5
「いらっしゃい、 いらっしゃい!良いものが揃ってるよ!」
「そこのお母さん!今日の夕飯にどう?安くしておくよ!」
俺は活気に溢れる市場を歩きながらとりあえず商品の相場を一通り見て回った。
…なるほど、確かに街で売られているのよりも安い。
けど、街で売っても利益があまり出ないのが多い……ん?
一旦市場から離れ、街の相場が載ってる資料に目を通しながら考えてると…
ある項目に目がとまる。
…キノコ類の相場が……エグいな!
なんと!この市場ではキロ単価2ゼベルのランダケが街ではキロ単価8ゼベルという高値に。
…つまり、4倍…950ゼベル分買って売れば…
9×4、36…5×4、20……3800ゼベルに!?
待てよ、落ち着け…3800って事は…38万円!?
…コレは買い占め決定だな!そうと分かれば急げ!
「へい、らっしゃい!何かお買い求めで?」
「あ、あの…ランダケを…」
「ランダケね!いくら欲しいんだい?」
「…ある分全部買いたいんだけど、まとめ買いだと、安くなる?」
漫画とかの知識でとりあえず緊張しながらも値段交渉してみる事に。
「全部!?全部ってあんた………全部だと900ゼベルだぞ?払えるのか?」
「もう少し、安く…なったりしない?」
驚く店主に俺はドキドキしながらもう一度聞いてみた。
「うーん…全部買うってんなら…じゃあ800ゼベルかな?」
「も、もう一声!」
少し考えて安くしてくれた店主にダメ元で押した。
「もう一声!?…じゃ、じゃあ…700…750……770でどうだい?」
「あ、じゃあそれで!ありがとうございます」
「……初日から一気に450kgも買う人は初めてだよ」
「あ、はは…」
金を取り出して払う時の店主の言葉に俺は引きつったように笑う。
…そ、そうか…よく考えたら450kgのリヤカーを引いて帰らないといけないのか…
「じゃあ乗せるのを手伝ってくれ」
「あ、はい」
不安になりながら店主と一緒にキノコの入った箱をリヤカーに乗せてどんどん積んでいく。
「…あんた、コレ…紐で縛って上からシートを被せた方がいいよ」
「あ…そ、そうですよね」
ただ乗せただけの箱の山を見て店主が見かねたようにアドバイスをくれる。
「…紐は持ってるかい?シートは?」
「あ、今から買おうかと…」
「それならあっちに売ってるよ。帰って来るまで商品は見とくから」
「あ、ありがとうございます」
店主の優しさにお礼を言って教えてもらった店で大きめの耐水シートと、ちょっとお高めのロープを買う。
「…ダメだ、ロープはシートをかけてからが良い。貸して」
「え、あ、はい」
俺の荷物の固定方法が悪いからか、店主がため息を吐いて変わってくれた。
…おお、なるほど…!そういう風に荷物を固定するのか…!
店主の手際の良さを俺は感心しながら見る。
「…はい、終わり。こうやって荷物は固定するんだ」
「ありがとうございます!勉強になりました!お礼といってはなんですが…ご飯でもどうでしょう…?」
俺が奢りますよ!と俺はテンション高めに店主を食事に誘う。
「おう、それならご馳走になろうかな」
「あ…荷物は置いてても?」
「ああ、戻って来るまでの間は構わないよ」
…こんな田舎で泥棒なんてしようものなら…的な感じなので、荷物が盗難にあう心配は無い。
だから置きっぱでも問題無いのだが…何故か近くの店の人達と一緒にみんなで遅めの昼ご飯を食べに行く事に。
ーーー
「…はぁ…マジか…」
…その場のノリで何故か、何故か俺がみんなのご飯代を持つ事になり…断り切れずに奢ってしまった。
戻った時に荷物が盗まれるような災難はなく、帰路の心配をしていたら別の店の主人が馬車を手配してくれ…
そのまま荷物ごと馬車で街まで帰宅。
…楽に帰れたのは良いのだが…おかげで残金は2ゼベルまで減っている。
…値段交渉で安くなったハズなのに、蓋を開けてみると余計な出費でかさんで結局安くなった分はパァ。
…まあ帰りが早く楽になった事は無駄な出費では無いが…
自分の計算の甘さが怖い。
…帰りの事など考えずにあんなに大量に買うなんて…
荷物も一緒に運んでくれた馬車の存在が無ければ…と思うとゾッとする。
暗くなる前に帰れずに賊に襲われていたかもしれないし。
…多分、今回はビギナーズラック的な感じで運が良かったんだろう。
次からは気をつけなければ。
…まあ、なにはともあれ街の市場が閉まる前に戻って来れたので…
当初の予定通り3800ゼベルで売れた。
意外だったのが、大手でも100kgまでしか買ってくれないという事。
俺は売ったのが市場なので相場以上の値段では売れないけど…
やり手になると市場には売らず個人でやりとりするから交渉次第では相場以上に売れるとか。
商人のベテランはそれで利益を出してるらしいが、俺は初心者なので危ない橋は渡らず市場に売った方が良い…とおじさんが教えてくれた。
…俺が居候してる商家?の今月のノルマである500ゼベルを納めるのはクリアしたので…
また来月のノルマが出るまではどこでなにをしても良い、らしい。
とりあえず俺はレンタルしたリヤカーをそのまま買い、また明日あの田舎へ向かう事にした。
今度は金が多少あるので行き帰りは馬車で行こうと思う。
…また今回みたいに掘り出しモノが見つかれば良いんだけど。
…その翌日。
朝早くに目が覚めたので朝飯を食べて直ぐに居候先の建物から出た。
そして昨日予約していた馬車にリヤカーを繋いであの田舎へと出発。
流石に馬車だと歩くのとはワケが違い、街道を通っても二時間もしないうちに田舎の村へと到着した。
…行き帰りで2万円、リヤカーを引く馬車を含めると3万…
使える金はおよそ33万円か…いや、もしもの時のためにきりが良い30万に制限をかけよう。
…今日は何か良いのはあるかな…?
馬車を降りてリヤカーを離して引きながら俺は昨日同様、村の市場へと向かう。
「おお!にいちゃん今日も来たのか、ご苦労だな!昨日はありがとな」
市場に入って直ぐの所で果物を扱っているおっさんが話しかけて来る。
「あ、いえ…」
「にいちゃんコレ、買わねぇか?20ゼベルでどうだ?」
俺が会釈して通り過ぎようとしたらおっさんが紙の束を見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます