7月 祝って祝って

 盛堂青日は七月一日生まれだ。プチ嬉しい事に相棒とちょっと近い。

「おれの誕生日にケーキ食べるのはいいの?」

「ボクが主役じゃないし、ケーキは美味しいし」

 青日はショーケースに並ぶケーキを真剣に見つめる。ここは『ポーラ』、アイスクリーム専門店で、アイスが絶品なのは勿論、アイスケーキも人気だ。ポーラのアイスケーキはスポンジでアイスをサンドしてクリームが塗られたもので、ふわっとひんやり、さらにデコレーションも可愛らしく人気だ。睦千と組んで最初の誕生日、睦千が「青日は絶対ポーラ好きだよ」と買ってきて以来、足繁く通い、誕生日はホールで食べる。今日はすでに別の店でショートケーキを二人分買って、睦千が大切そうに白い箱を抱えている。

「睦千ってチョコミント平気だったよね」

「好き」

「んー、でもバニラもいいよねぇ。ポーラーベアーのバニラケーキ、定番だよ」

 青日は二つのケーキを見比べる。季節限定のチョコミントケーキはひまわりを模した飴細工が綺麗だし、定番のバニラケーキは白熊の顔のデザインで、濃厚なバニラが絶品。しかし、季節限定のチョコミントが美味しいのも去年食べて知っている。チョコミントの爽やかさとどこか懐かしいまろやかさの後味に感激したのだ。むむ、と青日は悩む。

「もう、両方買ったら?」

「分かってないなぁ、悩んで決めるのが誕生日の醍醐味だよ」

「ボクが決めてあげようか?」

「二つとか言うんでしょ」

「よくわかったね?」

「睦千はそーゆー奴」

「へへ」

「褒めてねー」

 照れたような仕草で笑う睦千に青日はゲラっと笑う。

「よし、チョコミントにしよ」

「いいんじゃない?」

 すいません、と睦千は店員さんに声を掛けて、お会計まで済ませて、睦千の両手にケーキの箱がぶら下がる。

「てか、本当にケーキ二つでいいの?」

 店を出た睦千が尋ねる。

「いいの。心ゆくまでケーキが食べれるのは若いうちって言うじゃん」

「ボクはいつまでも頑丈な胃を持ち続けるし。青日も頑張ろう。しわしわになっても焼肉食べ放題とケーキ食べ放題を元気にはしごしようね」

「おれは無理だよーなんか無理そう」

 えー、がんばってよー、と睦千はゆるゆると青日に詰め寄る。健啖家の食い道楽と同じにしないでほしい。でも、大人になっても、いくつ歳を取っても、根っこの部分は変わらないもので、というか、変わらずいたいもので。

「でも、誕生日ケーキは毎年二つ食べたいよねー」

 一年の中の特別なケーキ、睦千は嫌いらしいけど、それで人生におけるケーキ総量が減るのはナンセンスだ。だから、青日が二つ食べれば、睦千だって二つ食べる。そう言う事だ。

「ね、睦千もお祝いしてよね!」

「朝から祝っているよ」

「もっと祝って!」

「仰せのままに、ハニー」

 睦千はんん、と咳払いをして、顔を少しキリッとさせて、青日に笑いかけた。

「誕生日おめでとう、青日。生まれてきてくれて、本当に嬉しい」

 青日は本日何回目かの爆笑をした。

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