創造のサルバ

未知 袖

創造への始動

第1話 - 山の少年

「朝だぞ!起きろサルバ!いつまで寝てるんだ?昨日机は片付けてから寝ろって言っただろ?」

 

 不愛想だがどこか温かいオハンの声にサルバは伸びをしながら答えた。


「お父さん、おはよう。お父さんが早すぎると思ったことはないの?」


「日が登ってから起きてもう4時間は経つぞ?サルバ。。お前はちょっと寝すぎだ。変なこと言ってないで朝ごはんだ。食べるぞ」

 

 鳥の囀りが聞こえる静かな山の中。サルバが生まれて物心ついたときから住んでいた今のお家。しかし、母は側にいなく、いつも無愛想な口調の父にドアを強く開けられ起こされている毎日だ。


 190cmを超える身長で筋肉質のオールバックの黒髪のオハンの後ろを眠そうについて歩く父の胸にも届かない大きさの長い銀色の髪をしたバランスのいい筋肉質の少年。パッと見では全く似ていない親子だと思われるだろう。


 サルバは目をこすりながら食卓に座った。


「また、昨日のスープ!?もう3日間も同じじゃないかー市場行くときに一緒に行こうよ!きっとおいしいものは俺の方が見たらわかると思うしさ!俺ももう大きいし、早いし!強くなったから何かしら役にも立てるしさー!」


「うるさい。ここ3日間は"エクウム"が巡回をしているからじっと家にいろ。騎士団長も来ていると騒いでいるから山からは出るな!」


 サルバが住んでいる十二島(トゥエルブ)は12の島でできたアコーリ諸島に属している。この地域は王による統治ではなく、13家の貴族の次期当主が団長を務める世界連合騎士団の『エクウム』により統治管理されている地域だ。

 

 諸島の周囲はギルテの籠と言われる高い壁で囲われており、島のどこからも見えるくらいの高さだ。現在の4家の王族と13貴族に統治されている世界『レテギニア』500年もの間様々な理由で国外に追放された人々から何らかの理由で逃げてきた人たちが集まっているのがアコーリ諸島だ。


 特に十二島はその中でも一番環境が悪いとされ、一説によると王によって追放された人々が住んでいるという噂がある島でエクウムの巡回も1番少ない地域だ。サルバの家の周辺半径5kmには誰も住んでいなく、島の人々はお互の干渉は週1の市場を除いてはしていない。


「はいはい!もう11年間も1人じゃ他の人がいるところにはどーこにも行かせてくれないんだからもう分かってますよ!市場も今まで4-5回しか連れてってくれないしさー!これまで何も危ないこともなかったんだからいいじゃないか!そもそも誰がお父さんに喧嘩売れるって言うのさ。。こんな強面!」


「大人になったらわかる。外も人も危ないんだ。全部ザルバお前を思ってのことだ。この島は特に危ないから1人で山から降りることはダメだと何度も教えただろ。これまでたまたま何もなかっただげだ。言うことを聞きなさいいずれわかる。」


「あ!まーた子供扱いかよ!そもそもこの周辺は俺たちしかいないんでしょー!こんな山の奥に誰が来るって言うの!俺も市場連れてってよー!」


「…もういいから、食べろ」


 オハンは少し疲れた顔で先に食べはじめた。ザルバは山頂にある湖と山などオハンが許可してくれた周辺5キロ圏内は1人で出ることは許されていたが1人で山を下ることや他の人たちと会うことだけは許してもらえなかった。 


 そのため、サルバは多くの時間体を鍛錬したり、字が読めるようになってからはオハンの部屋にある本棚から本を読みながら自分が住む世界の様々なことを勉強している。


 たまにはオハンから直接教えてもらうこともあった。本で世界を知った少年は好奇心から山から抜け出そうと企んだこともあり、何度か実行に移したが全てオハンに見つかってしまい叶わないと諦めている。


「ごちそうさま、明日は違うものがいいなー!ちょっと泳いでくるよ!」


「サルバ、早く帰ってこい、遅かったら連れ戻しにいくからな」


「はいはい、弱い息子ですからね」


「そんな捻くれた言い方をするな、全てお前の、、」


「もういいから!俺はお父さんほどじゃないけど早くなったし、この周辺のモンスターなら1人で狩れる!きっとお父さんが俺の年齢の時よりも強いはずだ!なのにダメダメばっかりじゃないか!もういい。。昼までには戻るから。。!行ってくる!」


 ドアを閉めてサルバが出ていった。ドーム型の手作り感が強い家を一回振り返って深いため息を吐いたサルバは山頂に向かって走り出した。いつもより疲れる。きっと興奮して心拍数が高いせいだろう。


 サルバが出て行った後の家でオハンは食器を片付け、自分の部屋に戻ってベットを動かして隠しドアを開けては地下の暗い部屋に入って行った。二つの引き出し付きの机とランタンしかない部屋でランタンに火を灯したあと机の前に座ったオハンは右の引き出しを開けて銀色の髪に黒い目をした女性の写真を取り出して机に優しく置いた。


「ヒルア、今日もサルバのやつを怒らせてしまったよ。11歳になってからは自分の主張を立派に言うようになった。。まだ何もあの子には話せていない。これが正しいのかもわからないんだ。。父は初めてだからかな。難しいよ。サルバは確かに体も好奇心も強くなってきている。。いつまで2人でここでやれるのかもわからない。ヒルアならどうしたか教えて欲しいな」


 暗く狭い部屋の中で小刻みに震えるオハンの背中は大きい筋肉質の男のそれとは言えないほど小さく弱々しいものに見えていた。


■□■□■

<世界観情報> *この時点公開可能なものに限る


①エクウム:世界の13家の貴族を中心に結成された騎士団連合。

      治安維持、モンスターの討伐、幻塔の攻略など多岐にわたる。13の騎士団で構成されていて団長は各家系で時期当主を務める実力者が務めることが多い。


*幻塔(げんとう):500年前に世界に突上現れた塔のこと、攻略すると神器や不思議な能力を得られると知られているが詳しいことはわかっていない。


②13家の貴族:4人の王が500年前神から世界を救った時に共にに立ち上がったた者たちの家系


③4家の王族と治める国々:


1- 島国 ネプア(アーリー家の統治)

首都 アテラン。 独自のカルチャーを持つ島国、唯一貴族を持たないで統治をしている。貿易が盛んな国。


2 - 大陸 ギアリオ王国 (イステリオン家の統治)

首都イオナを除き、4の貴族の領地で構成される。多くの製造技術が発達している先進国家。


3 - 大陸 マリガティア共和国(ウハル家の統治国)

首都ルソウを除き、6の貴族の領地で構成される。モンスターが多く生息しの傭兵集団のパーティと研究施設も多い、学問が発達している国で最大の大陸。


4 - 大陸 テグス王国 (エヒラサム家の統治国)

首都ラタールを除き、3の貴族の領地で構成される。資源が豊かな国。

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