第6話

「・・・・・・はて? このたくさんの客に見られている感じ、クセになってしまいそうでありんす」

 頬を赤らませてキニC、いや、もはやお菊でいいだろう。お菊は悦に入った。


 さて、場面は変わってここは先ほどの駅から2駅離れたこの地域最大の繁華街。

 通称『伊衛門町』、正式な地名は別にあるのだが、数十年前に地名が変わり旧地名であった『伊衛門町』が通り名になったというわけだ。この地域に来る人間の大半はこの伊衛門町に一度は立ち寄る。知る人ぞ知る【遊び場】であるのだ。

 一口に遊び場と言ってもその意味は広い。子供にはそれなりのアミューズメント施設があり、休日や週末の昼間などはバッティングセンターやボーリング場、カラオケやゲームセンターなどは子供連れのファミリーで賑わい、その脇ではBARや居酒屋、クラブがひしめき合っており若い世代から中年層まで幅広い層が夜を楽しんでいる。

 だがこのような繁華街には必ずといっていいほどつき物なのが、暗黒面。俗に言う“アングラ”、アンダーグラウンド方面の施設も多く存在している。この街での“本当の遊び方”を知っている人間は、この街の闇にどっぷり肩まで浸かっているというわけだ。そんな“アングラ”を目当てにくる人間達が遊ぶ、一大巨大施設がある。

『プレイアロー・ステーション』

 一昔前の次世代機と間違いそうなややこしい名前をしているが、この伊衛門町のど真ん中に胡坐をかいて居座るその建物は、上空から見ればスペードの形をしていて誰が見てもその姿を脳裏に焼き付けるだろう歪な形で来る者を見下ろす。

 実はこのプレイアロー・ステーションは表向きにもこの伊衛門町で一番の知名度を誇っており、アングラサイドの人間でなくともOPENとともにひっきりなしに押し寄せる。その理由は高いアミューズメント性にある。7階建のプレイアローの1階・2階はゲームスペース。大型筺体からレトロゲーム、体感型ゲームやアトラクション、景品獲得型のキャッチャーゲームもあればメダルゲームもあるという近郊ではこれほどのラインナップを揃えるのはほぼ不可能に近いほどのレパートリーが自慢だ。

 3階はボウリングスポット、4階5階はスポーツジム。ボウリングスポットは様々なイベントや、大掛かりな演出で他の同業態を2馬身ほど抜いている。スポーツジムはもちろんプールつき。深夜1時まで機能している。室内クライミングやローラースケートリンク、スケボースロートなど他にない施設が特に人気だ。6階はレストラン街。大手チェーンも多く参入しており、プレイアローへ来た約80%の客はここで食事を取る。

 そして7階は温泉施設。厳密に言えばスーパー銭湯というのだろう。屋上を利用した大露天風呂は、雑誌などのランキングでは常にトップ3に居座っている。なによりもその巨大な敷地面積は、かなり大規模な客数も収容できる。地域をあげての超巨大複合施設といったところか。スペードの茎の部分に位置する場所に展望エレベータがあり、正面からプレイアローを見たときの象徴的な光景でもある。

さあ、ではこれのどこが“アングラ”なのだろうか。いかがわしい方の風俗施設があるわけでもないこの施設。勘の鋭い御仁ならばもうお気づきだろう。このプレイアローには、1階から7階の他に隠されたフロアがある。


 ――そう、地階が3フロア存在するのだ。

  地階1階、2階が非合法カジノエリア。その規模は国内1であると言われる。少しでも裏の遊びをしっている人間ならばこのプレイアロー地下カジノを知らない者はいないと言える。知らなければむしろモグリと呼ばれても仕方がないのだ。ゲームの種類はカジノにあるそれとほぼ変わらない。バカラやブラックジャック、ルーレットにスロット、変わり種では麻雀もある。日本ならではのコンテンツとしてはパチンコやパチスロもカジノならでは高レート、低レートで用意されている。さらに3階はVIP専用のクラブがあり、1階2階のディーラーを含めた従業員の女性キャストに買えない者はおらず、権力を持ち、ここで当てた上客を接待するのに使われる。毎日のように芸能人や、不動産成功者や医者、最近ではIT関連の成功者が地下クラブに通っている。クラブに勤めるホステスのレベルは舌を巻くほど高く、接客のクオリティも異次元レベルである。是非私も体験してみたいが、現実的に不可能なようだ。残念である。

