第7話 こまったちゃん

 我々が終わらない金曜日をループし始めて数万年がたったが、宇宙人がやってきた。

 彼らは、コンビニから大きさが目測できないものまで、大小形も様々な大船団を組んで、いきなり地球中の空を覆った。

 我々は歓迎の意を込めて、全人類が民主主義ヘルメットを被り、あぐらをかいて頭を足の間に入れる、尊敬のポーズで迎える。


 宇宙人たちは宇宙船のテラスのようなところに数人出てきた。

姿形は人類そのものだったが、全員スキンヘッドで、封筒から頭がぴょこんと飛び出した服を着ている。メガホンのようなものを口に当てて、全人類にテレパシーを送った。

『オメーらか!まだスイッチを押し続けてんのは!』


 控えめに言ってブチギレていたし、おそらく24時間以内で地球まで来れる文明が自分たちに怒っているのはめちゃくちゃ怖かった。

 俺は念の為に持ってきたスイッチを即座に回した。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


 宇宙人たちはいくつもの星を探して、知的生命体を探していたらしい。

逆にどうして自分の国だけがループ権を独占していると思ったのだ?

と聞かれ、少し恥ずかしかった。

ことの顛末てんまつはこうである。


 宇宙人たちは何度聞いても覚えられない国から来ていて、星一つを国家として統一していたらしい。統治形態は独裁者形態で、星ひとつの思想を網羅するシステムがあった。

 ループの解読に数年、星の思想形態の革命に数100年、独裁が終焉してシステムによるスイッチのコントロールを行なっていたが、システムを使ってもループが終わらないことで、事態は星の外でも起こっていると気づく。


 そこから数万年、同じ知的生物を有する星を見つけては、システムを使いスイッチのコントロール下に置いたが未だ終わらず、我らの星が現状24時間でシステムの統治を完了できる技術的限界の距離らしい。

ちなみにどういうわけか、我々と似たような容姿のもの以外、優れた文明があってもスイッチを持っていないらしい。


 民主主義ヘルメットを着用し全人類に共有された。

『最初は怒ってごめん。』

と謝罪もあった。


 システムは、全ての知的生命体をデータベースに取り込み、スイッチを押す、正確には回す動作をする予測がある時即座にその生命体、一体を消滅させる、というものである。

『この星のローカルに入るにはそのヘルメットが必要だ。準備ができたら教えてくれ。』

宇宙人たちはそれだけ伝えると、1日の終わりまで、それぞれ観光を楽しんだ。


「我々がループから抜け出すのに数日準備させてくれ、連絡手段はあるのか?」

『X というサイトに全人類がOKと書き込めばまた来る。』


 話はまとまった。

生命体を吹き飛ばすというのが好奇心に引っかかった。ただ、やってみると死んでしまうので、ループが終わってしまうと困る。

 結局、みんななるべくスイッチを回さないようにしよう、と決めたのである。

彼らの話が本当ならおそらくループははずなので、二日目にやってみよう。と変化を楽しむことにした。



 そして約束の日が来た。

昼くらいに彼らは来た。

『一度ヘルメットの読み込みが終わったらもう来ないから、用があればそっちが来い。』

と言い、この星にない技術を我々に読み込ませていった。

その中に、これまでにシステムを施した星のリストがあった。


『この星でループが終わらなかった時、この技術でお前らも他の星にループに参加している知的生命体を探して、システムを使え。じゃあな。』

そう言って、ヘルメットを我々に返して彼らは一瞬で消えた。


 ドキドキしながら横を見てみると、友達も全く同じ表情で俺を見ていた。

次の瞬間バッフッ!!っとそいつが粉々になった。

血も飛び散らない。原子レベルで粉々になるらしい。

まるで砂になったように、肌にあたると雪のように、湯気のように。

飛び散った友達が目に入ったが、一瞬の痛みもなかった。


俺もつい、好奇心に負けてスイッチをひねる動作を思い起こした瞬間、バッフっと爆発した。


 次に気付いたのはベッドの上だった。

久しぶりのスリルに俺の顔はたまらないほどにやけていた。



続く

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