13人のリンフォン融合型怪人

13人目

　新藤千里総統（フューラー）のファイナルライブの後のことを教えてやろう。

　裏切り者のインフェルノ零号を打ち倒した総統（フューラー）は完全に洗脳した狂信者（ファン）五万人を怪人の軍隊として組織し、日本に新政権を築いた。

　それはお前にとってどうでもいい話か。予め打ち合わせされていたように省庁が掌握される様は笑えて仕方がなかったが。

　お前の知りたいことを教えてやろう。総統（フューラー）はインフェルノ零号からリンフォンを引き抜き、自らに移植した。あの正十二面体の中には総統（フューラー）の愛する紅世初（グゼ・ハジメ）の魂も入っていたらしいな。誰にも触れらないように深い底に隠してあったらしいが。

　かくして紅世初（グゼ・ハジメ）と総統（フューラー）は結ばれたとさ。めでたしめでたし。

　いや私もお前もめでたくはない。そうだろう？

『さっきから好き勝手に喋っている君の名前は？』

　人工声帯の接続は上手くいったか。中古屋で売っていたジャンク品だが十分に聞こえるものだ。

　私は犬養咎雛（イヌカイ・トガヒナ）。怪人インフェルノ十二号の方がわかりやすいか？

『洗脳が解けて復讐を計画しているの？』

　あのとき布都御魂剣で脳を刺され、旧き神の電撃で焼かれ、洗脳が解けた。周りの者たちが総統（フューラー）の操り人形の中で一人だけ正気に戻ってしまった不幸を噛み締めて生きてきた。正気に戻ってから五十年間ずっと総統（フューラー）に地獄を味合わせることをずっと計画していた。私単独で勝てる相手なら最初から反逆している。

　新型爆弾を落とし過ぎたせいで怪人化した北米植民地人テロリストを鎮圧し続けるというつまらん仕事を耐えて、やっとお前の封印施設を見つけた。持つべきものはカルテルの友達（アミーゴ）だな。いや総統（フューラー）がろくに仕事しないおかげか。仕事のことを考えると頭痛と胃痛が悪化する。止めよう。

『五十年も経っているの！？』

　そうだ。身体を引き裂かれリンフォンを抜かれたお前は五十年間、冷凍され封印されていた。リンフォンを抜かれ瀕死になったお前はそのまま身体が崩れ死ぬはずだった。だが、あのイカレた総統（フューラー）にも情があったようで、お前はその状態で封印された。愛するモノ以外全てを拒絶しているくせに半端なことを行うものだ。総統（フューラー）の御心を考えても不愉快になるだけだな。お前もそう思うだろう？

　私と共に不愉快な世界を破壊し、ただ一人の狂気ではなく、各人の自由意志に基づく混沌と狂騒をこの世界に再びもたらそう。