王宮の一室
「うっわぁー、すっごい」
フリールによってマキナたちが案内された王宮の一室。
そこは元々は誰が使っていたのか、そう疑問に思わざるを得ないほどの凄まじくピンクな空間であった。
部屋の中心には天蓋付きのキングサイズのベッドが置かれ、部屋は謎にオシャレな紫の照明に彩られてどこか色っぽい雰囲気を作り出している。
置かれている家具のひとつひとつもしっかりと豪華であり……かなりの高給取りであるマキナたちであっても満足できる様な一室だろう。
ただし、一人でいることを前提としたら。
「……これを三人で?」
マキナはみんなのことを思い浮かべながら首をかしげる。
彼の中ではグレイスも、レミヤも、レーテムも男である。男たち四人でこんなところで寝ているようなものじゃないだろうとマキナは考えていたのだ。
「(はわわわわわわわわ、こ、こ、こんなのヤれって言っているようなものじゃないか!むしろこれだけの状況下においてヤらないなんてことあるのか!?いや、ない!だって一つの大きなベッドにこれだけえっちぃ雰囲気何だもの!これで何もないなんてことあるわけがない!そうに決まっている!そもそもマキナだって女を抱くことにこだわっているのだし、僕が何もしなくたって向こうから手を出してくるに決まっている!ど、ど、どうしよう。僕はまだ心の準備が……でも、あのクソ女、ナイスじゃないか、本当に)」
「(な、なんじゃ!この破廉恥な空間は!人類は爛れておる!爛れておるのじゃ!こんなの許せるはずがないのじゃ!いつの間に人類はここまで堕落し、子孫を作る雰囲気づくりを凝り始めたのじゃ!ダメじゃ、ダメじゃ!ダメなのじゃぁ!……でも、あの女を、褒めてやらないこともないかもしれないのじゃ……むふふ。あるかもしれないのじゃ。とうとう叶うときが……マキナに抱かれる時が来たのかもしれないのじゃぁ!!!)」
「(むほー!!!雰囲気が、こんな、良いの!?に、人間ってだいぶ進んでいるのね。ちゃちゃっと入れて出して、はい。終わりって感じのただの子づくりの一環でしかなかった状態からここまでのところに……はわわわわわわわわわわ。だが、だが、だがだ……良い。あの女は殺さずにやろう)」
三人が、心の中であれば荒ぶるレーテムも含めた三人が内心で高速に思考を回していく。
「んなぁー」
そんな三人に一切気づかないマキナは部屋の外から見える夜空へと意識を向ける。
「……時刻は夜。初めて来る国。もうやることは一つしかない、よな???うん」
マキナは一人で言葉を話しながら窓の方へと近づいていく。
「よっと」
部屋に備え付けれている部屋をマキナが開ける共に涼しい夜風と新鮮な空気が中へと入りこんでくる。
「ちょっと僕はこの国の酒場に行ってくるね!お留守番よろしく!日が開ける前には帰ってくるよ!」
窓を開けたマキナはそのまま体を外に乗り出して、三人の方に視線を向けて言葉を告げる。
「んじゃ!」
そして、言いたいことを言い終えて満足したマキナは返答も聞かずにその場を飛び降りて
「あっ、いってらっしゃい」
「い、いってくるのじゃ!」
「……」
そして、それを色々と心の準備をしたかった三人がそのまま見送るのだった。
■■■■■
ちなみに言うとその夜はベッドの中でもグレイスは鎧を抜かず、レーテムは素肌を見せず、何故かレミヤも布団に包まって防壁を作っている中で、べろべろに酔っぱらって今にも吐きそうなマキナは寝ることとなっていたのだった。
ちなみにではあるがもしも、マキナが吐いたとしてもここでは大丈夫であろう。汚れることはない……マキナのものであればすべてを受けいれるものたちが三人もいるのだから。
「……ヤらないのかよ、お前ら。せっかく箱は用意してやったというのに……出来ればこの国を初体験した思い出の地として欲しかったのに……」
マキナたちが起きて部屋を出た昼頃に清掃のために部屋へと来た一人の少女がぶさくさと文句を口にする。
「というか、あれだけ威圧振りまいて当人を束縛しようとしておいて、一線を越える勇気はないのかよ。色々とバグっているでしょ……狂人の相手をするのは疲れるから嫌なんだけどなぁ」
シーフルは部屋を整えらながらひとりでぶつぶつと独り言を漏らしていく。
「というかあのパーティーの中で一番怖いのが地味にマキナ様の方なんだよね……どうして、あの子はあそこまで英雄であることに、他人を助けることにこだわるのかしら。どちらかと言うと他人への興味が薄いよりの子に思えるのだけど……普通に男女の判別もつかなければ好意にも気づかないような子だし……本当に謎」
そして、勇者パーティーの面々やフリードル。
マキナと関わりある者たちならば誰もが思う謎。
何故、マキナが英雄であることにこだわるのか。他者という者への理解も興味も薄いあの子が誰よりも人を助けるために動き、そのためならば己の全てを投げだせるのかという疑問の答えを、シーフルは延々と考えるのであった。
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