10.遊星X015⑩(了)
◆
遊星X015を星の彼方に置き去りにして、惑星C66の管理領域へハイパーワープした君は、しきりに首筋を手でこすっていた。
へばりつくような視線の感覚が拭いきれない。
君は「何だか気持ち悪いな」とつぶやき、下腹に力を込めた。
頭のてっぺんから股間までまっすぐに貫く硬質な針が通るようなイメージを浮かべたとき、君の視界の端に "クリーン "という表示が現れた。
それは君の体に備え付けられているセルフメンテナンス機能の一つで、体に異常が発生した場合にそれを検知するためのものだ。
君の体の大部分は最新のサイバネティック技術により換装されており、換装したばかりの頃は機能を十分に使いこなすことができなかった。
しかしもとより小器用な君である。1、2年が経つ頃には体に備え付けられた様々な細かな機能を巧みに使いこなしていた。
感覚としては例えば耳だけを動かしたり、片目だけを動かしたりするのと似ている。
生身から義体への換装に対しての慣れには個人差があり、君はその中でもかなり早い方だ。
「ケージ、どうしましたか?」
ミラが君に向かって尋ねた。
「いや、なんか首筋がむずがゆくてさ」
呟き、レーダーに目をやる。
後をつけてくる様な影はどこにもない。
そんなこんなで暫く落ち着かない気分を味わっていた君だが、惑星C66が視認できるほどに近づいたあたりでようやく落ち着いた。
──気のせいだったのかな
そう思う君だが──……
「なあ、ミラ。俺はもう二度と遊星X015絡みの仕事はしたくない。今回は運が良かっただけって気がするんだ。まあ運が悪かったらどうなっていたかなんていうのは俺にはよくわからないけどな」
◆
一方その頃。
惑星C66管理局では、一部の職員たちが君の事について話していた。
「聞いたか?」と、細身の男性職員が大柄で猿のような外見をした同僚に声をかけた。
「何を?」
大柄の職員が応じると、細身の職員は続けた。
「ローレン・ナイツ殿のお気に入りの男がいただろ? つまらない詐欺師の……今しがた、帰星の連絡が届いたらしいぜ」
大柄の職員は「へぇ」と感心した様な声をあげる。
遊星X015から生体組織を持ち帰る事自体は難易度的に大したことはないが、近隣宙域を狩場とする宙賊が問題だった。
「じゃああの男は例の宙賊と出くわさずに済んだのか。いい運をしてやがるな」
大柄の職員の言葉に細身の職員は二度三度とうなずき、「あそこら辺を狩場にしている連中はこの辺じゃ見ないくらい凶暴だからな。奴ら、元は正規兵だったんだっけか」と言う。
「ああ、そうだ。ファルク星人の元正規兵が連中の頭目だな」
大柄の職員は続けた。
「ファルク星人はとにかく屈強な種で知られているからな。筋骨隆々とした肉体に、補正器抜きでも遠くを見通せる良い目を持っている。まさに闘いを生業とする種と言っていいだろう」
「おっかねえ話だぜ」と震える大柄の猿型外星人の男だが、その両腕は筋肉でたくましく盛り上がり、ブラスターの閃光も1発2発なら受け止めてしまいそうなほどに胸板も厚い。
そんな同僚を、細身の男はなんだか納得いかないといった風に見つめていた。
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キリがいいのでクレクレします。評価等々!よろしくおねがいしまーす。
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