第15話 町民大集合!
それぞれに種まきを頼んだ後、私はキッチンに向かった。
今日は人数が多い。それに全員腹ペコかもな。
料理は何がいいだろうか。一気に作るならスープものが良いだろうな。
思い大鍋を三つほど用意する。
メニューを考え食材を用意する。
鍋を
「エルゼリア。君の優しさは知っているが、よかったのか? 」
「なにが? 」
「食料のことだ。保管している料理も無限ではないぞ? 」
振り返らず「わかっている」と言いながらお玉を回す。
魔法で三つ同時に動かしながらソウに考えをいう。
「案がある」
「案? 」
「種まきが終わり水属性魔法で安定して水を送れるようになったら、周辺の森を探索に行こうと思う」
「探索か」
「そう。現状何が生息しているかわからない。もちろん町の人に聞いてみるが、こればっかりは自分の足で行った方が良いだろう」
「わかるが、肉事情はそれで解決するのか? 」
「ま、無理だろうね」
私の言葉が意外だったのかソウの声が
「続けるが可能ならばこの町、いや領地に対する経済封鎖を
「我がその
「それをすれば肉ごと消えるからだめだろ? 」
「むぅ。我の冗談に真面目に答えるとは……。エルゼリア。相当キレてるな? 」
「ま、私が最も嫌いな貴族のタイプだからな。消し炭にしたい気持ちはある」
「止めておけよ? 」
出来るわけないだろ? と笑いながら言う。
自分の私利私欲のために、意図的に平気で人を傷つける。
私が最も嫌いな権力者タイプで嫌悪の対象だ。
ソウをけしかけたりはしないが耳にするだけで吐き気がする。
その気持ちを押し込めながらお玉を操る。
「ま、相手が封鎖を解かないといけない状態にまでおいやり封鎖を解かせて、この町に肉を
「……またえげつない事を考えてないか? エルゼリア」
「私を悪女の様に言うな。失礼な精霊獣だ」
まったく、と息を吐きながら料理を続ける。
三つの具材たっぷりなスープが出来上がった頃、外から大きな音が聞こえて来た。
★
「おい
「働かせてくれ! 」
「わしも働くぞ! 」
「仕事をします。なので子供に料理を食べさせてください! 」
「エ、エルゼリアさぁん~! 助けてくださいぃ~! 」
何事かとおもい扉を開けて外にいくとそこには多くの人がいた。
獣人族に人族、エルフ族にドワーフ族に小人族に魔族に……。
町のどこにこんなにもいたのかわからない程、人が集まっていた。
その様子に
「なんだこの美味そうな匂いは! 」
「仕事をしたらこれを食べさせてくれるのか!? 」
扉から匂いが
彼らはもみくちゃにしていたラビから離れる。
代わりに私がロックオンされたようだ。
迫りくる彼らに戸惑いながらも息を吐いて落ち着く。
「説明する。沈まれ! 」
一歩前に出ながら声を張り上げる。
「農作業をしたら料理が食べられる。それは事実だ! 」
告げるとどよめきが走る。
それぞれが顔を見合わせてやる気を出している。
「しかし! 食料の提供は毎日できるものではない。それはこの町の事情を
「私は旅の料理人だ。が先日ここでレストランを開業することを決意した。しかしこの町は食糧不足。それを改善すべく、町長に頼み荒れた農地を借り、荒地は精霊獣の力によって作物が
精霊獣、という言葉に戸惑いを見せる人達。
しかしキッチンからやって来た人間大のソウを見て、エルフ族達妖精族は「まさか」「本当に?! 」と驚きながら全員土下座状態となり、
「この地は祝福を受けた。安心するが良い」
その言葉に涙を流しながら顔を沈める妖精族。
「祝福を受けた地はもう不毛の地ではない。作物を植え、育てる。ここで作られた農作物は基本的にレストランで消費するが余るのが目に見えている。よって余剰分を町の市場に流すことを計画している」
「この町に食料が?! 」
「けど高いんじゃ......」
「値段に関しては町長と相談だ。基本的には一般的な市場価格を少し下回る程度を考えている」
おおお、と声を
「だがそれまで時間がかかるだろう。だから少しずつ私が持っている食材を町の市場に流す。今回の日雇い労働はその一環だ」
集まった人達のボルテージが上がる。
全体を見ると皆やせ細っているのがわかる。
しかし妙だな。
この中に聖職者らしき人物が見えない。教会にでも引き
が疑問もほどほどに言葉を続けて
「今日食べる食事は放出する食材分と思ってくれ。農作業分は、私の
「エルゼリアの言葉を受け農作業をしたいという者だけ残れ。しかしエルゼリアの料理は……格別だぞ? 」
ソウが言い締め
彼の最後の言葉と漂ってくる良い匂いに魅了されたのか全員農作業を始めた。
★
更に料理を作らないといけなくなった。
よって再度キッチンへ行き
作り終えレストランの外へ出ると集まった人達も最初の三組と一緒に種を植えていた。
「しかしさっきのは一体なんだったんだ? 」
「わしが噂を広めてきたわい」
畑を見ていると後ろから声が聞こえて来た。
アデルの祖父だ。
しかし一人ではなかった。隣にリア町長と老執事コルバーがいる。
二人に挨拶しお爺さんの方を向く。
「お爺さんの
「話は早い方が良いかと思っての。それとも余計だったかの? 」
「そんなことはない。思ったよりも早く種を植えることができそうだ」
こればかりは人海戦術。
大雑把でいいのなら
それにレストランを運営するにあたって交流は大事だ。
彼らは今回の件を通じて将来この店の常連さんになってくれると嬉しい。
「この町の人達に食料を分けてくださりありがとうございます」
「最初の約束だし、こちらにもメリットのある話だ。気にしないでくれ」
頭を下げる町長に、あげるように
リア町長が頭を上げる中、お爺さんは私の言葉に引っかかりをおぼえたのか探るような目で私に聞いてくる。
「メリット? 」
「あぁ。
「そんなことで、こんな
「普通の人から見たら大それたことでも、私からすれば重要案件なんだ。出来れば町を復興させ更にその先まで進みたい」
瞳を「これでもか」と大きく開いて驚くお爺さん。
驚き過ぎたのか固まって動かない。
硬直が解けたと思うと顎に手をやり少し考えている。
どうしたのだろうか。
「ならばわしが少し手助けしよう」
「お爺さんが? 」
「うむ。しかしそれも食材が出てから、じゃな」
にやりと笑みを浮かべるお爺さん。
それにつられて私も笑う。
私達のやり取りを不思議そうにリア町長とコルバーが見ているが気にしない。
「では私達も頑張りましょう」
「? 」
「農作業を手伝えばお食事を頂けるのですよね? 」
リア町長はにっこりと笑い
その後ろでコルバーが「お嬢様が自分の為に働いている。あのお嬢様が」と感動しながらついて行っている。
それをみてお爺さんと顔を合わせて、また笑った。
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
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