第5話 サボリーマンたち1

 トロロさんば森の妖精トトロにちなんで付けられたあだ名だ。


 千葉県の辺境から片道二時間半電車に揺られて神奈川県の会社にやってくる。一般的には通勤時間は片道二時間が限界だ。これを越えると、睡眠時間が決定的に足りなくなる。

 この問題を解決する手段はただ一つ。


 就業時間中の居眠りである。


 彼もご多分に漏れず就業時間中にはいつもトロトロ居眠りをしている。それでついたあだ名がトロロさんだ。もっとも本人はそれを別の意味での愛称だと思っているのかもしれない。


 彼はそれを知る限りでは十年間続けた。

 そしてトロロさんは同僚と結婚をした。相手もやはり千葉に住んでいて、トロロさんと同じように会社では居眠りをして過ごす。そこでついたあだ名は、そう、女トロロである。


 もちろん彼らの存在が宿主である企業に利益を与えることはない。その交通費だけでも莫大なものになる。

 彼らは大企業の中でだけ生息できる特殊な妖精である。

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