第1話 fresh "mate-rial flow" ③
「皆さん、はじめまして! 当スキンプラントの工場長をしている
少しはにかみながら、しかし堂々と学生たちの前に立つ父の姿に、
「ありがとうございます。今日は皆さんにスキンプラントの色んなラインを観て行ってもらうんですが、その前に少し学び直しをしてもらいたいなっと思います」
企業の学生向けプレゼンに特有な、見せる気のない作りをしたそれを一目見ると、
「えー、そもそも『スキン』とは何か? それはかつて
それは、
「いいですか。今ここにあるのは、ただの第一世代スキンです。僕の友だちの
右分けソフムも続くように挙手。
「はい、正解は『死んでいません』!」
よくあるお約束だった。
食堂端にある清掃用ロッカーから、どこにでもいる普通の第一世代スキンが飛び出す。
すかさず
「このようにですね、予期せぬ事故や病気にあってしまっても、替えのスキンがあれば問題ありません。皆さんの永世安心な生活を支えているのが、スキンを作るこの
肉をどけて、元の席にもどった
次はスキンの用途別種類に関するもののようだが、退屈なので
最後に、講座のかなめとして
「スキンの作成は、ほとんど機械化された今日においてはそれほど
『スキンルーツ』の体細胞クローンであるスキンは、細胞核からレシピエント人工
つまり、スキンルーツが
そしてスクリーンの表示がぱっと消え、いつの間にか暗幕にさえぎられていた室内が、外の明かりを吸い込んでいっせいに学生たちの目の前を
「次は、そのお母さんから明日の皆さんがうまれてくる過程を見に行きたいと思います!」
愛玩用スキンの生産ラインへ向かうのだ。
ラインは第二食堂とは
二棟とはいえ、
他方、学生たちは別のことに夢中だった。
「ねぇねぇ、労働用スキンってこんなにいるんだね!」
「ほんとだっ! 虫みたいで気持ち
工場内の区画間移動のために渡された架橋。
その下――各製造ラインでは、おびただしい数の労働用スキンたちがうごめいていた。
それらは工具に計器、ハンドリフトや台車、それ以外の何かしらについて
学生たちの日常にそのような光景があるはずはないし、あってはならない。だからこそ皆が
「ここを下ると、『Dセクション』に着きますよ」
通路の横断時には、
作業機械の前へ、いっせいに学生たちが
「おぉー!」や「すげー!」の感想にもならない声を上げ、皆が目をビー玉のようにして見つめている。
銀色のベルトにつながれた半透明のガラス状の物体と、その中を満たしたとろりとした液体。
これが子宮? この中にいる、くしゃくしゃの肉の塊が赤ちゃん?
「
いきなり私的に話しかけてくる工場長。
「なんか、おもしろいね……」
ぼうっとして、
大きな機械に人工子宮のカプセルを固定し、横のレバーを引く。
ビーッとけたたましい音が鳴るや
ブシャッという水音の後、人工羊水がバシャバシャとじょうごに流れ出し、しだいにしぼんでいくカプセル。
大きなそら
労働用スキンは
キュイイイィン、パチン!
ところが、あいにく
「……あれが
カゴに入って、人工子宮のコンベヤの隣のレーンから流れて来た赤子は、何が不満なのかオギャアオギャアと不快な鳴き声を上げている。
次の赤子、そのまた次の赤子が入ったカゴが順々に現れてはとおくに消えていく。
あれがいずれは
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