第101話 第1回エレメンタル・フェスティバル・リア 3 閉幕

 その後ソウと一緒にあちこちと店を回った。

 流石に二巡目に入ると食事エリアが出しているものは種類が限定されてきたのだがそれでもソウの食べ歩きは終わらない。

 食べることに関しては超一流なソウ。

 あちこちおいしいものを見つけては食べる。そして新しい標的を見つける、これを繰り返している間に知り合いの店を全部見て周る事が出来た。


 ――満足だ。


「何なのだ? その面妖めんような面は」

「え~っとどこって言ってたかな。ロイモンド子爵領にある村で祭りをする時に売っているお面らしいぞ? 」

「それは良いのだが我は少し恥ずかしいのである」

「似たような人は多いじゃないか。気にすることは無い」


 一周しかけたころ、私はお面を一つ買い、顔の横につけていた。

 それを見てソウから苦情が来たが気にする程のことでもないだろう。


「まぁいい。エルゼリア。まだ時間はあるな? 」

「あるが……どうした? 」

「少し空の旅へと行こうじゃないか」

「え? 」


 不穏な言葉が聞こえたと思うと、地面が消えた。


「わぁぁぁぁぁ! いきなりなんてことするんだ! 」

「ほら」


 いきなり転移魔法を使いやがって!


 怒りながらも巨大化したソウの上に乗る。

 息を整えながらもすぐに結界を張る。

 体の調子をコントロールしながらドスっとソウの背中を殴った。


「な、何をする?! 」

「それはこっちのセリフだ! 全く心臓に悪い」

「ドッキリは突然やってくるのである」

「突然すぎるわ! 」


 再度ソウの背中を殴るが手が痛いのでこれ以上はやめておく。

 ソウの突拍子もない行動は今に始まったことじゃないが、今回は特に質が悪い。


「でここはどこだ? 」

「リアの町の上空だ」


 大きな背中を移動して翼の横から下を見ると私達を形どった石像が見える。

 確かにリアの町の上空のようだ。

 しかしソウはいきなり何でこんなことを?


「見るが良いエルゼリア。これはお前が作った光景なのである」


 ソウが高度を落としながら町を見せる。


 ――賑やかだ。


 ある店には行列ができ、様々な種族が一緒に飲み食いをしている。

 活気にあふれて幸せそう。

 私がリアの町に来た時には考えられないような光景だな。


 けれど私が作ったとは大げさだと思う訳で。

 元よりこういう下地があっただけ。

 私は単なるきっかけに過ぎない。


「謙遜するな。誇るが良い」


 ――謙遜は逆に侮蔑となる、か。


 そう思うと下に広がる光景は誇らしい光景だ。

 食だけではない。

 この町を作っている人そのものが誇らしい。


 これまで様々な国を渡り歩いて来た。

 しかしここまで手を取り合っている町はあっただろうか?

 幾つか思い浮かぶが、それでもこれほど寛容なところはなかったと記憶している。


「彼らは奇しくも食料不足に悩まされながらも、食を通じて繋がった。この光景はまごうことなきエルゼリアの功績」

「……照れるね」

「事実なのである。エルゼリアが訪れなければ畑は出来なかった。ヴォルトは町に下りず、エルムンガルドはやってこなかった。ライナーはそのまま倒れて種族王の一角が落ちていただろうな」

「ソウにしては随分と褒めるじゃないか」


 ソウは「フン」と鼻を鳴らして町の上空を更に一周する。


「つまりドラゴンステーキを欲した我の功績でもあるということだな」

「……良い話をいきなり私物化するなっ! 」


 ソウの背中を殴りつけるとゴッ! と音が鳴る。


「~~~っ!!! 」

「我を殴るからなのである。エルゼリアは学ばないのである。……はぁ」

「ソウに呆れられるなんて屈辱だ」

「エルゼリアは我がいないとダメダメなのである」

「それはこっちのセリフだ。私の料理がないと生きていけないくせに」

「そ、そのようなことはない! きちんと生きていけるのである! 」


 本当かぁ? とソウにジト目を送る。

 気まずいのか頭を後ろに向けない。


「あ、ソウさんだ! 」

「おお。あれがソウの旦那の本当の姿! 」

「なんと神々しい! 」

「背中に乗ているのは……エルゼリアさんか?! 」

「僕も乗ってみたい~」


 ソウが高度を落とし過ぎたようだ。

 飛んでいるのがバレて町の皆が私達を見上げている。

 あとでリア町長に怒られそうだが……怒られるのはソウだけにして欲しい。


「全く……。これからもよろしく頼むよ。相棒」

「分かっているのである」


 第一回エレメンタル・フェスティバル・リアは大好評で幕を閉じた。


 ソウが町上空を旋回したことはサプライズ演出ということにしてもらった。

 あとでこってりと怒られたが、しかたない。

 一歩間違えるとパニックものだからな。

 しかしまぁいつも賑やかなリアの町としては良いのではないだろうか。


 振り返りつつも笑みを浮かべて白い帽子を被る。


 さぁ今日もレストラン「竜の巫女」開店だ!


———

 後書き


 こここまで読んでいただきありがとうございます!!!

 第一部第四章はこれにて終了となります。

 次話より第二部へ突入しますのでよろしくお願いいたします!


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