第99話 第1回エレメンタル・フェスティバル・リア 1 開幕
リアの町の広場に多くの人が集まっている。
設置されたこの町の
説明をしながら全体を見るとこの町の人ではない人も発見。
結局の所、他の町の人達も今回の祭りに参加できたようだ。
嬉しく思う反面頑張らないととも思う訳で。
説明を一通り終えると何か期待に満ちた視線を送ってきているな。
このまま終わりにしてもいいんだが、味気ない。それにこの視線に答える必要はあるだろう。町長が。
だからリア町長に話のバトンを渡す。
「じゃ、リア町長。開始の合図を頼む」
「え?! ここはエルゼリアさんではないのですか?! 」
「何を言ってる。ここは「リアの町」だろ? 」
笑顔で言う。リア町長が軽く私を睨んだとおもうとすぐに笑顔を作り参加者の方を見た。
素直でよろしい。
ニコニコと彼女を見ると「すー」っと息を大きく吸い込んでキリッと前を見る。
お、やる気だな。
「これより第一回エレメンタル・フェスティバル・リアを――開催します!!! 」
「「「おおお!!! 」」」
★
「なぁなぁエルゼリアさん。何作ってんだ? 」
「祭りのために作った新料理だ」
「新料理! やっぱすげーな」
手を動かしながらチラリと横を見ると、いつもの従業員服を着たアデルが横で興味深そうに見ている。
アデルの新料理という言葉が外まで聞こえたのか「おおおーーー」という声が聞こえてきた。
悪いがもう少し待ってくれ。
運営もやっていたが私は基本出店側。
他の店はもう準備万端だというのに私は今作っている。
少しばかし運営の方に気をとられてしまったようだ。
色んな匂いが漂ってくる中、初めて出した出店の前には多くの客が並んでいる。
店の準備に入る前確認したが他の店にも多くのお客さんが並んでいた。
私の店に集中しすぎて祭りとしては失敗、というオチにならずすんで本当によかったと思う。
ジュワァァァァァァァ!!!
「肉の焼ける良い匂いがする! 」
「それだけじゃねぇ! 違う匂いも混じってるぞ! 」
「早く食いてぇ」
嬉しい言葉を聞きながら円盤状にしたミンチ肉を難読ひっくり返して蓋を閉じた。
同時に「あぁぁぁぁ」と聞こえたが、必要な工程なので勘弁してほしい。
しかし……緊張するな。
今まで多くの人の前で料理をする機会はあった。
けれどこれはこれで違う緊張感があるわけで。お客さんが見ている中で作るというのは中々に緊張するものだな。
「よし。出来た。これが新料理ハンバーグ『
蓋を開けて一つ皿に置く。
匂いを嗅ぎつけたのか飛んできたソウにソースを出してもらい軽く塗る。
するとアツアツの
待ちきれない人達が騒ぐ中、ソウに試食を頼む。
「……文句のつけようがない」
「よし。どんどん作るぞ! 開始時間は? 」
「今始まりました! 」
「出していく! 作った所から出してくれ! 」
「「「はい!!! 」」」
従業員に指示を出し私はキッチンへ向かった。
★
「今まで以上に肉がやわらけぇ! 」
「なのに肉汁が弾ける! なんだこれ! 」
「それだけじゃねぇぞ! 中に何か入ってやがる」
「これは……オンジの皮?! 」
「こっちは人参だ」
「オンジの皮の酸っぱさが更に肉を引きたてやがるっ! なんて粋なことをしてくれるんだっ! 」
エルゼリアが次々にハンバーグ
確かにハンバーグはフォークとナイフを使って食べるものである。
しかし貴族でもない彼らがそれに従う必要はない。
従業員達からこれらを使っても、いつものように豪快に食べてもどちらでも構わないと説明はあった。
けれど切った時に内側から飛び出す香りを楽しむため、彼らは少しの苦労をしているという訳である。
「これがハンバーグ、というやつか」
「ハンバーグというのが新料理なのか? 」
「いや
「お? アデルか」
「あのガキんちょが随分と可愛らしくなったなぁ」
「う、うるせぇ! それよりもおっちゃん達は説明いらねぇのか? 」
「いるいる。だから違う所に行こうとするな」
「なら最初から茶化すなよ」
もう、と言いながらアデルは覚えた説明を彼らにする。
すると食べていた人達は瞳を大きく開けて輝かせた。
「だからオンジの皮や人参が入っていたのか」
「全体のテーマでエルゼリアさんのテーマでもある「調和」に合わせて色んなものを組み合わせたってことか」
「それだけじゃねぇぜ。出来るだけ料理から出るゴミを減らすために工夫したとさ。まぁエルゼリアさんはあまりゴミを出さねぇけど」
「味を調節するのにかなり苦労されたみたいですよ」
「まぁ苦労はいつもしていると思うけど」
アデルが説明している間にウルルとナトートがお盆を持って、お客さんに近付き皿を一つ出す。
「こちらはそのオンジの実になります」
「料理に入れたフルーツの残り部分をそのまま、もしくは加工し合わせて出しておりますので食べていただければと」
置かれた橙色の果実と手に取る。
彼らは口に入れて頬を緩ませる。
「オンジは果実が弾ける感じが堪らねぇな」
「フルーツとは思えねぇ」
「世界には他にもこんなものがあるのかね? 」
「知るかそんなこと」
「お前に聞いたんじゃねぇよ。つか町から出たことのねぇお前に聞いてどうする」
「はは。確かに」
少し喧嘩腰の二人に三人は苦笑する。
二人は更に二つオンジの実を口にすると、店の方から歓声が聞こえた。
「何だあれ?! 」
「一気に火が上がったぞ! 」
「大丈夫なのか?! 」
「けど何だこの匂い! 」
「ワインか! 」
二人は声の方角を見るとエルゼリアが皿にハンバーグ
見慣れないパフォーマンスを見たせいか、店の近くにいた人達が興奮している。
だが聞こえていないのか黙々と料理に取り掛かっていた。
二人はあまり見ない料理を作る彼女の様子に新鮮味を感じつつ、鬼気迫る様子で料理を作っているエルゼリアに流石と思う。
二人は料理を食べ終わると会計を済ませて席を立つ。
ウルル達が彼らを見送ると、すぐにその席は埋まり、新しい注文を取った。
最初緊張していたエルゼリアだがもうその様子はない。
今の彼女は最高の料理を作る「料理人」。
リアの町の住民として、今はその腕を振るっている。
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
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