諸外国

 魔王軍が動き出してから世界各国は大慌てで動き出していた。

 ましてや記録にない海岸沿いからの侵略まであったことでその混乱は跳ね上がったと言って良いだろう。

 それが故に普段は悠長であった国々まで泡を食って動いているのだ。


「あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!」


 そんな中で自国のすべてを統括する立場にある国の元首たちは今にも発狂する勢い───否、発狂していた。

 それは仕事量であり、各国との調整であったり……。


「忙しすぎるぅ!?後、勇者パーティーこわぇぇぇぇぇぇぇ!!!何!?龍と山脈が消し飛んだ!?何をしているの!?なんであれだけの強さを持っている連中が恋愛感情を拗らせているんだよ!!!」


 そして、勇者パーティーでのあれこれであったり。

 勇者パーティーの中心に立つグレイスとマキナ。その二人の母国であるがゆえに対魔王関連で中心に立たされてしまったフリードルは頭を抱える。


「マキナくん、マキナくん……助けて、君だけが頼りだ。いつもうまうまとスイーツを食べている君が、君が……わしは君が恋しいぃ」

 

 英雄に執着すること以外は気持ちよく寝て美味しいスイーツを食べられれば満足する三大欲求に生きるピーポーであるマキナは基本的に無害であり、英雄を目指しているがゆえに些細なことでも喜んでくれる。

 上に立つ者としてこれ以上ないほどの人材であろう。底抜けに優秀であるし。


「あぁ……胃が痛い。なんでこの時代に生まれてしまったんだ」

 

 最悪のタイミングに生まれてしまったことを嘆くフリードルは胃痛を和らげる魔法を発動させるのだった。


 ■■■■■


「おぉ……神よ。神よ」

 

 フリードルが頭を抱えている中で宗教の頂点に立つ教皇も嘆いていた。


「……あぁ、我らが神の使い。天使様……どうか、あまり恐ろしいことをしないでください」

 

 一応は教会管轄ということになっているレーテムのことを思う教皇は頭を抱えながら嘆く。レーテムのことを思って。

 常にシスターを派遣させて監視されているが、だからと言って何か出来るというわけではない。

 暴れられたらどうしようもないし、かといって教会の名を汚されても困る。


「おぉ、神よ……いようがいまいが知ったことではないが、どうにかレーテムを大人しくさせてくれぇ!……くそぅ。レミヤ様もどうにかしてレーテムを止める側に回ってもらえれば……」

 

 教皇は。

 かつては破戒僧と呼ばれ、汚い手も使って教会の頂点に立った男は不敬としか言えない言葉を吐き捨てながら祈りを捧げるのだった。

 

 ■■■■■

 

 数ある大国。宗教。

 彼らも混乱の渦にあるが、それよりも悲惨であるのは小国である。

 魔王軍によって世界が荒れた……その余波で容易く国が揺らいでしまうほどの国力でしかない彼らには大きな問題があるのだ。


「来たぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「……マキナに来る女狐はしっかりと排除しないと。マキナは私と相棒として一生いるってもう約束しているんだから。そうだよね?だって、そう。そのような話をしたんだから。それなのにいつもマキナは女に良い顔をしてモテようとするだもん。酷いよねぇ。本当にひどい。いくら恋の駆け引きにしても限度があるよ。マキナを一番幸せに出来るのは私なのにマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナ」


「わしがしっかりと守ってやらなければなのじゃ。そうじゃ。そうじゃ。マキナは騙されやすいのじゃ。しっかりと守ってやらなければならないのじゃ。人間は見にくいのじゃ。底抜けのお人よしのマキナを騙そうするものなんて後を絶たないのじゃ。マキナだって一人なのじゃ。すべてを守るなんて無理なのじゃ。だからわしがマキナを守るのじゃ。マキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナマキナ」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


 そんな小国へと色々問題の多い……というか問題しかないように思える勇者パーティーが上陸するのであった。

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