第4話

 獣医さんに行くと、今日は土曜日だった事を思い出した。


 割と、既に犬や猫などを連れた飼い主さん達の姿がある。私も隅っこの椅子にセレが入ったトートバッグを膝に載せた状態で腰掛けた。あ、受付で言わなきゃ。慌てて、向かった。


 受付で昨日の顛末を簡単に説明した。そしたら、受付担当のスタッフさんが問診票を手渡してくる。


「まずは、こちらにセレちゃんでしたか。あの子の症状などを書いてくださいね」


「分かりました」


「……診察券も作成しますので、少々お待ち下さい」


 スタッフさんもとい、お姉さんに頷きながら、元いた椅子に戻る。問診票を書くのだった。


 問診票を書き終えたので、受付に渡しに行く。


「では、スタッフがお呼びしますので。そちらで掛けてお待ち下さい」


「はい」


 頷き、また椅子に戻る。セレが不安そうに見上げた。私は大丈夫だよと言う意味で、バッグを軽く叩く。しばらくは待ったのだった。


 スタッフさんが呼びに来たので、返事をした。セレが入ったトートバッグを抱えて診察室に行った。


 診察室に入ると、スタッフさんや先生がいた。スタッフさんは二人いて、両方とも女性だ。まだ、二十代くらいで若い。先生も三十代そこそこだろうか。割と、マスクをしているから分かりづらいが。キリッとした目つきでイケメンさんと思われる。


「……初診の子ですね、今日はどうしましたか?」


「あの、実は……」


 私は受付でしたように、昨日の顛末をもうちょい、詳しく説明した。診察台にセレのトートバッグを降ろす。


「そうでしたか、セレちゃんと言うんですね。昨日、拾ったばかりですか、確かに擦り傷や切り傷が結構あるな」


「はい、それに。体調も気になるので来たんですけど」


「分かりました、診察をしますね。ちょっと、この子を押さえていてくれ」


 最初は私に、後はスタッフさんに言った。セレをトートバッグから出す。先生はスタッフさんの片方に押さえられたセレを診察し始めた。


「……ふむ、やはり。痩せています、それに。軽く脱水症状がありますね」


「そうなんですね」


「はい、なるべく水分をとらせてあげてください。後、キャットフードをぬるま湯で柔らかくして。食べられるようなら、それを与えてくださいね」


「分かりました、他に注意する事はありますか?」


「そうだな、栄養剤と軽度の抗生物質を処方しますから。それをキャットフードに混ぜてあげてください」


 私は頷いた。先生から他の注意事項を訊きながら、診察を終えたのだった。


 先生は説明をした後でセレの傷の処置もしてくれた。確か、左前足も軽く捻挫をしていたらしく、湿布を貼り包帯も巻いてくれる。けど、擦り傷などの消毒は大変だった。余程、染みて痛いのか、セレは悲鳴をあげていたからだ。暴れるので、私やスタッフさんの二人がかりで押さえた。

 診察室を出たら、また待合室の椅子にて待った。


 セレは疲れたのか、大人しい。トートバッグを膝に載せながら、私もため息をついた。はっきり言って、疲れたわ。  


「セレちゃん、上村セレちゃーん!」


「はい!」


 受付のお姉さんに呼ばれて私は返事をする。トートバッグを抱えたままで行く。


「では、こちらがセレちゃんに処方された栄養剤と抗生物質になります。一日に二回、飲ませてあげてください」


「はい、分かりました」


 お姉さんは他にも詳しく説明をしてくれた。それを聞いたら、お会計を済ませる。初診料なども入るから、結構取られた。

 こうして、獣医さんを後にした。

 

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