 3階のおよそ3分の1がそのクラブで占められ、奥の3分の1がショーラウンジ、残りがVIPの個室である。ショーラウンジではタレント同士の裸でのローションプロレスや、きらびやかなダンスショーなどが行われている。上品と下品が交互に入れ替わる下卑た空間だ。VIP個室は……説明不要であろう。簡潔に言うなれば【ホテル】である。ここで買ったキャストと過ごすのだ。

 パリポリと乾いた音を立てて、黄金色の細い棒が口から伸びる。

 プレイアローのスペードの茎部分で忙しそうに上下へと動く2基のエレベーター。

 小さく見えるエレベーター内の客を見上げながらパスタは昨日読んだプレイアローの資料を思い返していた。パリポリとまた音を立てて黄金色の棒の背丈が低くなっていく。一体この男はなにを食べているのだろうか? 一見すれば木の枝のようにも見えなくはないが……。ちなみにパスタの今日の格好は男の格好である。男の説明は割愛する。

「……欲の塊って訳か。ここまで巨大な欲を具現化するなんて、すげえな」

「プレイアロー・ステーション。会社名は同じくプレイアロー・コーポレーション。会社設立は2003年。プレイアロー・ステーションの完成が2006年。事業内容は企業向けのアウトソーシング。取締役は甲斐谷信二、47歳。従業員数は600名。法人株主にソニック電気、三盆銀行、TTT銀行、トイバランスなどの大手企業」

 パスタの隣でタンクトップにGパンの格好が完全に絵になっているニャンニャンが棒読みした。パスタにとってニャンニャンは“歩くデータバンク”なのだ。

「企業向けのアウトソーシング……ってよく分からない事業で、会社立ち上げからたったの3年でプレイアロー・ステーションを建てた。本来ならこんなキナ臭い工事が許されるはずない。それは暗に“なにかの力”が働いたから可能にしたってことだな。なにか巨大な力、……ふん、大方権力の類だろ。巨大な需要に対して供給が応えた形になったんだろうな。取締役の甲斐谷ってのは?」

「元・三陽党の議員。その前は銀行役員、党時代に談合疑惑が常に取り巻いていた」

「垰山との接点は」

「三陽党時代の子弟関係。一時期垰山の運転手をしていたことも。垰山が離党し、現在の山晴党を立ち上げてからは個人的な付き合いはないと公にはされている」

「充分」

 パスタは口から飛び出していた細い棒を食べ尽していた。

  ジャケットの内ポケットから【アルデンテがあるねんて!】と丸文字で書かれた袋を取り出し、そこからまた一本、例のものを取り出し口に咥えた。

 これは……乾燥パスタだ。湯掻く前の、そう、そのパスタ。なにを食べているのだこの男は。

「垰山が関与しているのを隠すための会社。取締役が元部下なら間違いないだろう。資金元は当然、垰山だろうが、他にもスポンサーがいるな。株主の連中がそうなんだろうが、他にもいる。恐らく裏の連中か。政界からの需要、極道関係から需要、……ふぅん。なるほど」

 パスタはつまらなさそうに下唇を尖らすとパリポリと乾燥パスタの背丈を縮める。

「つまり色んなところから求められたから作ったってことか。だが、思った以上においしい商売だった。しかし如何せん、非合法のカジノでの金。マージンも莫大なんだろうな。

 これをクリアするには、外来の無尽蔵な財源。そして国家公認の大義名分、あとはどうにでもなるって寸法だろ。本当はもっとこまごまと綿密な計画を立ててるんだろうが、ま、ざっくりと言えばそんなところだろうな。まどろっこしすぎて吐き気するぜ」

