第6話 網谷くらりの爆乳♡

「にひっ♡たくちん、そんなところで何してんのぉ?♡」


 ゆさっ♡ゆさっ♡

 僕を視界にとらえた網谷は、頭を収納できるほどに大きい爆乳を小刻みに揺らしながら、こちらに近づいてくる。

 その美顔に貼り付けた笑みは、生徒指導の藤部とうべから説教を受けていたときとは程遠い、可愛らしくも魔性じみたものに感じた。


「え、えぇと……」

 藤部とのやり取りを陰に隠れて見てました……なんて言えるはずもなく、どう言い訳しようか思案するも、網谷はすぐ目の前まで迫ってきていた。


「んーー?♡」

 網谷はこちらの答えを待つように、余裕を含んだ笑みで、コテンと小さく首を傾げる。


 か、可愛い……!!

 彼女の校内一を誇る爆乳もすさまじいが、その上にある美顔もそれを相殺するほどに魅力的だ。言い訳する事すら忘れ、思わず見とれてしまいそうになる。


「……ねぇ、もしかして……陰でコソコソ、私のおっぱいをガン見してた、とか?♡」


 寄りにもよって、本人に突かれてほしくなかった図星を的中させてしまう。


「っ!そ、そんなこと……!!!」

 ない……とは言い切れなったが、とりあえずは否定しようと網谷を直視した結果。


 ばるんっ!♡

 彼女の乳房と僕の顔面が対面する形になってしまい、超至近距離でその爆乳を凝視してしまう。


 はだけた襟から覗く、圧倒的なまでに柔らかそうな乳肉。

 陶磁器のようにまぶしく白い肌。

 粉ミルクのような甘い香り。

 シャツから透けて見える、派手な装飾のブラジャー。


 それらを超至近距離で体感したことにより、僕の理性は雄の本能に絆されてしまい、下半身がムズムズと疼き出す。


「………うぅ………」

 誤解を解こうとしていたことすら忘れ、僕は情けなく呻くことしかできず、せめて背を屈めてから明後日の方向に目を向ける。


「そんなこと、なぁに?♡そっぽなんか向いちゃって、向こうに何か気になるものでもあるの?♡」


 たゆんっ♡

 たゆんっ♡


 こちらを訝しむ網谷が背を丸めたことにより、釣鐘状になった彼女の乳房が淫猥に揺れる。

 かろうじて意識を逸らすことしかできなかったが、思考回路は視界の隅でこぼれ落ちそうになっているおっぱいのことでいっぱいだった。


(うぅ……!!)

 丹田は疼きどんどんと股間に熱が溜まり、頭蓋の中は羞恥で沸騰してしまいそうになる。

 おそらく自分の顔は茹でダコのようになっているのだろう…そう自覚しながら、果たしてこの状況をどう打開しようか。そう考えていると。


 キーン、コーン、カーンコーン。


 校舎中に昼休みの終了を知らせるチャイムが響き渡る。


「あっ、あ!午後のチャイムが鳴ったよ!網谷さんも一旦、教室に戻ろう!?」

 何が一旦なのかは不明だが、これを好機と捉えた僕はワタワタとしながら話題をすり替える。

 優位な立ち位置にいた網谷は姿勢を正し、少し真顔になったあと。


「そうだね♡一緒に戻ろっか♡」

 再び可愛らしい笑顔を浮かべる。僕をからかうのは保留にしたようだ。

 僕はほっと一息つきながら、網谷よりも少し早足で教室へと戻るのだった。


「おかえり、四季クン。中々に時間がかかったようじゃないか……む?どうして顔が赤いんだい?」

「何でもないよ……」

 教室では既に席について次の授業の準備をしていた不破に迎えられたが、今あったことを正直に言えるわけないので適当に誤魔化す。


 買ってきたペットボトルをバッグにしまった僕は、ひんやりとした木製の机に頬をつけ、湯だった頭脳を冷却する。


 モデルのような美顔に、子猫のような可愛い笑顔。目のやり場に困る露出の多さ。


 そして、大きなおっぱい。


 身をもって知った。

 彼女は、網谷くらりは。実に魅力的な女性で。

 実にニガテな女性であった。


「はぁ………」

 積もりに積もった心労を吐き出すように、ため息を付く。


「………♡」

 目を瞑っていた僕は、こちらに視線を投げかけてペロリと小さく舌なめずりする、網谷の妖艶な表情に気づくことはなかった。



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