第36話 尻軽女の重い過去➀
「そんじゃまず、たくちんに見せたいものがあんだけど」
網谷はそう言いながらスマホを取り出し、起動したあと画面を操作する。
見せたいもの……ってことは、何かの写真か動画かな?
「ホラ、これ。誰だと思う?」
網谷が見せてきたのは、一人の少女の写真だった。
滑らかな黒髪を肩まで伸ばし、つぶらな瞳と柔らかい笑みからは優しく純朴そうな印象を受ける。化粧をしてなくとも中々に可愛らしく愛嬌があり、学校指定であろう黒い制服をしっかりと纏っているのは、本人の品行方正さの表れだろう。
そして、あまり高くない頭身から察するに、この子は小学生かと思われる。……だというのに、どうしても目が吸い寄せられるのは、服の上からでもはっきりとわかる、ふっくらとした胸部の膨らみ。おそらくこの子の成長速度は比較的顕著だったのだろう。
「だ、誰だろう……網谷さんの従妹とか?」
「ぶっぶーー。ハズレ」
目の前の網谷は、悪戯が成功したかのような小意地悪な笑みを浮かべる。
「それ、アタシ」
「へ???」
「それ、アタシ。小学生のころのね」
網谷からの答えが理解できずに間抜けな声を漏らすと、彼女は親切に言い直してくれる。
衝撃で声が出せないまま、目の前の網谷と写真の女の子を見比べる。
「…………え、えぇっ!!?こ、これ網谷さん!?」
「そ♪」
こちらからの確認に、網谷がピースサインで答えてくれる。
この子がかつての網谷だと言われてもにわかに信じられないのは、彼女を知っている身として当然だと思う。
写真の中の網谷は、まさしく「いい子」そのもの。大人しめに整えた黒髪も、化粧をつけていない素の顔も、正しく着用した制服も、ギャルギャルしい現在の網谷とは月とスッポンと言えるぐらいに程遠い。……まぁ、どちらも可愛いのだけど。
「……正直、この子がかつての網谷さんだなんて、未だに信じがたいな」
「えぇ、そんなに??ほら見てよ。アタシのこの二重瞼とか、顔の輪郭とかそれっぽいっしょ?」
「あぁ、まぁ……」と相槌を打つが、現在の網谷のインパクトが強すぎて、写真のほうの純朴そうな網谷が霞んで見える。
というか、まぁ……小学生の段階でこのデカさなら、高校生になった今はKぐらい成長しても不思議ではないか……。
「…………あ~~、なに?たくちん♡もしかして、小学生のアタシのオッパイで納得しちゃった??♡♡」
「しシ4、してないけどッッ!!?」
ニヤニヤとにやける網谷に対し、図星とばかりに声を裏返して否定をする。そんなに僕の視線って露骨なのか……。悲しいかな、これも童貞の性質なのである。
「ま、たくちんにその写真を見てもらったところで、特別に教えてあげる。そのアタシが、どうやって今のアタシにまで至るのかを、ね」
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