「腹が減ったにゃ。飯行くにゃ」

「ニャンニャンうるさい」

「にゃ」

 パスタはプレイアローには入らずに踵を返すと伊衛門町のアーケードへと歩いた。後ろから腹の減らしたニャンニャンがニャンニャンうるさかった。

 パスタの背中を追っていくと、時々立ち止まりスマートフォンを見ては右へ左と歩く。

 ニャンニャンは腹を押さえながらニャンニャンと鳴いているがパスタは無視を決め込んだ。なにかを探している様子のパスタだが、探し物がなんなのかは言わない。というよりもニャンニャンがそれに興味がないので聞いてくれないのだ。発言力のないこちらとしては彼に付いていくしかないので、ニャンニャンの流れを読まない無関心さに仏と呼ばれた私もついイライラとしてしまう。パスタはその後何度かスマートフォンでなにかを確認し、乾燥パスタも五本目に差し掛かったところで立ち止まった。

 彼が立ち止まったところは伊衛門通りから少し離れた住宅街の一角。特になんの特徴もない、普通の通りだ。ここを無理矢理活字で説明するならば、住宅の塀で覆われたT字路に情感など無視したビルが空を侵食する風景の中に、まるで樹海のように犇めき合う各家々の屋根。時折車が通るくらいで、あとは散歩や買い物帰りの主婦くらいしか人通りはない。そこに不自然を絵に描いたような格好で電柱の影でなにかを窺う白いスーツ姿の女がいた。その女はそこそこの長さの髪をお団子にして頭に乗せている。顔はそばかすが目立ち、それを隠すために厚く叩いたファンデーションが彼女の顔の色を不自然な肌色にしている。せめてもの救いは口紅が控えめな色であるところくらいであろうか。

 ともかく、口紅をいくら控えめにしたところで本人がこんなにも目立っていたのでは仕方ない。私が買い物帰りの主婦であれば間違いなく通報していただろうからだ。パスタはその女に近づくとしばらくその様子を観察していた。よほど夢中なのかその女は背後にいるパスタに気づくこともなくなにかを窺っている。

 パスタと並んでいるところを見ると、この女の身長はパスタと同じくらいであるようだ。 170~175cmといったところか。女性にしては長身の部類にあたるであろう。よく見ればその女の手元には糸にくくりつけたハムが握られている。パスタはそーっと彼女の目線の先を追ってみる。するとそこにはアメリカンショートヘアーっぽい毛色の一匹の猫がいた。

 まさか、この女はこんな陳腐な作戦であの猫を捕獲しようとしているのではあるまいか。

「完ッ全に無理だろ」

「ぴやぁあ!」

 耳元で急に離しかけられた女は妙な悲鳴を上げた。その声に驚いた猫は道の先へと走り去っていった。

「あ~!! みるく~~!」

「またそんな安い仕事してんのか」

 子供を目の前で奪い去られた母親のようにひざまづいて手を伸ばす女は半ベソで振り返る。

「ぴ! て、天河……!」

「よぉ名探偵」

 名探偵と皮肉られた女性はゆらゆらと立ち上がり泣きながらパスタに詰め寄った。

「ちょっと天河! どうするのよ! 久しぶりの依頼だったんだから!」

「なんだよ。今日が期日なのか?」

「そうよ! 今日までにみるくを連れて行かなきゃ報酬貰えないの!」

 やれやれ、といった様子でアルデンテがあるねんて! を一本取り出すと、パスタは名探偵の背後を指した。

「よかったな。じゃあ今日は任務完了だ」

「なに言ってるの!? 私は今日久しぶりに牛丼をね! 並と漬物とトン汁を付けて、あ、たまごもよ! それが……全部……」

「ほれ、よく見てみろ」

「なによ……」

 振り向いた名探偵の目に映ったのはニャンニャンとにゃんにゃん戯れるニャンニャンであった。ん、いやニャンニャンがにゃんにゃんとニャンニャン……? ともかく見てもらいたい。

