魔族
転移によって第二王女のすぐ目の前へと移動したマキナ。
「大丈夫だっ───ぐぼっ!?」
そんな彼が第二王女へと声をかけるよりも前に疾風の勢いで駆け抜けてきた他の勇者パーティー三人が第二王女の元に駆けつけてくる。
その際にマキナは三人の突撃を受けて宙を舞った。
「何故?」
地面を転がったマキナは自分が地面を転がっている現状に首をかしげる。
これまで結界でその身を守り、捕えていた檻を魔法で吹き飛ばした英雄として第二王女へと華麗に声をかけるというマキナの役割はグレイスたちにいつの間にか奪われている。
「……何故?」
そして、魔族たちが殺気だった様子で第二王女とかではなく己へと一直線に向かってくる現状を前にしてもマキナは首をかしげる。
「面倒……普通こういうのは救出されようとしている第二王女とか狙うものじゃないの?」
マキナは常時展開している結界よりも更に強固な結界を張り巡らせる。
「僕の魔法を受けてもなお生き残っていたのはそれが故か」
自分の結界を壊そうと努力する数人の魔族たちの指に輝く指輪に視線送るマキナが小さく呟く。
「魔王の加護がかけられた指輪か。そこそこ高価なもんではあるが、なるほど。そういうことか……倒したらきつそうだなぁ」
どれだけ魔族からの攻撃を受けても揺らぐことのない結界の中に立つマキナは速やかに魔族たちの指で輝く指輪───魔王からの加護を受けた指輪についての解析を済ませる。
「死ねぇ!金魔のガキがァ!」
「何それ、僕の新しい二つ名?」
殺気立つ魔族たちを相手にするマキナは腕の一振りだけで百を超える魔法を発動し、弾幕を張り巡らせて彼らを狙いうちしていく。
「……ッ!?」
「無駄だァァ!」
「……やっば」
魔族たちを襲う数多の魔法。
だが、それらはすべて魔族の身を守る結界によって阻まれてしまう。
「やっぱり硬い」
「手伝うわよ」
それを見ていたグレイスたちが加勢すると告げながら近づいてくる。
既に第二王女は共にやってきた兵士たちに引き渡されている。
「いや、良い。僕だけでやるから」
「ちょっ!?」
加勢しようとするグレイスたちを魔法で遠ざけるマキナは己の前にいる魔族たちを風魔法で攫い、天へと打ち上げる。
「別に硬かろうか当人が弱いし、おもちゃにし放題」
遥か空に持ち上げられ、何ら抵抗も出来ない魔族たち。
空から降りてくる魔族たちの小さな声へと耳を傾けることはないマキナが淡々と戦いを終わらせるべく作業を進めていく。
「敵の数は……全部で六だね」
天へと打ちあがる魔族たちの数を今になってようやく数えたマキナは人数分の魔法を展開していく。
「落とせ───精霊崩壊」
マキナが腕を少し上げるだけで魔法が発動。
六の魔法陣から伸びるすべてを無に帰す光線が魔族たちへと牙を剥く。
「「「……ッ!?」」」
マキナの一撃は魔王の加護が込められた指輪が展開する結界を完全に崩壊する。
「丸見えだよーっ!」
彼らを守るものがなくなったことを確認したマキナは彼らを空へと打ち上げる風を操作。一点へと魔族たちを集めてそのままシェイク。
ただの一つの大きなたんぱく質の塊へとその姿を変えさせる。
「おわーり」
死した魔族たちから目には見えない何かが漏れ出し、それらがマキナへと絡みついていく中で、それに対して一切気を回さないマキナが軽い口調で告げる。
「お疲れ様……だけど、なんで僕たちを魔法を使ってまで遠ざけた
残ったたんぱく質さえも燃やして灰すらも消し去ったマキナへと飛ばされたグレイスたちが文句の声を上げる。
「そうじゃそうじゃ!別に飛ばすことまでもなかったじゃろう!」
「……」
「お前ら、僕に地を舐めさせた」
不満げな態度を見せる三人に対してマキナはジト目で睨みつけながら声をあげる。
「それは素直にごめんね。でも、早く助けなきゃという気持ちが勇者として先行してしまったんだよ。だから、マキナが転移していることに気づけなかったんだ。すまないね」
「……それは、僕が気づかないほどちびだと言いたいのか?」
「実際にお主はちびじゃろうて」
「……ッ!?レミヤには言われたくないですぅー!僕はレミヤよりも3cmも大木ですぅー!」
「わしは良いんじゃ、わしは」
「何だよ、その独裁者理論!?」
レミヤの横暴な態度にマキナは不満をあらわにして、頬を膨らませる。
「……」
そんなマキナの頭を彼のすぐ隣に立っていたレーテムが優しく撫でだす。
「なんすか?身長マウントですか?」
だが、それに対してレーテムの姿がまるで子供を撫でるような恰好となったことでマキナは更に頬を膨らませる。
「……っ」
だが、突如としてその表情を無へと変えたマキナが弾かれたようにとある一点に向かって視線を向ける。
「どうした?」
突如して雰囲気が一変したマキナにグレイスたちが困惑しながら首をかしげる。
「んにゃ、なんでもないよ」
視線を外してグレイスたちの方へと戻したマキナはいつものふにゃっとした雰囲気で言葉を話して笑みを浮かべるのだった。
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