魔王軍のNo.2

 マキナを倒して悠々と王城に侵入してきたイスタルの前に多くの騎士たちが立ちふさがる。


「……俺が、あのマキナの前で醜態を晒し続けていたことは認めよう。だが、お前ら程度で食えるほど俺は脆弱じゃないぞ?」


 かつて、マキナたちに救われた王女と国王の前で二人を守るようにして自分の前に立ちふさがる騎士たちへとイスタルは警戒心を持ちつつも侮るような言葉を口にする。


「主よ、我らに力を。魔に属する者へと天罰を!」


 そんな中で王女が手をイスタルへと掲げて能力を発動させる。

 

「……ふむ。これがあの名高い王女の能力か」


 魔法とは少しだけ別種の、グレイスの聖剣のようなその人個々人に宿る力。

 王女だけが使えるの能力による効果がイスタルの体を蝕み、その力を容赦なく削いでいく。


「かなり、落ちてはいるな。特に問題ないが……なるほど。俺程度でもこれだけ落ちるのか。魔が深いものであればあるほどその影響が大きい……つまり、魔王様であればもっと落ちるというのか。これは、排除すべき敵であるな」


 王女による能力をしかと認識し、冷静に判別したイスタルは一度、首を縦に振る。


「これは、利用どころの話ではないな……ここで殺す」


 イスタルの姿が消える。


「───ッ!?」


 一瞬にして王女の前に立ったイスタルはそのまま剣で王女の首を狙う。


「……ちっ、死してなおか」


 だが、その一刀はマキナが予めに貼っていた結界に防がれる。


「……い、やぁ!」

 

 僅かばかりに出来た時間を受けて王女はイスタルに背を向けて全力で逃げ始める。


「おぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 そして、その代わりとして王であるフリードルが勇気を見せてイスタルへと飛び掛かる。


「邪魔だ」


 そんなフリードルをイスタルは軽く腕を振るって吹き飛ばす。


「死ねぇぇぇぇぇえええええええええ!!!」


 決死のフリードルの飛びつきは僅かな時間を稼ぎ、それによって騎士たちが動けるだけの動きが出来た。


「逃がさん」


 だが、そんなものは何の意味もなかった。

 当たり前のように騎士たちの動きを無視してそのまま前へと突き進んだイスタルの素肌に騎士たちの剣は弾かれ、再び彼が王女の前に立つのを防ぐことは出来なかった。


「今度こそ」


「……ぁ」


 もはや何者にも守られていない王女の前に立ったイスタルは振り上げた剣を彼女へと振り下ろす。


「なぁ……おい、何しようとしてんの?」


 その瞬間だった。

 強烈な魔力と共に王城の壁が崩壊したのは。


「がはっ!?」

 

 それと共にイスタルの体は衝撃を受け、そのまま吹き飛ばされてしまうのだった。

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