第12話 死霊使いグラミー
「邪帝王軍四天王……?」
俺のつぶやきに、ラーティは息を呑んだ。
「凄まじい力の持ち主です。伊達に四天王を名乗ってはいないようですね」
「そんなのわかるの?」
「神聖術で相手の能力を看破する事ができるのです。あのグラミーという者は、わたくしの世界で言うところのレベル80相当の能力値を持っていますね」
「なるほど」
数字の感覚はよくわからんけど、めちゃくちゃ強そうって事は何となくわかった。少なくともまともにやればレベル1の俺が敵う相手じゃないんだろう。
とにかくあいつを倒せばゾンビ化の呪いから解放されるんだな。
「リリさん、下がっててくれ」
「は、はい……」
俺の後ろにと言ったつもりだったが、リリは物陰へ隠れてしまった。
そんなに俺って頼りないのか……。まぁ実際弱いんだけど。
「貴様らが召喚された異世界の勇者か。脆弱そうな奴らよ」
グラミーは牙を見せつけるように嫌らしく笑う。
ラーティは毅然とした態度で聖杖を構えた。
「弱いかどうかは戦ってみないとわかりませんよ。そうですよね、イサム様?」
「えっ? あぁうん……」
レベル1の俺に話を振られても困るんだけどなぁ。
「
「えぇっ!?」
俺も
「イサム様、やりますよ!」
「お、おう!」
まぁ細かい事はどうでもいい。今はとにかくグラミーを倒さないといけない!
「かかって来い!」
聖剣を構える俺に対して、しかしグラミーは気乗りしなさそうに肩をすくめた。
「やれやれ、弱者ほどよく吠える」
グラミーがあごを振ったと同時に、周りにゾンビが集まってきた。
「私が出るまでもない。貴様らで相手してやれ」
「グルオォォォォ!!」
大量のゾンビどもが俺達目掛けて襲い来る!
「イサム様、結界を張りますか?」
「いや! 一旦下がるぞ!」
俺はラーティの手を引き、狭い路地に陣取った。
「なるほど! 狭い道なら囲まれるのを避けられますね!」
「そういう事だ!」
俺は聖剣を振り抜いた。
狭い路地に入ってきたゾンビが一刀に斬り伏せられる。
「うおおおおおッッッ!!!!」
一振りごとに肉片が舞い、腐敗した汁が路地を濡らしていく。
死霊特効なだけあって一般人の俺でもやすやすとゾンビを薙ぎ払う事ができる。
「ほう、なかなかやるではないか。……いや、その武器のおかげか?」
お見通しか。四天王を名乗るだけはあるな。
「だったらどうする、四天王様? 偉そうな事を言って手下のゾンビをけしかけるだけか?」
「ふん、それが死霊使いの戦い方だからな」
俺の挑発にもグラミーは表情一つ変えない。
だったら別のやり方で攻めるか。
「しっかし死霊使いなんて大層な肩書きがあるからどれほどのものかと思ったけど、大した事ないな」
「ふっ、口だけは達者なようだ」
「事実だからな。何なら俺のゾンビの方が優秀だぞ!」
ピタッとグラミーの動きが止まった。
お? もしかして怒ったか? 相変わらず表情は変わってないけど、何だか内心ムカついていそうな反応だ。
よし、ここを攻めてやる!
「まぁお前の作った出来損ないの雑魚ゾンビなんかいくら来たって無駄だ。全部聖剣の錆びにしてやるよ!」
「イサム様、聖剣ヴォルケインは錆びません」
「だから話の腰を折らないでくんないかなぁ!?」
そんなやりとりを見てか、グラミーは動いた。
「……いいだろう。ならば私と貴様の死霊術のどちらが優れているか、白黒付けようではないか」
不意にゾンビの群れがスッと割れ、俺の目の前に空間ができた。
その道をさながら王のごとく悠々とグラミーが歩いて来る。
遠目にはあまりサイズ感がわからなかったけど、思いのほかでかい。身長三メートル近いんじゃないか? 肉弾戦で勝ち目あるのこれ?
「どうした。あれほど大口を叩いておいて、よもや恐れをなしたのではあるまいな?」
「ビ、ビビってねぇし! いくぞ!」
俺は先手必勝とばかりに聖剣を叩き込む。その閃きはグラミーの爪に当たって火花となった。
防がれた!? くそ、これならどうだ!
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
がむしゃらに聖剣をぶん回す俺。しかしゾンビならいざ知らず、そんな雑な攻撃が四天王に効くわけもなく。
「くそっ、当たらない!」
「まさかとは思うが、貴様素人か? そこらの雑兵でももう少しまともに剣を振るぞ?」
そりゃだって俺、ただの受験生だしな! こちとら剣道どころか格闘技経験すらねぇよチクショウ!
だがその時、俺の背後で涼やかな音色が鳴った。
「我らが守護神アルデム様。迷える者達に闇夜を照らす光をお与えください――ホーリーライト!」
次の瞬間、街中が光に満ちた。
目も眩むほどの眩い輝き。グラミーはそれに動じた風でもなかったが、一瞬動きを止めた。
そして俺は目が眩んでいない。なぜなら光源が後ろにあるからだ。
「イサム様、今です!」
「よ、よっしゃあ!」
勢い任せに俺は聖剣を振り下ろす。すると聖なる刃がグラミーを斜めに切り裂いた。
袈裟斬りになった半身がずれ、重力のままに地に落ちる。
「入った!」
「やりましたね!」
確かにやった。手応えもあった。でも何だか腑に落ちない感覚がまだ俺の中でくすぶっている。
本当にやったのか? 四天王ってこんな簡単に倒せんの? 俺騙されてない……?
そんな予感は当たったようだ。
「クックック……この程度で勇者を名乗るとは片腹痛い」
ムクリ、とグラミーが起き上がる。
先ほど斬った箇所は傷跡そのままにくっつき、ツギハギを増やしただけに終わっていた。
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