不老不死⁉︎」

この小説には無かったスキルが追加されてる。

というかここはどこだ?小説内に記録していたリスポーン地点とは明らかに違う…街というか…。

「どうせエラーだろ。30分もすれば、運営から通知が…通知機能もないのか」

レベル、スキル意外の全てが消えている。

色々回ってみよう。とりあえずギルドに行ってみよう。ギルドなら他にも誰かいるかもしれない。この街には、NPCの獣人や人しかいない。

「ギルドは…ん?マップは見れるのか」

マップ機能は残っているらしい。

「ねぇあんた」

声をかけられ振り向くと、バンダナを着けたおばさんがいた。

「え…あ、はい」

「迷ってるのかい?良かったら道教えるけど」

「あぁ。大丈夫です。地図を持っているので」

「そうかい。旅なら気をつけてね」

そう言っておばさんは自分の屋台に戻って行った。

「…あれ?NPCって喋ったっけ」

NPCは確か喋らなかったはず。まぁ今は良い、ギルドへ急がなければ。俺は走ってギルドへ向かう。

この時気づいていれば良かったのだ。何故自分がここまでこの世界に馴染めていたのかを、何故この世界にあまり疑問を持たなかったのか。何故現実に戻れなくなったのか。

何故一度死んだ俺がこうやって生きているのか。


2101年8月10日のニュースです

2101年8月8日東京都杉並区でトラックに跳ねられ一人の男子高校生が死亡しました。

名前は浜市亮太君。運転手の証言によると、亮太君は、跳ねられる前、イヤホンを着けてその場で立ち止まっていたらしく。警察は、自殺と見て調査をしています。

更に壊れかけていた亮太君のスマートフォンには、今日終了予定の、人気ノベル、「キング・エピソード・イヴ」が写っており、関係も調査しております。




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この世界に魔王はいない ベニテングダケ @oojamiuo

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