「猫かわいいお」

 ニャンニャンに抱かれているのは先ほどのアメリカンショートヘアーであるみるくであった。強面のニャンニャンに抱かれているというのに、その腕に抱かれたみるくはおとなしくしている。

「じゃあ付いていくからとっとと終わらせろよ」

「え、うん」

 この女は、探偵・糸井 未久(いとい みく)。

 探偵の個人事務所を開いている。社員は彼女を含め一人。つまり一人だけだ。この伊衛門町に事務所を構えているだけあって、時折闇関係の仕事が舞い込んでくる。その時に偶然、“シアン”と出会い天河は糸井の存在を知った。彼女はシアンと天河に接点があるとは思っていないが、どうやら天河のことをヤクザ関係のなにかだと思っているようだ。だから、彼に対しては強い態度には出るが逆になにかと天河に弱みを握られているので、最後の最後で逆らえないのだ。探偵業に憧れを持って就いたこともあり、その情報収集能力に於いてはパスタも一目を置いている。だが、会話のやりとりを聞いていただいたように運営は上手くは言っておらず、いつもペットの捜索や家出少女の捜索などをしている超貧乏事務所だ。おっと、久しぶりの女性の登場に喋り過ぎたようだ。糸井の報酬受け渡しが終わり、牛丼屋に場所を移している。

「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」

「えっと、えっと、牛丼・・・・・・並と」

「はい牛丼の並ですね」

「ちょっと待って! お、大盛りにしようかな・・・・・・」

「はい牛丼の大盛りで」

「ちょっと待って! や、やっぱり色々食べたいから並に・・・・・・」

 久しぶりの食事なのか、糸井の目の色は変わり、優柔不断な注文に店員を困らせている。

「牛丼の並とサラダとおしんこと生卵を3つ」

 糸井と店員の間にパスタが割って言った。店員はほっとした様子で「かしこまりました」とだけ言うと奥のキッチンへと消えた。

「このセットが食いたかったんだろ」

 糸井は頬を赤らめてパスタを睨む。まさに図星だが『私の食べるものは私が決めるの!』とでも言いたげであった。

「おごってやるから心配すんな。思い切り食え」

「あ、あんたの施しは受けないわ! 私の食べるものは私が払うの!」

「報酬、振込みなんだろ。てことは今金持ってないってことじゃないのか」

「持ってるって! 持ってるわよ!」

 と言って糸井は財布を取り出した。中身を見ているがその顔はみるみる青ざめていく。

「お待たせしました。牛丼並とサラダにおしんこ、生卵が3つです」

 さすが【早い・安い・うまい】を売りにしている。もう料理が来た。

「あ、あのぉ・・・・・・牛丼並をひとつキャンセルで・・・・・・」

「え?」

「それをキャンセルするのか」

 パスタの冷ややかな突っ込みが光る。ニャンニャンは生卵を水の入ったグラスに入れて一気飲みしているが、それはノータッチで進めたい。

「分かった分かった。これは貸しだ。今度返せ」

「し」

「『し』?」

「仕方ないわね! じゃあ、今度あたしが何倍にもして返してあげるわ! ほほ、ほほほ!」

 そういって糸井はサラダと牛丼を交互にがっつき始めた。糸井の依頼は成功はしたが、その報酬は現金でなく振込みを提案されたのだ。今後に繋げたい糸井はそれを拒む理由はなく、晴れて報酬を受け取れるのは明日になってしまったというわけだ。普通ならそれくらいのこと、なんとも思わないのであろうがひもじい暮らしをしばらく強いられてきた彼女にとっては恐らく死活問題であったのだろう。 しかも、無駄にプライドが高いようで他人から……特にパスタに貸しを作ることに強い抵抗があるようだ。もったいぶっても仕方がないので、その理由を暴露すると彼女はパスタと一度寝たことがある。その際に撮られてはいけない写真を数枚に渡って撮られている。前述にあったパスタの握る弱みとはそのことである。もちろん、その行為に至ったのは別段強引ではない。たまたま出会ったバーで酔いつぶれた彼女を介抱しているとそういうムードになったので、というのが背景だ。

