第1話 fresh "mate-rial flow" ⑤完
翌朝、
『
関係者によると、労働用スキンP794が
工場には現在FHOが立ち入り検査を行い、原因究明にあたっています。
検査により、スキン製造は今月いっぱいの休止となる見込みです。
工場長である
これまで
ただし、当事者にとって事件が一大事でなかったことも、またない。
事件が起こる日まで家族三人
LDKの室空間を台無しにする正三角形のダイニングテーブル。
しかしそれは
このテーブルに家族がそろえば、父と母と子がすき間なく向かい合って同じときを過ごすことができたからだ。
この場所で流れる時間の1分1秒には、のちの
そんな
朝食をとる
「
しかし気落ちしたふうの
「……始業に遅れるから、早く食べなさい」
しかし玄関の戸を開くのと同時に、ぶわっと
朝10時の小さな公園を、一人の待ち合わせをする子どもの姿ばかりが占めている。しかし今日はやけに小さい。
「しずりん! お待たせ」
「おっ。じゃあ行こっか」
そこへやって来た待ち人。一人と一人は合流し、公園から去る。
コンクリートの通学路。
その
「
「ホントよ! お
しずりは
ぱっと視界が開けた。
瞬間、痛いほどの
目を細める二人。
歩道を右折して進むと、交差点にさしかかる。
右手にはひしゃげたガードレールとなぎ
「しずりん。
「んー。なんかよく
「うん。ジャバってた」
「
「どんな?」
「父さんと母さんがでかくなってた」
「それは目が
「うそうそ」
これがどんなからくりから生み出されたものなのか
「ビッグクランチってあるじゃん?
車がぶつかってきて、そのすぐあと、今まで起こったこと全部思い出したかとおもえば、すごい
しずりは今の自分の
「……それ、ホントなの?」
「ホントホント。さっ、もう行こうよ。今日はお弁当分けっこしようぜ!」
しかし当の与太郎は
さながら子どもがやぼな大人を、秘密基地へ案内するかのように。
そのため、好奇心を持てあましてしまった
学級の目の前まで来た
その
「
「あ、ああ。おはよう」
「
「わかってる。ごめんなさい。でも聞きたいの、あのときの儀式さんのこと……」
「何のことだい?」
「教えて。あのとき……儀式さんはP794に
まさにそのとき、
真正面に立っていた
「ああ……ごめんね。前のぼくのことは分からないんだ」
「そっか……」
このやりとりを思うと、晴季の言葉はそのするどさで、
そこでは誰の目にも、
残念でならない。
誰も、
「(そっか。愛玩用スキンじゃ、ダメなんだ……じゃあ労働用スキンは? P794なら天国に行ける? 知りたい。P794が天国に行ける可能性が――)」
非常にばかばかしい。
そんなことを知ろうとして何になる。
たとえ過剰でも、誰かがそうととがめていたのなら、未来は少しだけ変わっていたのかもしれない。
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