第5話

 自宅に帰り、まだ午前中だったのでセレにキャットフードを与えるのを忘れていた事に気がついた。


 こんなではセレの飼い主、失格だわ。そう思いながらも、トートバッグからセレを出してやる。キッチンに急いで行き、セレにと買った食事用の皿を取った。キャットフードの箱も取り、蓋を開ける。皿にキャットフードを適量入れて、ぬるま湯を作った。電気ポットからプラスチックの容器にお湯を入れ、すぐにシンクに行って水を入れる。セレ用にと決めたプラスチックのスプーンで軽く混ぜた。それを皿にあるキャットフードに掛け、ほぐした。さらに、獣医さんもとい、ホワイト動物クリニックで処方された栄養剤に抗生物質を取ってくる。紙袋から出すと、一包ずつ入れてあった。中身はどちらも粉薬だ。栄養剤が黄色で抗生物質は白である。粉薬の袋を破り、中身を皿の中に振りかけた。両方ともそうしたら、スプーンで軽く混ぜた。


「セレ、こっちにおいで!」


「……ンミャア」


 私が呼びかけると、ゆっくりとセレがやってきた。やはり、人の言葉が分かるのか?そう思いながらも、皿を床に置く。


「さ、セレの分だよ。たんと食べなね」


「ミャ」


 セレは答えつつ、キャットフードの匂いをふんふんと嗅いだ。やはり、薬入りだから食べてはくれないか。危惧はしたが、彼は気にせずに食べ始めた。良かった、拒否られたらどうしようかと思っていたのだ。ほっと胸を撫で下ろした。


 朝の分は与えたので、借家である自宅の掃除をする。割とセレの毛が抜けていたので念入りに掃除機を掛けた。それだけで昼までかかったが。クイックルワイパーなる物で床や畳の部屋を回りもした。よし、これで一通りは掃除ができたかな。後は細々とした用事を済ませた。両手を洗ったら、今度は人間である自身の食事だ。


「今日は何にしよっかな」


 そう呟きながら、冷蔵庫を開ける。冷蔵室にうどんがあったのでレトルトカレーや調味料を出した。扉を閉めたら、鍋やお玉、丼も食器棚などから出してくる。手早く、鍋にお水を入れてうどんを投入。ガスコンロの上に置き、火をつけた。しばらく待って沸騰してきたら、レトルトカレーを開けてまた鍋に入れる。うどんをお箸でほぐしたり、混ぜたりした。最後に調味料のおだしやお醤油を入れ、中火で五分くらいは煮込んだ。これで出来上がりで、丼に先にうどんを入れた。後にお玉でお汁を入れ、テーブルに持っていく。お箸を取りに行き、椅子を引いて座る。


「いただきます!」


 両手を合わせて言った。お箸でうどんを掴み、啜る。ツルシコとしたうどんに程よい辛味が効いたカレーのお汁がまた美味しい。いわゆる即席カレーうどんだ。ツルツルとうどんをまた、啜りながら完食したのだった。


 

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