第13話 閑話 ホワイトアスパラ・カン・ゴールデンアイ22世の解決への100歩
イッスンサキの様子がおかしい。我の尻尾に絡まり、正直言って邪魔くさい。
「おい、何があった」
ロリュウも「おこめもお外に出ないでねー、ごめんねー」などと言って我を家から出さない。窓もドアも閉め切られ、そろそろ同胞や一族が心配になる。
「お前さんは分からんのか」
しおしおとした声でイッスンサキが答える。
「何かあるのか?」
「消えそうなんだ、俺」
「消える? お前が?」
「外に怪がいる」
「それがどうした」
怪なんてどこにでもいる。なんだったら取り憑かれているが?
「一つの怪が八龍全部を覆っている」
「欲張りだな」
「そいつがいるせいで、俺みたいな弱っちい怪は消えそうなんだ」
「なんだと?」
ふにゃっ、と飛び上がると、ロリュウがこちらを見る。
「どしたの、おこめ。変な夢でも見たの?」
もしゃもしゃとロリュウは我を撫で始める。それに構わず、尻尾に絡まるイッスンサキに尋ねる。
「お前は、いなくなるのか?」
「このままだとな」
「……それは、困る」
「困る? お前は縄張りに戻ってきたんだ、俺はもう必要ないだろう」
「そうじゃない、寂しいだろう。お前はもはや、同志だ」
イッスンサキは、ぎょろりと目玉を出し我を見た。お前、目があったのか。
「俺は猫じゃないぞ」
「知っている。だが、お前は我の臣下だ。お前がいなくてはここまで来れなかった。これからも力を貸してほしい」
「お前ってやつは、そんな猫だったのか?」
「兄弟を、家族を捨てた猫が、共に戦ってきた進化を家族同然だと思うのは、許されない事だろうが」
「いやいや、そんなわけはない。お前は伝統を継ぐ立派な猫さ」
「そう思うなら、お前は消えないでくれ」
にゃあ、と鳴くと勘違いしたロリュウがおーよしよしと撫でる。ちょっとうざい、離してほしいが、ロリュウも大切な臣下だ。ちょっとは褒美をくれてやる……あ、そこ、そこもっと撫でて。
「ああ、消えないさ」
するり、とイッスンサキが我の身体に擦り寄る。
「ならば、お前の力を貸してもらおうか」
ロリュウの腕を蹴って、床に降りる。
「ちょっと先の未来を見せてくれ」
「そうきたか」
イッスンサキは久々にカラカラと笑った。それから我はちょっと先、100歩先、200歩先、1000歩先、100歩を重ね続け未来を見続けた。
「一族を集めよ! 怪を追うのだ!」
6月6日の昼過ぎ、ようやく変化が現れた未来のため、我はにゃあ! と声を上げた。
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