第183話 アドラの森 3 原初の妖精族 「フィア・ティターニア・アドラ」 1
ふざけまくる父さんに制裁を下した後ツリーハウスを出る。
目の前には多くのツリーハウスが立ち並び、多くのエルフが行きかっていた。
いるのはエルフ族だけではない。
様々な種族の人達がそれぞれのツリーハウスの中に入る様子が見えた。
彼らの目的は観光だろう。
大森林「アドラの森」はこの大陸に名を馳せる観光都市国家で、大陸各地から入って来た文化を取り入れて発展している。
古めかしいツリーハウスから先端を行くような色とりどりのツリーハウスがあることからもよくわかる。
町を歩くアドラの森のエルフの服装も統一されておらず個性豊か。
――気に入ったものを思うがままに。
ある意味精霊の影響をそのまま受けたエルフ族、といった所だね。
これはエルフ族にとって普通ではない。
外に出てこの森の異常さが良くわかった。外に出てカルチャーショックというものを受けたのを覚えている。
広さもそうだが、他の森のエルフは森の外の文化を取り入れようとあまりしない。
閉鎖的と感じるが、逆である。
アドラの森が開放的過ぎるのである。
故にアドラの森を知るエルフからは「異端」と呼ばれているのだ。
悪い事ではないんだけどね。
「原初の所に行くのか? 」
「それも良いけど少し見て周るよ」
ソウを連れて町を歩く。
一歩歩けば何十人の人とすれ違うが、ソウを見て、二度見された。
ソウは目立つんだよなぁ。
「お? 帰って来たのか」
歩いていると顔見知りに会う。
手を振りやって来る彼に手を振り返して軽く挨拶。
「お帰り。あと何十年いるの? 」
「すぐに帰るよ」
「えぇぇ。そうなのか。それは残念」
「残念そうに聞こえないが」
「本当に残念と思っているよ。帰る毎に進化しているエルゼリアの手料理が食べる事が出来ないなんて不幸そのもの。百年ずっと待っている奴もいるんだぜ」
「それはありがたい事だが、ならば私のレストランに足を運んでくれ」
「お? 今はレストランをしているのか?! 」
「おう。今は弟子もいる」
言うとかなり驚かれた。
目が飛び出る程驚かなくても。
そんなに私に弟子がいることが不自然か?
「……そうか。エルゼリアも立派な料理人になったんだな。俺は成長が嬉しいぞ」
「大袈裟な」
「そうでもないさ。聞くと皆驚くだろうよ。な? 」
「「「そうだな!!! 」」」
上から下から声が聞こえてくる。
上からは友達が「シュタッ」と
「……いつも思うがもっとましな登場の仕方はないのか? 」
「あるぞ? 」
「ならなんでしない……」
「面白くないからだ!!! 」
ハハハ、と皆笑っているが周りの注目を一斉に浴びている。
ここに住んでいた時は気にならなかったがこれが普通でない事くらいわかるもの。
しかし彼らも悪気があってやっているわけでは無い。
場を盛り上げるためにやっているのだからきつく言えない。
ま、良い方向に捉えると、これもアドラの森に来た時の名物の様にはなっている。
歓迎を受ける側は相当な恥ずかしさを覚悟しないといけないが、アドラの森の為になっている。
実際私も外に出るまではやってたし……、人の事を言えないんだよなぁ。
「どうしたリーダー。暗い顔して」
「その
「良いじゃないかリーダー。いつも俺達と一緒に歓迎会をしていたんだからリーダー」
世に言う黒歴史とはこういったことを言うのだろうね。
顔に熱がこもるのを感じるよ。
「調子が悪いのかリーダー」
「それよりも久しぶりに帰って来たんだ。皆で町を周らないか? 」
早めに話を切り上げて、精神ダメージを軽減させた。
★
「お。リーダーじゃないか。帰って来ていたのか」
「……皆がいじめる」
今は靴を売っているという友達の所へ行くと、またもやリーダー呼び。
なんだ? 百年前はこんな呼び方じゃなかったのになんで呼び方が変わったんだ?
一時的な流行か?
ノリのいいアドラの森のエルフだ。
森の外の影響を受けたと考えるとあり得る話だ。
「まぁ良いが……賑わってるな」
多くの観光客が店の中で品物を見ている。
百年前はこんなにも繁盛している風ではなかったが。
「そりゃぁ、百年もあれば俺だって成長するからな」
「何言ってるんだ。「エルゼリアに負けてられねぇ」とか言ってやるき出したやつが」
「ちょ、おまっ! 」
「そうだぜリーダー。こいつ帰ってくるたびに成長するリーダーを見てやるき出したんだぜ」
「もういいお前達黙ってろ」
「「「へいへい」」」
友人の店主の言葉に周りが雑に答える。
溜息をついたかと思うとお客さんに呼ばれて向かった。
どうやら彼は私が出て行ったあと頑張ったようだ。
やる気に火をつけることができたのならば嬉しいな。
「で。リーダーはこれからどこか行くのか? 」
「見て周って……、あぁ原初様の所に行かないといけないな」
言った瞬間皆遠ざかる。
「それは早く行った方が良い」
「俺もそう思うな」
「……流石にお前ら失礼だろ? 」
気持ちは分からなくないが口に出したらいけないだろ。
多分だけど私が帰って来た時点で彼女の感知に引っかかっているはずだ。
今か今かとそわそわしているかもしれない。
そう思うと早く行かないといけないなと思うんだけど、一度行くといつ解放されるかわからない。
だから見て周りたかったのだけど――。
「?! 」
「魔法陣! 」
「あ~行ってらっしゃい」
手を振る友人に手を振り返して私の視界が急に変わった。
★
宙に浮き、着地する。
今までとは違う「森」の匂いを感じながらも辺りを見渡す。
私の周りは木に囲まれている。
けれど薄暗いことなく、神聖味を帯びたライトグリーンで照らされている。
原初様の魔法だな。
「さて。今私はどこにいるのかな」
「探す必要はないのである」
ソウが言うと同時期に私の足元に虹色の道が出来上がる。
――
道の上を
「お帰りエルゼリア」
「お帰りエルゼリア」
「あぁただいま」
「アドラが待ってる」
「アドラが待ってる」
「今向かってるだろ? 今すぐ行くと伝えてくれ」
クスクスと笑い声が聞こえたと思うと精霊達は散っていく。
散ったかと思うと再度やって来る。
これを繰り返してようやくたどり着いた。
「ただいま戻りました。原初様」
「お帰りなさい。
私よりも耳の長いエルフ族——原初様が迎えてくれた。
———
後書き
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