第10話 相談してみよう②

「そんで?何を悩んでんだ。」


山本さんはそう言って水を飲んだ。


「いやぁ、お恥ずかしながら迷宮に入りたいんですが何をして良いのかさっぱりで......。」


俺が言うと山本さんはびっくりした様子で言った。


「なんだ、そんなことだったのか。てっきり近衛のやつに不満があるとか、早く東條が総理になんねぇかなとか、物価高どうにかしてくれよとかかと思ったわ。」


「それって山本さんが思っていることですよね。」


思わず突っ込んでしまった。


怒られるかなと思っていたが山本さんの反応は違った。


「ガハハハ!よく言うじゃねえか翔、分かってるな!そのとおりだ。あと、さんづけせずに五十六でも山本でも呼んでくれや、敬語もいらん。気に入った。」


え〜、恐れ多いな......。でもそう呼ばないとなんだか嫌な予感がする。


「じゃあ山本で。」


「おう!あっ、そうだった。相談だったな......」


山本がなにか言おうとしたが大将が来た。


「山本さんよ、ほら、いつもの牛すじ煮込みの甘辛牛鍋だ。」


「良いねぇ、酒がほしいところだが翔がいるからな。今日はやめとこう。」


「おっそうか。じゃあごゆっくり」


大将はそう言って厨房に去っていった。


「さて、迷宮のことについてだったな。」


山本はそう言って牛鍋から牛すじを皿によそった。

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