第42話 網谷くらりの策略♡

 網谷さんと今週の予定を取り付けたあと、僕たち2人はそのまま図書館で自主学習を行っていた。


「……あっ!」


 その最中、向かいの席に座る網谷さんが、突然大きな声を上げる。


「どうしたの?」

「何か、消しゴム落としたっぽい……。探してくんない?」


 キョロキョロと辺りを見渡す彼女は、不安げな顔を浮かべている。


「ぼ、僕も探してみるよ」


「ホントに?助かる!アタシの席の周りにはなさそうなんだよね」


「ってことは……僕の周りか、机の下にあるんじゃないかな。僕のほうが身長低いし、机の下にくぐって見てみるよ」


「ヨロシク〜〜♪」


 何故か楽しげな網谷さんはさておき、席から外れて机の下を覗き込む。


「うーーん……」


 まだ陽があがっているとはいえ、ここは校舎内の図書室。室内である以上、机の下は影になっててよく見えない。


 もう少し背を屈めて、目を凝らして見ると……。


「ウ………ッッ!!?」


 消しゴム以上のとんでもないモノを目撃してしまい、衝撃で喉を詰まらせそうになる。


 ソレは、真向かいに座る網谷さんのミニスカートの中に隠された、鮮やかなショーツであった。


 肉付きのいい太ももと潰れた臀部の間に挟まれた真紫のショーツは、視線を釘付けにするには十分すぎるほどの、性的な魅力を放っている。


 しかもソレが、チラリと見え隠れするならまだしも……。


 網谷さんは両脚をおおっ広げて、その下着の存在を顕にさせている。


 そう、それはまるで……僕に見てほしい、と誇示しているかのように。


「どーぅ?消しゴム、あったーー?♡」


「…………」


「……ねーぇ、たくちーーん?♡」


「……ひゃ、ひゃいっ!!?」


 ミニスカートの中で圧倒的な存在感を放つショーツを凝視していた僕は、机を挟んで聞こえてくる網谷さんの声で正気を戻す。


(そ、そうだ……網谷さんの消しゴムは……!?……あっ!)


 網谷さんの下半身から顔をそらし、床に目を向けると、やがて小さな白い消しゴムを見つける。


 ……網谷さんの座っている、椅子の下に。


「……あ、あったよ。消しゴム……網谷さんの、椅子の下に」


「えーー、ホントにぃ?♪ありがとー♡」


「う、うん……どういたしまして……」


 しかし網谷さんは、その席から動く気配が無い。


「あ、網谷さん?なんで取らないの?」


「えーー?たくちんが見つけたんなら、たくちんが取ってくんない?」


「エッッ!!?」


 網谷さんからのとんでもないお願いに、素っ頓狂な声を上げてしまう。


「だってーー、今背を屈めてるたくちんのほうが、床に落ちてる消しゴム取りやすいジャン♪しかもアタシ、おっぱい重くて屈むのキツイんだよねーー」


「………そ、そう」


 何だその理由……と思いながらも、僕は更に背を屈めて机の下に進入する。


 背が低い、というのは比較的狭い場所に入りやすい、という利点がありながらも、それ以上に不利な点も存在する。


 即ち……腕が短いため、物に手が届きにくいのだ。


 何が言いたいかと言うと。


 恥ずかしげもなく股間を広げている網谷さんに限りなく近づかない以上、椅子の下の消しゴムを取ることは容易ではない。


(ガマンだ……ガマン……!!)


 少し目線を上げれば、そこには秘部を包んだ薄生地のショーツが待ち構えている。


「目にとらえて記憶に刻みつけたい」という劣情に流されないよう、僕は消しゴムめがけて腕を精一杯伸ばす。


「がんばれたくちーん、あともう少しだよーー♪」

 真上の網谷さんは、そんなのんきな掛け声を送ってくる。


「フンッ……!!!」


 網谷さんの長い脚がすぐ目の前まで迫り、堂々と解放されているショーツまであと数十センチ……といったところで、


 パシッ!


 僕は、椅子の下に転がっていた消しゴムを拾い上げることに成功する!


「や、やった!」


 このまま席に戻れば、肉付きのいい網谷さんの下半身を見ることはない……そう、思っていたのだが。



「つーか、まーえ……たっ♪」


 網谷さんの掛け声とともに、長い脚が突如として背後に回り、そのまま引き寄せられてしまう。


 脚による絡め取りを回避しきれなかった僕は、姿勢を崩して前のめりとなり。


「フゴッッ……!!?」


 顔面は網谷さんの股間へとフルダイブし、鼻先とショーツをドッキングさせてしまう。


 してやられた………!!!


 そう思うのも、もはや後の祭りで。


「おほっ……♡」


 頭上にいる網谷さんは、おもむろに発情したような汚い声を上げるのだった。







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