 ……と、いうパスタの作ったシナリオ通りに罠にかかったのだ。

 余談だが、パスタはマフィア時代、その中性的な美貌を活かして女性を操る為の技術を教え込まれている。その一環で“どんな女性も確実に喜ばせる”技を持っているのだ。そんなイタリア仕込みの技を施された糸井はというと……

「ほんっとにあんたって卑怯ね! でもそんな卑怯な男に貸しを作るのはあたしの流儀に反するわ! だから今度はわたしがあなたに高級なディナーをおごるわ! なにがいいの!? どうせあんたのことだから、寿司? フレンチ? 焼肉? そ、そうね……高級中華なんてどうかしら!!」

 なにが『どうかしら』なのか。つまり見ての通りである。確かに“弱み”を握られてはいるが、完全に彼女はパスタに対して恋心を抱いているのだ。

「ああ、楽しみにしておくよ」

「た、楽しみなの? 楽しみなのね!? ふ、ふふん! 覚えておくといいわ……あんたをもてなしてやるからっ!」

 まあ、俗に言う【病気】というヤツである。恋は盲目というが、パスタには抱いた女性をこんな風にしてしまう力があるのだ。実に羨ましい限りである。食事を済ませた3人は、近くの喫茶店に場所を移した。そこでパスタは3枚の写真を出し、糸井に見せた。 

 糸井は、自分のあの時の写真を出されたかと思い一瞬硬くまぶたを閉じたが、すぐにゆっくりと目を開け、違うことが分かると手元のコーヒーを一口飲んで落ち着かせた。

「これは……峠山勝彦……次の知事に一番近いと言われてるあの男ね。それとこれは、プレイアローのオーナー兼、支配人の甲斐谷信二ね。このイケメンは、ああ峠山の息子のTOHGEね」

 糸井は写真を見てそう言うと次に「これが?」とパスタに尋ねた。

「こいつらのこと教えて欲しい」

「こいつらのことって……あたしは情報屋じゃないのよ、毎回毎回。なんであんたらみたいなヤクザもんに情報を提供しなきゃなんないの」

「情報を提供しない?」

「当然でしょ」

「お前、凄かったよな。この時」

 パスタのジャケットのうちポケットからチラリと写真を覗かせる。

「峠山はこの伊衛門通りからそう離れていないところに事務所を構えてる。その写真のラインナップを見るからに、峠山と甲斐谷の関係性は知っているわね?」

 急にペラペラと喋り始めた糸井はパスタの目を見ると聞いた。パスタが無言で頷くとテーブルの上の甲斐谷の写真を指差し、「そして」と続けた。

「甲斐谷はプレイアローの支配人。一日の大半をここで過ごしているわ。ただ、ここの従業員は甲斐谷の姿をほとんど目撃したことがない。なんでかわかる?」

「牛丼には卵にゃ。生姜はむしろ邪道にゃ」

「ニャンニャンうるさい。支配人室から出てこないからか?」

「惜しい。地下から出てこないからよ」

 糸井は少しだけ笑うと、次に峠山を指差す。

「地下カジノの存在はいわずもがなだと思うけど、プレイアローの地下は何階まであるか知ってる?」

「3階じゃないのか」

「5階まであるの」

 パスタの目つきが変わった。その変化を楽しむように糸井は続ける。

「ちょっとした情報通ならプレイアローの地下施設が3階まであることは知れ渡ってるし、一度でもカジノで遊んだ連中なら大抵が3階まであると答えるでしょうね。でも、ごくごく限られたわずかな関係者には有名な話。このわずかな関係者って誰だと思う?」

「……峠山勝彦」

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