第48話

 首都郊外の公園に、一機のヘリが駐機していた。


 広い運動場と遊具、小川の流れる森を備えた公園は、いつもであれば市民の憩いの場として使用されているはずだった。


 だが今は、APMC社の部隊によって制圧され、軍事拠点と化していた。


 運動場にはヘリポートとテントが設置され、森には塹壕が掘られている。


 ここでも少なからず攻防戦はあったようで、公園の中には、ザルカ帝国軍兵士の遺体が所々に転がっていた。


 APMC社の兵士達が、遺体の回収に当たっている。


 突然、公園の運動場に法定速度を超過した一台のバンが走り込んできた。横に滑って速度を殺し、派手に砂埃を舞い上がらせながら停車する。


 警戒に当たっていた戦闘員が、敵兵が乗り込んでいる可能性を考慮し、銃を構えながらそれに駆け寄る。


 バンのドアが開いて、紺色の戦闘服にカービンタイプの自動小銃を持った戦闘員が降りてきた。


 その内、1人は狙撃銃を、1人は散弾銃を背負っている。


「こちらです」


 APMC社の社員は銃口を下ろして敬礼すると、ヘリの方へと走り出した。バンから降りてきた戦闘員たちが、その後に続く。


 公園の運動場に駐機している青い塗装をされたヘリは、すでに飛び立つ準備を完了させており、プロペラも回転していた。


 土埃が舞い上がる。


 外観はテレビ局の空撮用ヘリだが、カメラなどの撮影機材の代わりに、フレアの発射装置やラペリング装備などが取り付けられていて、そのまま軍用ヘリとして使えるほどの性能がある。


 パイロットはAPMC社の社員ではなく、練度の高い特務機関の隊員だ。


 シャーナたちは、小走りでヘリに駆け込む。


 鉄骨や装甲板が剥き出しの機内はがらんとしていて、フル装備の戦闘員が5人入っても十分に余裕があった。


 ヘリは、プロペラの回転音を一段と高くして離陸する。


「こちらカヤ、作戦継続に支障なし」


 ヘルメットのヘッドホンに、情報を収集しているカヤから報告が入った。


「了解。作戦を続行する」


 ヘリは上空でホバリングすると、首都中心部にそびえる共産党中央委員会ビルを目指して加速した。

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