第九楽章 鳴り響くヘイムダルの角笛
第39話
「カヤ。状況を教えてくれ」
高速道路を疾走するバンの中で、ザルノフは別行動中のカヤに電話をかけた。
「とりあえずザルカ帝国中で活動している全ての特務機関部隊に連絡して、養成したテロリストたちの編成を行っているところ。僕の運用している潜伏工作員にも指示を出したから、あとは実行命令を出せば即座に行動を開始できる」
カヤは、少し疲れた声色で答える。
「助かるよ。相変わらず仕事が早いな」
「だけど、武力蜂起の規模は予定の三分の二程度になっちゃったからね。成功するかは微妙なところだ。全く。工作員ぐらい、ちゃんと警戒しておいてくれよ」
カヤは、呆れたため息をつく。
「悪いな。流石に平和団体が軍事訓練を受けようとしたら不審に思われることぐらいは、ちゃんと考えておくべきだった」
ザルノフは、少し申し訳なさそうにそう言った。
「すでに一部地域では情報調査室とAPMC社の戦闘部隊が交戦状態に陥っているからね。控えめに言っても、かなりまずい状況だよ」
「国内治安の急速な悪化。革命前夜にはおあつらえ向きだな」
ザルノフがふと笑った。愉快そうな、それでいて寂しげな笑いだった。
「それじゃあ、もう明日の早朝にでも始めてしまうか」
カヤは、状況に見合わない明るい声を作ると、そう提案した。
「そうだな。大きな花火を打ち上げよう」
バンの目指す先には、美しい高層建築物が立ち並ぶ世界最大の都市圏、ザルカ帝国首都が鎮座していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます