第90話 第1回エレメンタル・フェスティバル・リア 準備 2
本格的に実行委員会の立ち上げを行う必要があると判断した私は町長に連絡。
すると町長は快諾してくれてそれぞれの代表を呼んでくれた。
全員呼びたい所であったが仕方ない。
集める場所に入りきらないだろうし意見がごちゃ混ぜになって収集つかなくなるのが目に見えている。
ともあれ集会の日になった。
集合場所は町の集会場。
私は初めて行くがどのような所だろうか。
「おやつは金貨一枚までなのである! 」
「どれだけリッチなんだよ」
集会場に向かいながらソウにツッコむ。
新しい事に心躍らせるソウがバサバサと翼をはためかせているようだ。
まぁこれに関してはソウも他人事ではない。
今回は小規模開催となるが、成功を積み上げていくと将来的にはソウが望むように周りから美食が舞い込んでくるかもしれないからな。
「ってなに勝手に異空間収納からリプルを取り出してるんだ?! 」
「……よいではないか」
「ダメだ。帰って切り分けてやるから我慢しろ」
「むぅ……」
この前仕入れたリプルをソウが口に入れようとするのを阻止。
全く隙もありゃしない。
機嫌がいいのは良いんだが、勝手に異空間に入っている商品を食べないでほしい。
いや入れてもらっている手前強く言い過ぎることは出来ないが。
新しく保存方法を考えた方が良いか?
いやそれをするとソウが機嫌を悪くするからな。やめておこう。
「む。集会場というのはあれではないか? 」
「っぽいな……」
足を止めて煉瓦造りの建物を見上げる。
二階は見えず一階だけのようだ。代わりに横に広く、幅は町の建物よりも少し広いくらい。
素朴に見えるががっしりとした建物のよう。
もしも何かあった時の避難所にでも使っていたのかもしれないな。
顔を正面に戻して入り口を探す。
何人か建物に入っているのが見えるから、恐らくあそこが入り口なのだろう。
「エルゼリア殿ではありませんか」
「昨日ぶりじゃの」
「おうエルゼリア。今日は世話になるぜ! 」
「ライナー殿は
「ちょ、旦那。それは言わない約束ですよ」
振り向くとそこには種族王達がいた。
彼らに挨拶を返し彼らのやりとりに頬が緩む。
本当に仲が良いだな。
そう思いながらも集会場に視線を戻す。
そして私達は建物の中に入っていった。
★
「皆さん。お集まりくださりありがとうございます」
全員集まった所で町長が席を立ち恒例の挨拶をする。
といっても短い。
経験が乏しいから、ではなく彼女自身も長い挨拶が嫌われるのを知っているのだろう。
「今回お集まりいただいたのは事前に説明した通り、エルゼリアさんが主導する「町おこし」について話し合いをするためでございます」
「町おこしっても何をやるんだ? 」
「それを今から決めようという話です。要は前段階。エルゼリアさんとしてはどのような構想で? 」
町長が私に話を振る。
構想か。
食を全面に出したいけれど、それだけだと納得しない人もでるだろう。
実際ここに集まっているのは食堂の料理人以外に宿屋の店主やガラス細工工房の工房主、エルド酒造などもいる訳で。
ならば——。
「それぞれが町の広場で出店のようなものを行えればと思うのだが」
「んだ? 料理一色じゃなかったのか? 」
「それもいいんだが全体が盛り上がらないだろ? 」
意外そうにこちらをみる人に言葉を返すと大きく目を開いて頷いた。
私が主導するといった所で「料理」だけを出すと思っていたのだろう。
けれどそれだけだと「町おこし」の効果は薄い。
町おこしとはその名の通り町を活性化させることを目的とする。
確かに今回私が主導することで「食」に関する出店は多くなると思う。
だがそれだけだと外から来たお客さんにこの町を良さの一割も伝わらないだろう。
せっかくの機会だ。
十割とはいかずとも各職種が協力を行えば、外から来たお客さんも輝くものを見ることができると思う。
――リアの町の良さは「料理だけ」ではないのだ。
それを知ってもらうためにも町の人の協力が必要となる。
協力を得るためには全体の利益となるような企画でなければならないわけで。
エゴのみで進めることは可能だが、それだと賑やかさに欠けるだろう。
「考えてるねぇ~」
「わしはてっきり美味い料理を振る舞うだけだと」
「俺は料理バトルだけかと」
「いやそれも面白いんだけどな。まぁ全体的なことはさっきの通りだが、個別にテーマがあってもいいと思う」
「「「テーマ? 」」」
「あぁ。今決める必要はないが、各店舗が決めたテーマに沿って料理なり物作りなりパフォーマンスなりをできたらと」
全体的なテーマも必要だが、個別のテーマもあっていいと思う。
これがあれば実際に商品をアピールする時だいぶ楽になる。
テーマを決めずにやるのも一つの手だがそれはそれで難しい。
「全体テーマをそのまま個別テーマにしてもいいと思うんだが……。リア町長。今回のテーマは? 」
「調和、にしようかと」
「それはいい。この町にぴったりだ」
異種族に異形種にと様々な種族が入り乱れるこの町は手を取り合って百パーセント以上の機能出している。
まさにこの町を表す言葉だろう。
全体テーマがきまった。
けれどこれって各店舗のテーマにしづらいな。
まぁそれは各個人が決めることになるからいいか。
その後も会議は続く。
日程や、今日集まれなかった人達への告知、出店店舗の確認などをすませていくと、リア町長が私を見て一言呟いた。
「名前はどうしましょう? 」
「名前、か」
そう言えば決めてなかったな。
単に「町おこし」としか言ってなかったし。
「だれか良い名前は思いつかないか? 」
「ん~。難しいな」
「エルゼリアフェスティバルとかはどうだ? 」
「却下だソウ」
アホなことを言うソウにチョップをかます。
ピ、と小さくないて床に倒れてそのまま転がる。
暇すぎたのか遊び始めたソウを見て軽く溜息をつく。
私の名前を入れるなんて恥ずかしすぎだろ。
それに私の石像まで立とうとしているんだ。これ以上目立ってたまるか。
「リアの町で行うから名前に「リア」は必要だよな」
「だな」
「これは外せねぇ」
「……それは私が恥ずかしすぎるのですが」
「町の名前にも入っているんだ。諦めろ」
リア町長が抗議しくるがすぐに撃沈。
沈むリア町長をおいて話を進める。
「奇しくもこの町は精霊さまの力によって窮地を脱した」
「確かに」
「ならば「エレメンタル」も必要だろう」
「合わせると「エレメンタル・フェスティバル・リア」って所か? 」
「「「それだ!!! 」」」
言うと全員が大声を上げた。
思った以上に反響があり、これはこれで恥ずかしい。
けれど名前が決まり話を纏めることになる。
「エルゼリア・フェスティバル・リアでもいいじゃないか……」
ソウがまた馬鹿なことを言っているので軽く指ではじいてお仕置きをする。
詳細はまた何度も集まり決めるとして計画の外枠は決まった。
そして第一回開催に向けてそれぞれが始動する。
———
後書き
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