第174話 レアの町で依頼しよう!

 スターチスとの話し合いの結果剣、槍、盾の三種をレアの町の工房に発注することとなった。

 武器はそれぞれ刻印魔法を刻んでいないものだ。

 地上では単なる鉄剣でも鍛冶のできない海底国家では貴重なものになりえる。

 それを踏まえた上で良い品を作る工房を選ばないといけないのだが。


「エルゼリアさん。何で私達はレアの町で工房の案内をしているのでしょう? 」

「それはね。リアの町で偶々たまたま私の前を歩いていた冒険者だからだよ」

「エルゼリアさん。何で私達は……何で私達は公爵閣下にレアの町を案内しているのでしょうかっ! 」

「ちょ、揺らすな! 肩を揺らすんじゃない! 」

「だってぇぇぇぇ~~~」


 テレサが泣き崩れてしまった。

 最初は小さな声でのやり取りのはずが、いつの間にかこれだ。

 スターチスを見ると少し困惑しているな。

 まぁテレサの気持ちもわからなくもない。


「立ち上がってくれテレサ。そして泣き止んでくれ」


 テレサをなだめながらも思い返す。


 レアの町の工房に発注することが決定した後、私達はスターチスの護衛を連れて情報の集まる冒険者ギルドへ向かった。

 リアの町から一番近くて尚且つ鍛冶も盛んな町と言えばレアの町だ。

 私が一人聞いてくるという手もあったのだけれど、今回ばかりは自分の目で見たいとの事。

 それに最悪公爵自身が工房主に事情を説明しなければならい可能性もある。

 指摘された時拒否をする理由も無かったのでそのまま館を出た。


 冒険者ギルドに向かう途中、私達の前にテレサやガリック達五人が現れた。

 最初は手を振り「お久しぶりです」とやって来たが隣にいる人達を見た瞬間足を止めた。

 逃げようとしたが、逃がすわけがない。

 常に武器に命を預けている冒険者。彼女達が腕の良い工房を知らない訳はない。

 それに昔いい武器屋を知っていると言っていた。

 そのことを思い出して、こうして私と公爵一行にレアの町を案内することになったのだ。


「ガラック。あとどのくらいだ? 」

「そろそろだ」


 剣士ガラック先導の元、レアの町を行く。

 そして一件の工房に辿り着いた。


 ★


「あん? 色んな武器が欲しいだと? 」

「あぁ。悪いが今から作ることは出来ないか? 」

「エルフ……。このひょろいのが使うのか? ああ”? 」

「ちょ、ちょっとドルゴルさん。不味いですって」

「テレサ何が不味い。不相応ふそうおうな武器を持っても死に急ぐだけだって言ってんだ。どう見ても魔法使いだろ? 」

「あれでも怪力持ちなんですから! ひねり潰されますよ! 」


 テレサの言葉に眉をしかめるドワーフ族のドルゴル。

 ……誰が怪力だ全く。


 ガラック先導の元やってきたのは 「武器武具店ドルゴル」。

 私達の注文通りガラックは色んな武器を扱っている店に連れてきてくれた。


 色んな武器を作る職人は多くない。

 皆何か一つに集中する方がより良い物が出来るからだ。

 一種類でも良い武器を作れる専門店になるとそれを求めて客が来る。

 客が来るとめんどくさい注文をしてくる人が現れてそれを解消するためにさらに技術が磨かれるというわけだ。


 それは間違っていない。

 ガラックに聞いて、もし複数の武器を扱う店がなかったら幾つか工房巡りをしないといけないと考えていたくらいに、職人として当たり前のことだから。


「……ここは穴場」

「口がわりぃがな」

「誰が口が悪いだ? ああ”」

「……聞こえてたのかよ」


 ガラックが肩を落としているとドルゴルが私の方を見る。


「で。お前さんが使うのか? 」

「いや私じゃない。ドルゴルが言った通り私は魔法使いなのでね」

「ならそっちの護衛みてぇなやつが使うのか? 」

「それは私からご説明しましょう」


 スターチスが一歩前に出て軽く咳払いをする。

 彼が自己紹介をするとドルゴルの額に汗が流れるのが見えた。

 やっぱり公爵相手になるとどんな堅物の職人でもこうなるんだな。

 けれどもドルゴルも強気の姿勢を崩さない。

 今までの口調で自己紹介をして今日の目的を聞く。


「実はドルゴル殿。貴方に頼みたいことがあるのです」


 いぶかしめにドルゴルがスターチスを見る。

 流石にテレサ達がいる所で話すわけにはいかないと思ったのかここでは話せない事を告げて、別室に行った。

 

 護衛を置いて。


「いやぁきもっ玉座ってるね。自分は鍛冶の事を知らないと言いつつ職人との話し方をよくわかっているじゃないか」

「あの人は特殊ですよ。エルゼリア殿」

「それにあのくらいの度胸どきょうが無ければ他の高位貴族とやり合えませんので」


 二人が別室に行っている間、私は護衛騎士達と話をする。

 いや護衛無しで職人と話す貴族はそう多くないぞ?

 普通は護衛をつける。

 彼自身武芸に自信があるのか、それとも虚勢きょせいを張っているのか。

 どちらにしても一般の貴族から遠く離れた存在であることは間違いない。


「ま。安心しても大丈夫だと思うぜ」

「ドルゴルさん、口は悪いですが暴力は振るわないので。口は悪いですが」

「おい誰が口悪いって? 」

「「「げっ。ドルゴルさん」」」


 ったく、と苦笑いを浮かべながらひょんとジャンプして椅子に座る。


「契約は成立だよ」


 遅れてスターチスが歩いてきて笑顔で結果を伝える。

 具体的な契約内容は打ち合わせた通りだろう。

 スターチスの様子をみるとどうやら話し合いは順当に行われたようだ。


「ん? ガラック。てめぇまた武器をざつに使ったな? 」

「雑になんか使ってねぇ……。相手が強すぎるんだよ」

「……腰に差しているだけなのに見分けるとは」


 言われたガラックが苦い顔をしながら剣を抜く。

 ガラックに剣を渡すと大きなため息が聞こえてきた。


「どんな魔物と戦えばこんなにボロボロになるんだ」

「いっつも言ってるだろ? 魔境の魔物だ」

「……にわかに信じがたいな。この近くにそんなものがあるとはな。まぁ良い。武器は預かった」

「はぁ?! 」

「整備してやるからいつもの代えの剣で持たせろ。そして出来る限り依頼を受けるな」


 抵抗しても無駄とわかっているのかガラックは肩を落としてとぼとぼとこちらに向かってくる。

 ん~、もしかしてドルゴルが見たのは剣じゃなくてガラックの体調だろうか?

 疲れている様子のガラックを休ませようとわざと武器を預かっている感じがする。

 まぁ憶測だけど……、何にしろこのドルゴルというドワーフがテレサ達を心配しているのはよくわかる一面だった。


 私達は強制的に休養を強いられたガラック達と共に、レアの町へ帰り、準備に取り掛かることに。

 長期間レストランを開けることを従業員に伝えているとオリヴィア騎士団が戻って来る。


 そして注文の品が届いた。


———

 後書き


 こここまで読んでいただきありがとうございます!!!


 続きが気になる方は是非とも「フォロー」を

 面白く感じていただければエピソード下もしくは目次下部にある「★評価」を


 ぽちっとよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る