第6話

 翌日、私は月曜日が来たと戦々恐々していた。


 実は私ってしがない会社員なのよ。だからといって、体調が万全でないセレを朝から夜まで放ったらかしにはできないし。まあ、金曜日は偶然にも半日休暇が取れたから良かったが。だから、セレを拾い、ペットショップにも行けたのだ。仕方ない、背に腹は代えられない。セレを信頼できる人に預けよう。そう決めたのだった。


 急いで、自身の朝食を済ませる。身支度をしてから、セレをあのトートバッグに入れた。ついでに、ホワイト動物クリニックで処方されたお薬など持って行けそうな物をナイロン袋に詰め込む。最後にいつも使うショルダーバッグを引っ提げて、出勤した。


 私は速歩きで実家に向かう。そう、信頼できる人と言うのは実家の両親だった。父も母も割と猫好きだから、頼み込んだら預かってもらえるのでは?と踏んだのだ。徒歩で六分くらいの場所に住んでいるし、半月くらいは何とかしてくれるだろう。そう思いつつ、トートバッグに入ったセレの頭を撫でた。


 実家に着くと、インターホンを鳴らした。まだ、朝の八時前だ。出てくれるかなと思っていたが。ちょっとして、母が玄関のドアを開けて出て来てくれた。


「……あ、空美くみじゃないの。こんな朝っぱらからどうしたのよ?」


「ごめん、いきなり来て。ちょっと、お願いしたいことがあって来たんだけど」


「お願いしたいことって?」


 私はトートバッグを示しながら、先週の金曜日――四日前にあった事を手短に説明した。母は寒いのか、両手を擦り合わせながらも聞いてくれた。


「……成程、道理で変だと思ったのよ。いきなり、猫を抱えて来るから」


「本当にごめん、あのね。まだ、セレは体調が万全じゃないの。けど、私は会社があるからさ」


「分かった、要は。そのセレちゃんだっけ?その子をうちで預かると言う事ね」


「うん、私もできる限りは様子を見に通うから。母さん、頼めるかな?」


「それは良いわよ、あんたがセレちゃんの世話を毎日はできないのも分かっているから。まあ、任せてちょうだい」


 私はOKしてもらえた事に胸を撫で下ろした。


「ありがとう、母さん。じゃあ、早速今日からお願いね」


「うん、あ。セレちゃんのお薬とかは持って来たの?」


「一応は持って来たよ、さっきに朝のお薬はあげたんだよね」


 私はトートバッグを母に渡した。ついでに、ナイロン袋も受け取ってもらう。


「この中にお薬とか、キャットフードとか入ってるから。お薬は栄養剤と抗生物質を処方してもらってるの。朝と夕方、一日に二回与えてね」


「分かったわ、一日に二回ね」


「じゃあ、もう行くね。行ってきます!」


「いってらっしゃい、気をつけてね!」


 私は頷く。急いで、会社に向かったのだった。

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