メディ
「どうやら、いきなり【処分】はないみたいね」
ツカサが立ち去った後、メディは小さくため息をついた。
「なんとかなったな」
「何ともなってないわよ!」
コウヤの言葉をメディは全力で否定する。
「いい? さっきの隊長の言葉を直訳すると『ハヤトはこの女の子の保護者兼監視役』ってことになるのよ」
「いいじゃねぇか、それぐらいの覚悟を見せないとこの女の子は下手すりゃ殺されていたかもしれないんだろ?」
「下手をすればじゃなくって、実際に【処分】するつもりだったと思うわ。それに、事と次第によってはこの巣穴の破棄もありえたのよ」
「…………」
「…………」
事の重大さにハヤトとコウヤは言葉を失った。
「私は確かに患者のことを考えた。ハヤト、あなたの役割は何?」
「俺の役割は……」
メディの言葉にハヤトは言葉を失う。そんなこと考えたことがなかった。ハンターから身を隠し、襲撃し、撃破する。資材を回収して、そして――
「俺の役割は……みんなの生活を守ることだ……」
なぜ、こんな当たり前のことに気づけなかったのだろう。
女の子を助けた。そのことについて後悔はない。
しかし――
その先の事――例えば、この女の子に発信機が付いていないか、ハンターの尾行はないか、警戒しながらも帰還したが、それが罠でないとなぜ言い切れる。
「まぁ、女の子を救助したら普通は連れてくるけどね」
メディは同情するようにハヤトを見つめる。
「隊長が言いたかったのはその先よ」
「えっ?」
「いい、一つ一つの行動にはすべて結果が付いてくるの。ハヤト君は隊長が入ってきた時、そして警備が動いた時にすぐに行動しなかったでしょう」
メディの言う通りだった。
思い返してみれば、ツカサはハヤトを責めていない。どうするのか? の答えを――「ハヤト自身の考え」を求めていたのだ。
「隊長は決して仲間を見捨てたりしない。だから、ハヤトの間違いも全部最後には隊長に責任がかかるものなのよ」
「俺はそんなつもりじゃ……」
言いかけて言葉を止める。そうなのだ。それが責任者としての務めであり役割であり責任なのだ。
「行動の全てには責任が付きまとう。若いから無茶して大丈夫! じゃなくって、その行動がどういった結果を招くのかを考える機会を与えたんじゃないかな」
メディは「あのインテリの考えていそうなことよ」と吐き捨てるように言った。
「隊長の考えなんてよく分かるなぁ」
感心したようにコウヤが呟き「付き合い長いからね」と言葉を濁すようにメディ。
「男と女の……!!」
「コウヤ君、点滴受ける?」
「い、いえ……遠慮しておきます」
コウヤの呟きはメディの笑顔によって封印された。
(行動の責任……)
ハヤトは心の中で先程の言葉を何度も反芻していた。
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