第59話

 ザルカ帝国首都上空で、核弾頭が炸裂した。


 炎の嵐は、一瞬にして都市を飲み込む。


 数千人の人々が悲鳴を上げる間も無く蒸発し、続いて数十万人の人々が火だるまになって焼き尽くされる。


 想像を絶するような爆風が、雑然としつつも統一感を持って立ち並ぶ高層建築物群を、炎に包んで薙ぎ倒す。


 ほんの数分もしないうちに、栄華を極めたザルカ帝国首都は瓦礫と死体の匂いだけが残る地獄に変わった。


 爆発の吹き戻しが、炎の燻る地獄へと大量の酸素を吹き込ませる。


 発生した火の濁流が、最初の核爆発を生き残った全てを火に包んだ。


 消防も病院も機能を喪失した都市の中で、炎は燃やせるものを全て燃やし尽くすまで消えることは無い。


 そして、後には放射能で汚染された廃墟群だけが残された。


 生き残った僅かな人が、1人また1人と首都を逃げ出していく。


 持ち出すものはおろか、行く当てすら無く。


 すでにザルカ帝国の主要都市は全て核の業火で焼かれ、苛烈な内戦は止まるところを知らず、政府機能も完全に消滅した。


 全てを失ったザルカ帝国の民が、再び安住の地を得ることは永遠にない。

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