第20話 真夜中のバイオリン弾き
六畳一間二人部屋の寮の部屋の中で、深夜にいきなりバイオリンの演奏が始まり、布団から飛び起きた。
辺りを見回してもバイオリンはない。
その凄まじい音は同室のヤツの歯から流れ出ていた。
歯ぎしりである。
それはとても人間の歯から出ているとは思えない音だった。
ギギギギギギギギリギリギリギリガリガリガリガリガガガガガガガガガゴオリゴオリバキバキゴキリゴキンゴキン。
どう考えてもコイツの歯は鋼鉄で出来ている。
こんな音をもし人間の歯が立てているとしたら、三日ですべてすり減る。
そう思わせる音だった。
当然寝てなんかいられない。
朝六時になった。
今度はソイツの仕掛けていた目覚ましが最大音量で鳴り始める。
ジリリリリリリリリリリリリ・・・!
それは30分間鳴り続けた。ご本人はぴくりとも起きない。
人生でひどい辛苦を舐め怒りを心のうちに溜め込んだ今の私なら、何か硬いものを寝ているソイツの顔の上に落とすことができるが、その当時は大学出たての優しい人間だ。
ひたすらに我慢した。
結局それは半年続き、寝不足で死にそうになった。
世の中にはそこに居るだけでひたすら迷惑な人間は多数存在する。
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