第117話 兎幻獣人国へ 1 移動
「それで結局ラビは国に帰るのか? 」
このままだと
私の言葉にフーナが便乗するがラビは乗り気じゃないようだ。
子供達は帰ってほしくないのか落ち込んだ様子でラビを見ている。
なんだかんだで子供達にも好かれているんだな。ラビは。
好ましく思うも、彼女の選択を妨げてはいけないと思う訳で。
そもそも彼女がここで働くのは、どうすればよかったのかと自問して気持ちの整理がつくまでだった。
今ラビが答えを持ち合わせているのかは私にはわからない。
けど彼女の選択を尊重しようと思う。
そう思いながらもどこか寂しさを感じているのは、私も彼女の賑やかさに影響されたからだろうね。
「そうだ! エルゼリアさん達も兎幻獣人国に来てください! 」
良い事を思い着いたかのように身を乗り出してラビが言う。
……なんでそんな答えに行きついた?
いや兎幻獣人国というのがどんな国かは気になるが。
「それはダメです! 外の者を兎幻獣人国に引き入れるなど!!! 」
「例がないわけじゃないよね? 一時的な宿泊なら大丈夫でしょう? 」
「た、確かにそうですが」
否定したい、けれど出来ない苦渋に満ちた顔をしてフーナはラビを見る。
するとどこか知的な雰囲気を出しながらラビはフーナに語り掛けた。
「フーナ。僕は考えたのです」
「なにを、でしょうか」
「僕はフーナの説得で一度兎幻獣人国に帰ることにしたよ。けど外で生きていけたのはエルゼリアさん達のおかげ。ならばお世話になったエルゼリアさん達をもてなさない訳には行けないのじゃないのかな? 王族として」
「うぐ……。しかし案内兎がいない現状それは不可能かと」
「案内兎なら僕がやるよ。王族なら
「なりません! 確かに幻兎の導きで国への道を開けることは出来ます! しかし案内兎のような危険な役目を殿下に行わせるなど――」
「ならフーナがやってくれるということ? やったー! 」
フーナはラビに弱いのか、ラビが強気で言うにつれて言葉が弱くなる。
熱くなったラビが私達をおいてどんどんと話を進めていくが、彼女は何を思いついたのだろうか。
ラビの言葉から私達を兎幻獣人国に住まわせる気はないみたいだしお礼をしたいとのこと。
しかし帰るのを渋っていたラビがいきなり帰るというのも不思議な話だ。
もしかしたら私達に兎幻獣人国にきてやってほしい事があるのかもしれないね。
そんなことを思いつつ様子を見ていると最終的にフーナが折れて私達は兎幻獣人国に行くこととなった。
兎幻獣人国。
初めて聞く国だけどどんな所だろうか。
ちょっと楽しみだ。
★
すぐ兎幻獣人国に行くことはできない。
確かに興味そそられる場所だが仕事は仕事。
レストランを放置することはできないのだ。
ということで休日にメンバーを集めて畑の前に集合した。
兎幻獣人国に向かうメンバーはラビやフーナに加えて、私に子供達、そしてソウの七人。
私はソウの異空間収納に、子供達やラビは一泊分の荷物を背にしている。
一泊二日の豪華なお泊り会と言うわけだ。
子供達は見分を広めるという意味合いで連れて行くことにした。
もちろん両親の許可はとっている。
彼らも興味津々だったので良い機会だとおもうし、これを機に色んなことに興味を持ってほしいと思う。
因みにヴォルトやエルムンガルド、ライナーはお留守番だ。
ヴォルトはレストラン周辺に魔法を張るために、エルムンガルドは興味がないから、そしてライナーは、ライナーが行くと確実にパニックになるのが目に見えているからだ。
さて、と私達が準備を終えるとラビが一歩前に出る。
フーナが親の仇をみるような目線で私達を見ているが気にしたらダメだ。
「では参ります」
「ここからどうやって行くんだ? 」
「それをこらから説明します」
とラビが言い片手を何もない所に突き出した。
すると音も無く空間に亀裂が入り虹色の世界が覗いている。
「すげーーー! 」
「あれはなんでしょう? 」
「……すごい」
「僕達の国、兎幻獣人国はこの世界から隔離された場所に存在します。本来ならば行くことはできないのですが、
ラビの話を聞く限りだと、つまり幻兎の導きという異能は扉役、そして案内兎というのは鍵のようなものらしい。
本来はこの一組で兎幻獣人国とその外の世界を行き来するみたい。
だけど王族であるラビや十二幻闘師と呼ばれる強者は一人で二つを兼ねることができるとのこと。
なにやら危険を伴うからだとかで今回その案内兎をフーナが行ってくれるみたい。
「……不本意だがな」
目をそらされながら言われた。
本当に嫌われたものだ。
彼女達の事を考えると外の人間を嫌うのも理解は出来る。
けれど、なんというか嫌わられるというのはつらいものだな。
「では行きましょう! 」
ラビが腕を上げて元気よく前に進む。
だが——。
「ふぎゃっ! 」
不思議空間に入る前に盛大にこけた。
★
私達の前を大きな耳をピンと立てて丸く小さな尻尾をゆらゆらさせてラビが歩いている。
更に案内兎役をしているフーナが先導していた。
「ふむこの空間。異空間収納とはまた違う空間なのである」
「そうなのか? 」
「うむ。初めて見る空間なのである」
肩に乗るソウが周りを見渡しながらそう言った。
ソウを軽く撫でながらつられるように周りをみると虹色の世界が周りに広がっている。
けど虹色の壁が固まっているような感じではない。川のように流れている。そんな感じ。
試しに片手を空間に突き出すも何も感じない。
つまり単なる「空間」なのだろう。
「この空間は案内兎が通った所が「足場」になります。なのでくれぐれもフーナの後ろを外れないようにしてくださいね」
「もし踏み外したらどうなるんだ? 」
「知らない空間に出る、らしいですよ。ある時代では罪を犯した者を案内兎をつけずにこの空間に放り込み追放したらしいです」
なんて恐ろしい空間なんだ。
しかしこれで子供達が委縮して間違いで踏み外したらいけない。
踏み外してもソウなら咥えて元に戻ってこれるだろうからソウに子供達を頼んで後ろを向く。
「ラビが怖い事言うが気にするなよ」
「そ、そんなことを言ってもさぁ」
「流石にこれは恐ろしいですね」
「足が震える」
「私はラビが踏み外さないか怖いがな」
「ちょ、僕ですか?! 」
ラビが振り向き抗議してきた。
その様子を見て子供達が大笑いする。
おかげで場が和み子供達の表情が柔らかくなった。
よし。先を急ごう。
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
続きが気になる方は是非とも「フォロー」を
面白く感じていただければエピソード下もしくは目次下部にある「★評価」を
ぽちっとよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます