後始末

 マキナの手によって四天王に魔王の形代、魔王軍のNo.2であるイスタルも討伐された。

 酷く大掛かりな魔王軍の攻勢であり、幾つもの国が滅ぶなどという看過できない犠牲も出たが、それでも勇者パーテイーが誰一人も欠けることなくこれだけの被害を相手に与えられたの大きいだろう。

 だがしかし、問題なのはマキナが苦戦したというただ一つの事実である。


「……なぁ、これはどうにかならない?」

 

 マキナは現在、グレイスたちの住む家の中に監禁されていた。


「今の僕はちょっと動けないんだよぉ。そんな僕を閉じ込めておくなんてひどくない?もっと僕が三人を相手にボコボコにできるようなタイミングで来ない?」


 魔王の切り札である『魔王の器』を模倣して一瞬にして体力も魔力も回復させて全快になったと思われていたマキナであったが、流石にぶっつけ本番で魔王の切り札を模倣するのはいくらのマキナであっても無茶だった。

 色々と感覚がバグってしまったマキナは昔から発動させていた魔法を継続して発動させ続けることは出来るが、新しく魔法を発動させることは出来ず、あまつさえ歩くこともままならない。

 今のマキナは史上最高に弱いだろう。


「そんな今だから、だよ?」


「そうじゃ……片時も、目を離さないのじゃ」


「……」


 自分たちが悠長に魔王軍の四天王やら幹部やらと戦っている間にマキナが首を落とされて死にかけたということを聞いたグレイスたちは思わず自殺してしまいそうになっていた……そんな思いをした後にマキナが動くこともままならなくなりました。などという話を聞いてしまえば過保護を拗らせるのも仕方ないだろう。


「マキナはすべて僕たちにその身を任せていればいいんだよ……ご飯もお風呂も着替えもすべて、僕たちがやってあげるからねぇ?」


「まったくもってその通りじゃ……わしはちょっとご飯作ってくるのじゃ。グレイスは……マキナを、このまま見ておくのじゃ。グレイスは外の警戒を頼むのじゃ」


「あぁ、今週一度目のご褒美ディを堪能しておくよ」


「……」


 レミヤは夕飯を作るためにキッチンへと向かい、レーテムは外を警戒するために一旦外に出て威嚇並びに家の防衛網に綻びがないかの確認をしにいく。


「……それが文句しかないんだけど。ご飯はなんでか知らないけど髪とか入っているし、かすかに変な味もするし……お風呂でも着替えでも僕のおちんちん触りすぎだよ……別にそっちの趣味はないんだけど」


「「「……っ///」」」

 

 三人に捕縛された状態で何も出来ないマキナは自分の生活を嘆き、切実な不満を吐露するのだった。

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