第10話

 あれから、早くも二週間が経った。


 セレはすっかり回復している。何とか、トートバッグに入れて自宅に連れて帰った。両親には何度もお礼を述べる。


「本当にありがとう、父さん、母さん」


「お礼はいいよ、また時間があったら。来なさい」


「そうよ、何なら。彼氏を連れてきてくれてもいいわよ〜」


 私は母の言葉はスルーした。彼氏は余計よ。それでも、手を振りながら、実家を後にしたのだった。


 しばらくは私とセレとの一人と一匹の暮らしが続いた。ゆっくりと時間は流れていったのだった。


 セレが私の借家にやって来てから、四ヶ月が過ぎようとしている。季節は冬から春になろうとしていた。確か、セレを飼い始めたのが十一月の中旬だったから、今は二月の中旬になっている。穏やかな小春日和の中、私はセレと一緒に散歩に来ていた。


 ゆっくりとセレをトートバッグに入れた状態で道を歩く。二月にしては珍しく、ポカポカ陽気だ。


「良い天気ねえ」


「ミャア〜」


 私が言うと、セレが答えるように鳴いた。さて、これから近所の公園にでも行きますか。そう思いながら、足をそちらに向けた。


 公園に着くと、皆さんが思い思いに過ごしている。ウォーキングをする人や喋っている人々、遊んでいる小さな子達。穏やかでのんびりとした雰囲気の中、私はなんとはなしにその光景を眺めた。ふと、見つけたベンチにトートバッグを膝に載せた上で座る。しばらくは日向ぼっこをした。


 やはり、陽気が良い中でいたからか、私はいつの間にかウトウトしていた。

 不意に目が覚める。セレがある一点をじっと見つめていた。それに気がついて同じように視線をやる。


「……フゥー!」


「な、セレ?!」


 セレは一点もとい、黒い影に向かって毛を逆立てた。警戒の意味の「シャー!」という鳴き声も同様に発する。黒い影は腕のような物を振り上げた。

 それは私やセレに向かって、電撃のような雷のような物を放ってみせる。一直線に雷状の光線はこちらに向かってきた。


「……キャッ?!」


「……ンニャァ!!」


 けど、寸でのところでセレがトートバッグから出て。何と、間に入って私を庇ってみせたのだ。


「……ミャアウ」


「セレ、大丈夫?!」


 セレはよろよろとしながらも黒い影から私を庇うようにする。黒い影を睨みつけて、対峙した。


 しばらくはそうしていただろうか。何を思ったか、黒い影は腕を地面にかざす。くるりと円を描くように動かしたのだ。すると、そこにぽっかりと丸い穴が空く。影はその中に入り、逃げ出した。セレは素早く走って、そいつを追いかけた。


「ミャアウ!!」


「セレ、どこに行くの?!」


 逃がさないとばかりに、セレは穴に凄い速さで駆け寄る。そして、影と一緒に穴に入ってしまう。私はただ、茫然と見送るしかなかった。

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