第30話 Mac
新品のパソコンのマッキントッシュ(当時40万円)を渡された。
命令が出た。
「これを分解して回路図を描いて」
稚拙だがリバースエンジニアリングである。
部品を一つづつバラし、基板をむき出しにする。
おお、電源回路から本基板への接続部に大きなコイルが入れてあるぞ。丁寧だな。
基板自体は一枚構成だ。表面に実装してあるチップの番号を書き取り、足の数を数えてA4用紙何枚かに書き写す。チェッカーを使ってチップの足の一本一本がどこに繋がっているのかを探る。
すべて調べるのに一週間かかった。
改めて別の紙に回路図を清書する。
Macで一番驚いたのは筐体背面の裏側である。
誰にも見えないここに設計者のサインが打ち出し成形で刻印されているのだ。総勢8名程度である。
感動した。
こういうことをして貰ったら技術者冥利に尽きるというものだ。
もちろんこれには余分な費用がかかる。だから技術者の誇りなど欠片も認めない日本の会社では絶対にできないことだ。
製品に対する会社経営陣の愛情がほの見える出来事であった。こういう所が日本が逆立ちしてもアメリカに勝てない理由である。
愛社精神ばかり口に唱える日本の経営者もぜひ見習って欲しい。まあ無理だろうけど。
サインは紙に鉛筆で写し取り、それを二十枚ほどコピーした。
それらはあっと言う間にすげえすげえと叫ぶ先輩たちに持っていかれた。みんな羨ましかったのである。
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