魔王軍四天王

「ウォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 マキナの蹴り一つによって壁にまで叩きつけられた魔王軍の四天王たるガーグは手痛い一撃にも負けずに立ち上がり、大きな咆哮を上げる。

 自らを奮い立たせるために。


「よっと」

 

 それに対してマキナは様々な魔法を発動。

 一秒で百の、十秒で千を超える───ただ一つで街を壊滅させるほどの威力を持った魔法の雨をガーグへと浴びせていく。


「ぬぅ!?」

 

 ガーグとて世界最高峰の実力者。

 魔王軍の頂点に立つ武人が一人、魔王軍四天王の一角である。

 ただの魔法くらいでそのまま押し切れるほど弱くはない。


「ウォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 魔法によって己の身を強化するガーグは血を流しながらも魔法の雨に耐え、魔法の圧にも負けずに態勢を整えて四ツ腕の一つに握られている盾を構えてマキナの方へと突進していく。


「……」

 

 それに対してマキナは余裕の態度でガーグより逃げていく。

 純粋な速度であればガーグのほうが上であろう。だが、転移魔法までをも駆使するマキナにガーグは全然追いつけなかった。


「ぬっ……あぁ!」

 

 ガーグはマキナを追うのを諦め、その代わりとして全力で天井を叩いていく。


「おぉ?」


 天井が崩れ、地盤が崩壊していく中で己に降り注ぐ土塊にマキナは眉を顰める。

 ガーグの狙いはこの空間を閉じて無理矢理にでも距離を詰めることである。


「逃さぬぞぉ!!!」

 

 そんな中で、魔法でもって地上へと全力で上がろうとしたマキナへとガーグは飛びかかってその動きを阻害する。


「むちゃくちゃするなぁ……」

 

 それに対してマキナは苦笑しながらも


「おぉ!!!」


 ガーグは結界魔法を発動し、完全に地盤が沈下して土塊に押しつぶされる中で僅かな空間を作り上げる。


「……ッ」


「させぬ!」


 ガーグの作り出した結界を破壊し、そのまま更に大きな、先程と変わらぬだけの広さを作るべく結界を発動させようとするマキナとの距離を詰めたガーグは武器を握る己が四ツ腕の三つを振るって止まらぬ連打を見せる。

 マキナが結界を発動させる少しの隙も作らせなかった。


「……めんど、くさい!」


 そんなガーグに対してマキナが素直に徒手空拳での戦いに応じる。


「ぬぅ……」

 

 マキナは別にステゴロの戦闘が苦手なわけではない……むしろ、得意な方である。


「よ、っせ、ほいさ!」


「お、おぉぉぉぉぉぉ」


 ガーグの攻撃をすべて紙一重で回避するマキナは魔力で強化された拳で一方的に叩き続ける。


「ぐっ……がぁ」


 マキナからただただ一方的に叩かれ続けた果てにとうとう膝をついて、一瞬意識を何処かへと飛ばしてしまったガーブ。


「魔導開放・魔ノ界・皙」

 

 そんな彼の心臓を白炎を右腕に纏ったマキナの手刀が貫くのだった。

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