残存魔力量

 緩んできていた魔王の肉体の最封印の魔法。

 戦闘を避けるべきだと判断した魔物への封印魔法。

 大陸のどこで何が起きてもすぐに知れる監視魔法。

 大陸にある危険物を見つけるための探知魔法。

 難病患者のための医療魔法。

 多くのものたちを救う研究のための実験魔法。

 劣化してはならないものにかけている維持魔法。

 

 マキナが常に発動し続けている魔法だけでもこれだけの数がある。

 そして、今回。一連の戦闘の中で使った魔法の数々は常軌を逸している。

 自分の妹を助けたために使った魔導解放から始まり、全世界の人間を対象とした結界魔法に回復魔法、四天王を倒すために使った魔導解放に世界結界、魔王の形代の崩壊に耐えるための回復魔法、魔王の形代を倒すために使った大量の魔法に魔導解放の連射、彼だけの特殊な魔導解放たる双天ノ界・白皙焔矢、そしてマキナの切り札。


 一握りの天才であっても魔導解放一つ使えばほとんど魔力を枯渇させてしまう中で、マキナは既にこれだけの魔法を連発した後なのだ。


「これでも、あれだけの出血を強い、魔力を浪費させても本来であればまだお前の底には付かなかっただろう。だが、俺たちの緒戦。王女を誘拐させた際の魔族の実行部隊の面々が命を賭して発動した呪いは確かに働いているだろう。それに、己の妹を焼いた際の輪廻転生の制度を超過した際に負った反動はどうだ?ここまで追い込まれればきついだろう?」


「……ッ」


 最初から、一から十まで魔族は目標をマキナただ一人に絞っていた。

 勇者パーティーを一つの塊にさせている理由がマキナであると魔族は分析した後である。


 ここまでの行動はすべてマキナを殺すための準備だ。

 魔法を発動させて、発動させて、発動させて。

 幾重にも罠にかけて地道にデバフをかけ続けていた。


「意外だなぁ。脅威の子よ。既にお前の魔力値は俺よりも下だ」


 その果てに。

 マキナの残っている、魔力量は魔王軍のNo.2であるイスタルよりも少しだけ少なかった───勇者パーティーがいなければ人類を軽く滅ぼせるだけの組織たる魔王軍のNo.2であり、トップとの距離は遥かに遠いが、それでもNo.3とは隔絶した実量を持つ怪物たるイスタルよりも少し少ないくらいに。


「そんな中で、お前は下にいる愚民どもを守らなければならない」


「……愚かな民など存在しない。誰もが全て僕が守る者たちだ。


 既にマキナは感知と探知の魔法は切っている。

 それでも他の魔法は起動させているままであり、膨大な魔力を浪費していることには変わらない。


「そうか……そうか。だから何だという話ではあるけどなぁ。底が見えたぞ、マキナ」


「……」


 イスタルの言葉にマキナは眉を顰めて


「さぁ、選ばせてやろう。己が死ぬか、それとも英雄として死ぬか」


「……ッ」


 いやらしい笑みを浮かべるイスタルは何ら躊躇なく下にいる街へと魔法を発動し、それに対してマキナが対応を取ることを強いるのだった。



 新作です!

 読んでくれると嬉しいです!

『悪役貴族に転生したけど魔法を極めたい!~努力なしでも最強クラスの悪役が一切の悪事を行ずに魔法馬鹿の最強魔法使いとなった結果、ゲームのヒロインたちが押し寄せてくるようになった件~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330668194323937

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