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美咲には、八つ歳の離れた兄がいる。その兄――圭介の消息が、一週間ほど前から行方が掴めなくなっているのだと言う。圭介は既に成人し、ある製薬会社で働いている。それに加えて、彼はブラリと旅に出るのが好きだった。だから、彼女の両親は「もう子どもじゃないんだから」とあまり深く考えていない。美咲も、不安には思いながらもその意見に同意していた。
三日前までは。
丁度三日前の夜遅く、美咲の携帯に兄から電話がかかってきた。驚いて電話に出た美咲に、切羽詰まった様子で彼はこう告げたそうだ。
『K駅にあるコインロッカーへ行って、中の荷物を処分して欲しい』と。
何度理由を訪ねても、ひたすらその一点張り。詳しいことはけして語らなかった。
やがて、彼の短い悲鳴が聞こえ、電話は切れた。
以降、何度電話しても繋がらないのだと言う。
会社に問い合わせても簡単にあしらわれ、両親は真剣に取り合ってくれない。
そうこうしている間にも、刻一刻と時間は過ぎていく。
正体の掴めない不安と焦燥に駆られた時、祖母の言葉を思い出したそうだ。
『困った時には〝何でも屋〟さんを頼りなさい』という、幼子に聞かせるおとぎ話のような言葉を。
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