第54話

 ザルノフは自分に向かってきた敵兵の腹部を散弾で吹き飛ばすと、周囲を見回した。つい10分ほど前には大勢いた敵兵も、ほとんどが骸と化して部屋のあちこちに転がっている。


 コンピューターが整然と並んでいたサーバールームも、弾丸や手榴弾に破壊され尽くして、その機能を完全に失った。


 共産党中央委員会ビルの破壊。ザルノフたちは、ついに任務を達成した。


 だが、その代償は大きかった。


「こちらカヤ。サリア、ライツ死亡。ガーラン重傷。オーバー」


 ヘッドホンから、ザルノフへ絶望的な情報が伝えられる。


「こちらザルノフ。分隊員の半数を失った現状で、これ以上の戦闘は不可能と判断。これより撤退する。シャーナにも伝えてくれ。オーバー」


 ザルノフは感情の一切を沈めて、そう伝える。


「了解。オーバー」


 ザルノフからの要請を、カヤは受理した。


 所属する兵員の半分を失った部隊は、その時点で壊滅と判定され、部隊としての機能を喪失する。こうなった時点で、交戦の継続はもう不可能だ。


 なにより、すでに十分な戦果は出た。


 ザルノフは静かに銃口を下ろした。


 苛烈な戦闘でザルノフも全身に弾丸を喰らっており、すでに体力の限界を迎えつつある。


「地獄で、また」


 彼はそう言い残すと、踵を返してサーバールームを飛び出した。

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