第21話 惑星U101①

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『やっほー!イッキーがお届けする宙域039の最新宙域予報だよ!まず、ここ最近の恒星間生物の目撃情報はゼロ!ゼロが当たり前なんだけど、たまに不運なヒトが出くわしちゃうからね!常に警戒を怠らないように!宙域1011では星喰いが出たって話だからね!でもこの宙域との距離は3千万光年以上離れているしコッチは平気だよ…多分ね!


 恒星風の方はどうかって?今日は完全にオフ!恒星風の影響で航行計画を変更する必要なし!スムーズな旅を楽しめそうだね。


 さてさて、お次は気になる宙賊の情報だけど、今日は宙賊注意報も出てないよ。安全な船旅になりそう。でもね、油断は禁物!宙賊たちはいつだって予期せぬタイミングで現れるから警戒は必須だよ!


 以上、イッキーがお届けした宙域039の宙域予報!次は宇宙の最新ヒット曲を紹介するよ。チャンネルはそのままで!』


 イッキーはランチュラ星人という複眼、多腕、多脚の外星人で、出身は自然豊かな惑星A20である。


 惑星A00地球とランチュラ星人の故郷、惑星A20は盛んに貿易が行われており、両惑星の関係は非常に友好的なものとなっている。


 ランチュラ星人は彼らの体内で生成される特殊な糸を主要な輸出品としているのだが、この糸は非常に強靭で、地球のどんな合成繊維よりも耐久性と弾力性に優れており、宇宙工学や医療分野でひっぱりだこだ。


 地球側からもインフラの提供やデザインハウスなどが提供されているが、ランチュラ星人はこのデザインハウスが特に気に入っている。


 惑星A20は自然豊かな緑の惑星で、森林地帯が特に多い。ランチュラ星人はこの森林地帯に住んでいるのだが、思い思いに適当な住居を作っては捨てていくというだらしない生活を送っている。


 住居を作り捨てるのは適当に作ったせいですぐ壊れるからだ。ついでに言えば居心地も良くはない。


 だから地球サイドから提供された建築技術というのは彼らにとってまさに垂涎であり……


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『繧上°繧翫∪縺励◆縲ゅ′繧薙�繧翫∪縺�』


「なるほどなぁー。ランチュラ星人ってそんな感じなのね。ドエムは物知りで助かるよ。昔の彼女がランチュラ星人でさ、少しだけ付き合ってフラれちゃったんだけど、あんまりその…プライベートな事は聞いてなかったからね」


 君は膝の上にドエムを乗せ、"棺桶号" のオートパイロットに身を任せていた。


 ラジオが最新のヒットチャートを流すの聴きつつ、君は機窓の外に目を遣る。


 窓の外には無数の星々が、無限に広がる暗黒の宇宙空間に散りばめられている。星々の光はぱっと見ればどれもこれも同じに見えてしまうが、よくよく目を凝らせばその光の一つ一つがそれぞれ異なっている事に気付くだろう。


 異なっているのは光の具合だけではなく、環境だってそうだ。地獄の様な環境の星もあるだろうし、逆に天国の様な環境の星もある。辛うじて人が住めるような星もあれば、少し手を入れるだけで住める星もある。


 君はとてもとても詩人などと呼べる柄ではないが、宇宙を旅する者達と所謂人生というやつには、ある種の共通点があるのではないか?などと思った。


 宇宙も人生も一歩先は闇だ。真っ暗で何も見えない。しかも危険がそこかしこに潜んでいる。ただ立ち止まっている事すら危うい。


 そんな中、もし "希望" を見つける事が出来たなら。


 宇宙では危険のない安全な惑星がその "希望" にあたるだろう。宇宙船に降りかかる危険というのはどれも致命的で、それらに出くわす確率は航宙時間に正比例する。


 だが安全な星が見つかれば燃料補給ができるかもしれないし、食料を補充できるかもしれない。地に足をつける事で精神がピンシャンし、注意力などが研ぎ澄まされるかもしれない。


 勿論ずっとそこには居られないだろうが。旅なのだから、いずれはまた出発しなければならない……


 では人生では?


 君がふとそんな事を思うと、これまでに出逢った人々(屑以外)の顔がなんとなく脳裏を過ぎった。


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「人生、人生、希望の人生~。希望が~ないよー絶望だけー。UAAAAA…いつしかーぜつぼうーもーきえーたー。ないないないーもうなにもないーそしておもったンダァーーぜつぼうでいいから俺になにかをーーーくれとープルルァ…」


 君はクソの様な即興の歌を謳いつつ、前方にぷかりと浮かぶ惑星U101を眺めた。


 ◆


 惑星U101、"海の星"。その特徴は驚異的な天体物理学的現象により惑星を海が包み込んでいる事だ。地表は緑豊かな森林、森林、草原、森林。


 海が取り囲んでいるという事は光も遮断されないのだろうか?すくなくとも極端に制限される筈で、そうなると植物などの成長にも大きな弊害がでる。


 ……筈なのだが、そうはならない。


 近い位置に大きな恒星が鎮座し、惑星U101を照らし出しているためである。だが幾ら強力な光であろうと、光は水中では屈折してしまう。つまり、ただの水ではないということか。


 しかしその辺りの謎を解き明かすのは科学者達であり、調査団員ではない。


 君の任務はこの惑星の地表を調査し、惑星開発のための橋頭保として相応しい土地をマッピングする事だ。


 しかし簡単な任務ではない。


 惑星には正体不明の原生生物が確認されており、また、特殊な天候に悩まされるだろう。


 開発適正地として認められた面積が広ければ広いほど報酬は増す。

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